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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第3章 赤い髪と巨人とひょろ親父
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30 赤い髪と巨人とひょろ親父


風が吹けばリベルもぶっ飛ぶってお話。


 キンタローは、激怒していた。

 リベルとミネアは、自ら家族を手放した。

 それが、何より許せない。

 前生で家族を持てず、今生で家族を奪われたキンタローにとって、家族はクマゴローそして段々扱いが酷くなるがミカンしかいない。

 

「リベル!あんたは、フラムがどれだけ頑張ってるか、なぜ、そんなに頑張っているのか、全くわかってない!」


 フラムには、武器造りを不得手としてる。

 そんなフラムの頑張る理由は、唯一つ工房を守る為。


「しかし……フラムは……ミネアを──」


 リベルは、本人を前にして、嫌っているとは言えず言い淀む。


「フラムは、今ライザのナイフに近づける様に努力している。例え、才能が無いとは──」

「それは、違う!違うぞ、キンタローく……さん!」

 

 突然、リベルが立ち上がると、台所から一枚の皿を持ってくる。

 

「これを見てくれ!フラム(あの娘)は決して、才能が無いわけじゃない!ここにある、食器、小物全てフラム(あの娘)が作ったんだ!そこにあるミカンさんが使ってたカップも、作ったんだ!」


 物凄い剣幕で、見た目とは裏腹に捲し立てる。


「知ってるよ。ここ最近、ずっと見てたんだ。それぐらい知っている」


 リベルとは、反対に冷静にキンタローは答えた。


「それに、それはフラムに言ってやれ。そんな事じゃない。ライザのナイフはオレのだ。だけど、オレはいつまでも此処にいる訳じゃない。だから、必死なんだ。少しでも、ヒントを掴もうと。それを、リベル(あんた)に伝える為に」


「フラムが、怒っているのはミネアさんの事でもリベルが跡を継がなかった事でも無い。怒ってるのは、リベルが工房とフラムを捨てた事だ!」


 リベルは、衝撃を受けた。

 フラムを捨てたつもりは無い。

 しかし、再婚の反対をしていたフラムに、自分達はもう要らないと、跡を継ぐと言い出した事で絶縁状を叩きつけられた気がしていた。


「今オレやクマゴロー達は、多分前にリベルの部屋だった所に世話になってる」


 唐突の会話の路線変更にリベルとミネアは戸惑う。


「その部屋のベッドな……アホらしくなるほど大きい。ミネアさんが余裕で寝られるくらいに。それにな、部屋の扉も裏口の扉も、この家にあるのと同じくらい大きい」


 その言葉を、聞いてリベルは驚愕しミネアは震えながら涙目になった。


 全ては、二人が帰ってくる事を願って──


(あと、一押しだな……)


 キンタローは、自分の考えを全て話した


「フラムの理想は、こうだ。親方は純血のドワーフにしかなれない。だから継ぐと言い出した。そう、親方って肩書きだけの為に。フラムは、二人の再婚を認めてるさ。その理由の一つがオレの髪だ」


 二人は、キンタローの髪を見て、少数種族かなとは思っていた。

 しかし、それが再婚を認めてる理由になるのかと不思議がる。


「フラムに初めてあった時、こう言われたんだ」



「まあ、それでも私は気にしないわ──」


 ミネアは、ドワーフだ。

 しかし、先祖返りにより少数種族の巨人族とも言える。


「それにな、アレンがオレにリベルの事を話そうとした時、フラムが遮ったんだ」


「アレン!両親の話はしないで」と。


 ここまで、話せばリベルでもわかった。

 ミネアは、とうとう堪えきれず手で顔を覆い隠し、泣き出す。

 リベルは、頭を抱えて後悔するしかなかった。


「あなた……フラムちゃんの……所に………」


 ミネアは、泣きながらだからなのか、元々の気の小ささからなのか、わからなかったが、掠れる声で言った。

 そして、意を決して立ち上がったリベルをミネアがわきに抱えて走って出て行った。


「さすが、ひょろ親父。持ち運びに便利だな」

 

 キンタローは、家主が居なくなった部屋でボソッと呟いた。

 そして、三人は後をゆっくりと追いかけ、森を歩く。


「あ~!お腹空いたー」

『あ~!お腹空いたなー』

「腹ペコなの~」


 三人の心の叫びが静かな森に響いた。




◇◇◇

 キンタロー達が、工房に帰って来た時、裏庭でリベルとミネアが謝っていた。

 フラムはそっぽを向いていたが、キンタロー達に気付くと、キンタロー達ではなく、ハンスをキッと睨んだ。

 ハンスは、必死に喋ったのは自分じゃないと、アピールしてるが、どうやら死は免れないようだ。


 キンタローは、敢えて会話を聞く事無く裏口に向かうと、アマンダからお礼を言われる。


「朝ご飯貰うよ」


 片手を上げ、それだけ言い家に入った。





◇◇◇

 それからは、キンタロー達は朝ご飯を食べながら、窓の外を見ていた。

 決して、心配だからではない。

 窓の外の声は微かに聞こえるが、朝ご飯に夢中の三人には、聞く必要も無い。

 フラムが何やら、咳を切ったように叫ぶと、ボロボロと涙を流し始める。

 そして、フラム、リベル、ミネアの三人が泣きながら抱き合うのが見えた。


 予想通りの展開に、キンタローは窓から目を離す。


「木苺もう、無いの~」


 ミカンの足元の皿には、果物の山から抜き出した木苺が積まれている。


「あー、あれだな。やっぱりリベルよりミカンの方が軽いわ。頭の中が」


 キンタローは、一つ木苺の山から摘まんで、口に入れた。

 

いつも、読んで頂きありがとうございます。


感想、レバー、ブクマ、評価頂けると嬉しくて、涙がちょちょぎれます。


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