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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第3章 赤い髪と巨人とひょろ親父
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29 巨人とひょろ親父


ある日、森の中で巨人と出会ったってお話


 翌日、キンタローは、クマゴローとミカンを連れてフラムの父親の元に向かう事にする。

 フラム達と鉢合わせしないように、工房に入ったのを見計らって、朝早くに出掛けた。




◇◇◇

 村の西にある森を進むと、すぐに一軒の家を見つけた。


「ここか……って、扉デカすぎないか?というか、あれか!ドワーフってのは、背が低い反動で扉をデカくする、癖でもあるのか?」


 そんな筈があるわけなかった。

 村のほとんどが、普通の扉である。


『キンタロー、さっさと行くぞ!朝ご飯、まだなんだから!』


 サイレントベアーは、通常食べたい時に食べる。

 すっかりと、人族の暮らしに慣れたクマゴロー。


 家の前に立ち、軽くノックをするが返事がなかった。

 

(留守か?)


 そう思った矢先、不意に扉が開いてキンタローはぶつかり、思わず尻餅をついた。


「だ……大丈夫……?ぼく……?」


 若い女性の声に答えようとキンタローは軽く頭を振り、前を見た。


 足があった。


 キンタローは、顔を上を向ける。


 豊かな胸があった。


 キンタローは、ほぼ真上を見上げた。


 やっと、顔が見えた。


「ええぇぇぇ、で、デカっ!」


 キンタローは、思わず声に出してしまった。

 もちろん、胸の事を言ったのではなく、背丈の事だ

 

 その女性は、凄く不安げな表情をしている。


「あ、すいません。オレ……自分は、キンタローと言います。こっちは兄弟のクマゴローで、襲ったりはしません。で、この、服の中でヨダレ垂らして寝てるのは、ミカンです」


 スッと立ち上がり、丁寧に挨拶をする。

 体格的に逆らったらいけない大人を見分ける出来る子供、キンタロー。


「あ、あの………こちらこそ、すいません。村で噂になっているので……知ってます…フラムちゃん……の……所に……いるんです……よね」


 その女性は体の大きさに反比例し、気が小さいのか随分と小声だった。

 赤いショートボブにから、ドワーフであることは分かり、見た目は20歳そこそこの若い女性だった。


(フラムの件もあるしな……)


 フラムが自分より年上であることから、ドワーフの見た目は、あてにならないと思っていた。


「ミネア、誰が来たんだい?」


 ミネアと呼ばれた女性の腰あたりから、ひょっこり長細く、頬が痩せこけた男が顔を出す。


「あ……あなた、その……フラムちゃん……とこに、今いる……」


フラムの名前を出すと、男は明らかに表情が明るくなった。


(やっぱり、この人がリベルか……しかし、顔も、体も、ひょろひょろだな。フラム、お前似なくて良かったなー)

 

「そうですか!君が!さ、どうぞ、どうぞ。ミネア、中へ入れてあげなさい」


 ミネアはそう言われ、一歩下がるが直後にいたリベルにお尻がぶつかると、1m程ぶっ飛んでいった。


『「軽っ!!」』


 キンタローとクマゴローは、軽くぶつかったと見えたが、いとも簡単に宙を舞うリベルに、思わず叫んでしまった。


「ふえっ!な、なんなの?」


 ミカンも驚いて目を覚ます。


「あ、あなた……ごめんなさい」


 ミネアが慌てて、リベルに駆け寄る。

 キンタローとクマゴローは見逃さなかった。宙を舞う時のリベルのあの表情を。


『なぁ、キンタロー。なんで、あの親父、あんなに嬉しそうなんだ?』


 キンタローは、クマゴローにポンと手をあて『世の中には、そういう人もいるってことさ』と囁く。


(そうか、今度キンタローにやってみるかな?喜んでくれるか?)


 後日、クマゴローは実行して、キンタローに怒られる事になった。




◇◇◇

「そ、それでフラム、フラムは元気ですか?」


 リベルは、椅子から立ち上がりテーブル越しに、キンタローに顔を近づける。


「近いわ!!」


 思わず、平手でリベルの顔を押すと、いとも簡単に椅子までぶっ飛んだ。


「あははは、スゴいの~、飛んだの~、ミカンより軽いの~」


 ミネアが、リベルを心配するがミカンの笑い声に連れてて少し笑った。


「それは無い」

 

 キンタローは、ミカンの頭を掴みクマゴローに投げつける。


「ひゃ~~~なの~~」


 ミカンは、空中を横転しながらクマゴローを飛び越え飛んでいく。

 ボチャン!

 見事に、水の入った桶に突っ込んだ。


 ミネアの顔が笑顔のまま、引きつった。


「それで、キンタローくんは、どうして此処に来たのかな?」


 リベルが、優しく話かける。


「さん付けで」

「え?」

「だから、さん付けで」

「え、えーと、それじゃキンタローさんは、どうして此処に来たのですか?」


 逆らっても問題ない大人を見分ける恐ろしい子供、キンタロー。


「もちろん、フラムの事だけど、その前にミネアさんの事教えて貰えるかな?リベル」

「え?呼び捨て?」

「教えて貰えるかな?リベル」

「え?ミネアは、さん付けで私は……」

「教えろ、リベル」


逆らっても問題無い大人には容赦ない子供、キンタロー。




◇◇◇

 リベルの話では、このミネアという女性は、やはり再婚相手だった。


 ミネアは、先祖返りを起こしたドワーフで、巨人族と呼ばれた少数種族の血が入っていたらしく、10歳を境にぐんぐんと、背が伸びていく。


 元々、ミネアとリベルは年の離れた幼馴染みであり、ミネアとフラムの母親も仲が良かった。


 ミネアの背が大きくなるにつれ、ミネアの家族を含めた周りが彼女を疎んじ始めた。しかし、唯一リベルとフラムの母親は見捨てず仲良くしていた。


 リベルとフラムの母親が結婚後も、フラムが生まれた後も、三人は仲が良かった。

 フラムもミネアに懐いていたが、フラムの母親が流行り病で亡くなった事がきっかけで、険悪になってしまう。


「それで、アレンに聞いたけど組合の後、出て行ったのか?」


 リベルとミネアは同時に頷く。


「バカかっ!?あんたらはっ!!特に、そこのひょろ親父!!」


 キンタローは、何もわかっていない二人に腹が立ち怒鳴り付けた。

いつも読んで頂きありがとうございます。


もうすぐ、第3章も終わりです。



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