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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第3章 赤い髪と巨人とひょろ親父
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26 事件発生!

ボケ回収で疲れたキンタロー。

お疲れの様子だったので、今回はアレンとアマンダが頑張ってくれました。


 疲れていたのだろう、キンタローはそのまま朝を迎えていた。


『おはよう、クマゴロー』


 クマゴローは、いつの間にか上半身だけをベッドの上に乗せ、キンタローに寄り添っていた。

 キンタローの声に目を覚ましたクマゴローは、大きな欠伸を一つすると、目の前で寝ていたミカンをベッドの上で転がし始める。


『ぅう~ん、キンタローそんなとこ触っちゃダメなの~』


 そんな寝言を聞いたクマゴローは、そのままベッドの端っこまで転がし、落とした。


「痛い!の」


 ミカンとクマゴローのやり取りを、ベッドで見ていたキンタローに、外から鈍い音が聞こえる。


 ガンッ ガンッ ガンッ


 キンタローはすぐに起き上がり、クマゴロー達を連れて一階におりる。


「おはようございます。キンタローさん、クマゴローさん、ミカンちゃん」


 忙しく朝ご飯の用意をしてたアマンダが、声をかける。


「おはようございます。アマンダさん」


 逆らってはいけない大人を見分ける出来た子供、キンタロー。


「がる」


 キンタローが翻訳し、挨拶をする出来た熊、クマゴロー。


「なの~」


 軽い挨拶をする適当な妖精、ミカン。


「アマンダさん、フラムはもう?」


 キンタローがミカンの頭をぐりぐりしながら聞いた。


「ええ、裏の工房ですよ。良かったら見に行ってみては?あ、クマゴローさんとミカンちゃんはダメよ」


 アマンダは、暗にクマゴローは身体が大きいので視界に入るからと、ミカンは単に邪魔になると言っている様にキンタローには聞こえた。


「じゃあ、ちょっと見てくるかな? 『クマゴロー、ミカンをしっかり捕まえといてくれ』」

 

クマゴローにミカンを渡すと、1つ頷いてミカンを抱えたまま壁にもたれた。


 キンタローは裏口から出ると音のする方へ向かう。

 石造りの小屋を見つけ、キンタローはゆっくり扉を開けて中に入った。


 ガンッ ガンッ ガンッ


 フラムは普段と違い、邪魔にならないよう、髪を後ろで結び、それをアップしていた。


 服装も、上は白いTシャツみたいな物で、下は灰色のズボンで、お嬢様には見えない。

 背筋を伸ばし鎚を振り上げ、力強く振り下ろす。

 フラムは汗だくになり、汗で背中が透けていた。


 キンタローは、思わず目を反らすが、すぐに反らせなくなる。

 フラムが、鎚を振り下ろす度に汗が飛び散る。

 近くの炉の火とフラムの真っ赤な髪が相まって、飛び散る汗がキラキラと綺麗に輝く。

 フラムの目は今まで見たことない真剣な眼差しに、職人の誇りが宿り、フラムの姿は非常に美しかった。


 キンタローは、フラムに見惚れていた。




◇◇◇

 フラムが作っては、首を横に振る。

 剣造りは、上手くいってないようだった。


「お嬢様、少し休みましょう。もう朝ご飯の時間過ぎております」


 アレンにそう言われ、一息ついた後、キンタローが入口に居るのに気がついた。


「あ、キンタロー。来てたの?」


 フラムは、流れる汗を拭きながらキンタローに近づく。


「ん、あ、ああ凄い迫力だったよ」


 キンタローは、不意に目を背ける。

 ハンスと共に片付けていたアレンが、フラムに耳打ちする。


「お嬢様、服が透けております」


 フラムは、みるみる顔を赤くして、慌てて上着を着る。

 キンタローも、その顔は赤くなっていた。



「ちょ、ちょっと着替えてくるわね」


 フラムは、家に入るとそそくさと二階に上がった。


 キンタローは、何だか気まずくしているとアマンダがソッと近き、耳打ちをする。


「どう? お嬢様綺麗だったでしょ?」

「え、うん、まぁ……」


 キンタローは、気のない返事をすると、アマンダはニヤニヤと笑っていた。


「だからね、この後何があってもお嬢様を嫌いにならないであげて下さいね」


 アマンダの言ってる意味のわからないキンタローは、首を傾げる。

 後々、キンタローはその意味を自分の生命をもって、知ることになるのだが。




◇◇◇

 その日の朝ご飯の食卓には、変な空気が流れていた。


「…………」

「…………」


 キンタローとフラムは、何も喋らない。

 ミカンとクマゴローは、何かを察してか眉に(しわ)を寄せ、じっとキンタローを見ていた。


「キンタローさん、今日は午後から村を散策してみてはどうですかい?」

(ハンスさん、ナイスです!)

(ハンス、ナイスね!)


 アレンとアマンダは、ハンスの突然の提案に、心の中で称賛を送る。


「それで、お嬢は午後は休んで夕食に手料理作ったらどうですかい?」

(ハンスさん、アホです!)

(ハンス、一回死ぬべきよ!)


 アレンとアマンダは、ハンスの突然の爆弾に、心の中で罵倒して、蹴って、殴って、ポイッと捨てた。


「そ、そうね。じゃあ頑張ってみようかしら」


 フラムの思わぬやる気に、アレンもアマンダも止められなくなる。

 後々、二人は後悔することとなった。


「じゃ……あ、オレ達は村を見て回るか。え……と、フラム楽しみにしてるよ」


 キンタローの言葉に、フラムの目が輝くのをアレンとアマンダは気づいて、益々頭を抱えた。




◇◇◇

 クマゴローは今、牙を剥き出しにして、物凄い形相で今にも跳びかかろうとしている。

 ミカンは、そんなクマゴローを必死に押さえていた。


 アレンとアマンダもクマゴローを死を覚悟で、押さえている。

 ハンスは、何でこんなことになったのか分からず、冷や汗をかきながら立っていた。


 フラムは、涙目になりながら手を口に当てて、全身を震わせ、ただ一点を見ていた。



 フラムの視線の先には、もがき苦しむキンタローがいた────

 

  

いつも、お読みくださりありがとうございます。


評価ポイントは最新話の下の方にありますよ


よろしくお願いします。

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