26 事件発生!
ボケ回収で疲れたキンタロー。
お疲れの様子だったので、今回はアレンとアマンダが頑張ってくれました。
疲れていたのだろう、キンタローはそのまま朝を迎えていた。
『おはよう、クマゴロー』
クマゴローは、いつの間にか上半身だけをベッドの上に乗せ、キンタローに寄り添っていた。
キンタローの声に目を覚ましたクマゴローは、大きな欠伸を一つすると、目の前で寝ていたミカンをベッドの上で転がし始める。
『ぅう~ん、キンタローそんなとこ触っちゃダメなの~』
そんな寝言を聞いたクマゴローは、そのままベッドの端っこまで転がし、落とした。
「痛い!の」
ミカンとクマゴローのやり取りを、ベッドで見ていたキンタローに、外から鈍い音が聞こえる。
ガンッ ガンッ ガンッ
キンタローはすぐに起き上がり、クマゴロー達を連れて一階におりる。
「おはようございます。キンタローさん、クマゴローさん、ミカンちゃん」
忙しく朝ご飯の用意をしてたアマンダが、声をかける。
「おはようございます。アマンダさん」
逆らってはいけない大人を見分ける出来た子供、キンタロー。
「がる」
キンタローが翻訳し、挨拶をする出来た熊、クマゴロー。
「なの~」
軽い挨拶をする適当な妖精、ミカン。
「アマンダさん、フラムはもう?」
キンタローがミカンの頭をぐりぐりしながら聞いた。
「ええ、裏の工房ですよ。良かったら見に行ってみては?あ、クマゴローさんとミカンちゃんはダメよ」
アマンダは、暗にクマゴローは身体が大きいので視界に入るからと、ミカンは単に邪魔になると言っている様にキンタローには聞こえた。
「じゃあ、ちょっと見てくるかな? 『クマゴロー、ミカンをしっかり捕まえといてくれ』」
クマゴローにミカンを渡すと、1つ頷いてミカンを抱えたまま壁にもたれた。
キンタローは裏口から出ると音のする方へ向かう。
石造りの小屋を見つけ、キンタローはゆっくり扉を開けて中に入った。
ガンッ ガンッ ガンッ
フラムは普段と違い、邪魔にならないよう、髪を後ろで結び、それをアップしていた。
服装も、上は白いTシャツみたいな物で、下は灰色のズボンで、お嬢様には見えない。
背筋を伸ばし鎚を振り上げ、力強く振り下ろす。
フラムは汗だくになり、汗で背中が透けていた。
キンタローは、思わず目を反らすが、すぐに反らせなくなる。
フラムが、鎚を振り下ろす度に汗が飛び散る。
近くの炉の火とフラムの真っ赤な髪が相まって、飛び散る汗がキラキラと綺麗に輝く。
フラムの目は今まで見たことない真剣な眼差しに、職人の誇りが宿り、フラムの姿は非常に美しかった。
キンタローは、フラムに見惚れていた。
◇◇◇
フラムが作っては、首を横に振る。
剣造りは、上手くいってないようだった。
「お嬢様、少し休みましょう。もう朝ご飯の時間過ぎております」
アレンにそう言われ、一息ついた後、キンタローが入口に居るのに気がついた。
「あ、キンタロー。来てたの?」
フラムは、流れる汗を拭きながらキンタローに近づく。
「ん、あ、ああ凄い迫力だったよ」
キンタローは、不意に目を背ける。
ハンスと共に片付けていたアレンが、フラムに耳打ちする。
「お嬢様、服が透けております」
フラムは、みるみる顔を赤くして、慌てて上着を着る。
キンタローも、その顔は赤くなっていた。
◇
「ちょ、ちょっと着替えてくるわね」
フラムは、家に入るとそそくさと二階に上がった。
キンタローは、何だか気まずくしているとアマンダがソッと近き、耳打ちをする。
「どう? お嬢様綺麗だったでしょ?」
「え、うん、まぁ……」
キンタローは、気のない返事をすると、アマンダはニヤニヤと笑っていた。
「だからね、この後何があってもお嬢様を嫌いにならないであげて下さいね」
アマンダの言ってる意味のわからないキンタローは、首を傾げる。
後々、キンタローはその意味を自分の生命をもって、知ることになるのだが。
◇◇◇
その日の朝ご飯の食卓には、変な空気が流れていた。
「…………」
「…………」
キンタローとフラムは、何も喋らない。
ミカンとクマゴローは、何かを察してか眉に皺を寄せ、じっとキンタローを見ていた。
「キンタローさん、今日は午後から村を散策してみてはどうですかい?」
(ハンスさん、ナイスです!)
(ハンス、ナイスね!)
アレンとアマンダは、ハンスの突然の提案に、心の中で称賛を送る。
「それで、お嬢は午後は休んで夕食に手料理作ったらどうですかい?」
(ハンスさん、アホです!)
(ハンス、一回死ぬべきよ!)
アレンとアマンダは、ハンスの突然の爆弾に、心の中で罵倒して、蹴って、殴って、ポイッと捨てた。
「そ、そうね。じゃあ頑張ってみようかしら」
フラムの思わぬやる気に、アレンもアマンダも止められなくなる。
後々、二人は後悔することとなった。
「じゃ……あ、オレ達は村を見て回るか。え……と、フラム楽しみにしてるよ」
キンタローの言葉に、フラムの目が輝くのをアレンとアマンダは気づいて、益々頭を抱えた。
◇◇◇
クマゴローは今、牙を剥き出しにして、物凄い形相で今にも跳びかかろうとしている。
ミカンは、そんなクマゴローを必死に押さえていた。
アレンとアマンダもクマゴローを死を覚悟で、押さえている。
ハンスは、何でこんなことになったのか分からず、冷や汗をかきながら立っていた。
フラムは、涙目になりながら手を口に当てて、全身を震わせ、ただ一点を見ていた。
フラムの視線の先には、もがき苦しむキンタローがいた────
いつも、お読みくださりありがとうございます。
評価ポイントは最新話の下の方にありますよ
よろしくお願いします。




