25 ハンスの死?
キンタローさんへ
いつも、周りのボケ回収ありがとうごさいます。
まだまだ、キャラは増えます。
死なないでね。
by作者
「ところで、キンタロー……ナイフなんだけど……」
フラムが流石お嬢様らしく、綺麗な所作で食事をしていた手を止める。
「ふがっがっが、ふががぐが」
「何言ってるか、わからないわよ」
キンタローは口いっぱいに放り込んだパンを飲み込んだ。
「いいよ。オレも暫くこの村にいるつもりだし」
「そ、そう……だったら、ウチに泊まればいいわ。部屋も空いてるし」
キンタローは、クマゴローをチラッと見て、村で騒がれるから、ここにいる方がいいかと思いお言葉に甘える事にした。
◇◇◇
食事を終えると、キンタローはリュックからマーレを取り出した。
「キンタロー、それってもしかしたらマーレかしら?どうするの?」
「どうって、食べるんだけど?」
キンタローは、ナイフで半分にし、一つをクマゴローに渡した。
「お腹、壊さないの?」
フラムが心配する前で、平然と一口食べてその甘酸っぱさに、少し顔をしかめる。
「オレ、胃腸が丈夫なんだよ」
年配の方が欲しいスキルランキング、実はその2位である《胃腸強化》のスキル。
そのスキルを持つキンタローは、なんなく残りのマーレを食べ終えた。
突然、ハンスがテーブルを叩き立ち上がる。
「キンタローさん、今度は是非、お嬢の手料理でもどうです?」
ハンスの提案に驚くフラムと、頭を抱えだすアレンとアマンダ。
「まぁ、作ってくれるなら食べるけど」
「じゃ、じゃあ今度……ね」
フラムはうつ向き加減で、少し照れながら答えた。
アレンとアマンダは、何も言えず頭を抱え込んでしまっている。
ハンスは、心の中で小さくガッツポーズをとった。
◇◇◇
「それじゃ、部屋を案内するわね」
フラムに続き、キンタローとクマゴローとミカンも二階へ上がっていった。
「あ~あ、どうなっても私は知らないわよ」
アマンダがキンタロー達が二階に上がったのを確認して、ハンスに言った。
「本当ですよ、ハンスさん。お嬢様がキンタローさんに嫌われたらハンスさんのせいですよ」
「え?オレは、たださっきの仕返しに……」
突然アレンとアマンダに攻められ、戸惑うハンス。
「気づいてないのですか?」
アレンはハンスの態度に驚き、呆れた顔をしてアマンダと顔を合わせると、二人は大きなため息をついた。
「だから、あんたはまだ独身なんだよ!」
ハンスは、アマンダにバッサリと斬られた。
ハンス、今年で41歳 独身 彼女無し アマンダにバッサリ斬られ死亡。
チ───────ン
アマンダもアレンも居なくなった部屋で涙を流しながら、一人テーブルに伏しているハンスには、そんな音が聞こえた気がした。
◇◇◇
「ねぇ、今、鈴みたいな音しなかった?」
二階に上がったフラムがキンタロー達に聞くと首を横に振る。
念のためクマゴローに聞いてみたが、『聞こえなかった』との事だった。
「気のせいかしら?」
フラムは首を傾げるしかなかった。
「この部屋を使って。好きに使ってくれたらいいから」
フラムがそう言って部屋の鍵をキンタローに渡す。
しかし、キンタローは気もそぞろで部屋の扉を見ていた。
「な、なぁ、なんでこの扉だけ、こんなデカ───」
「あ、私、まだ用事あるから先に休んでて。何かあったらアマンダに言えばいいから」
そそくさと、キンタローに鍵を渡して一階へと降りていった。
「入らないの~?」
ぼーっと部屋の扉の前で立っているキンタローの頬を、ぺチぺチとミカンに叩かれ、気がついたキンタローは、扉を開けて中に入った。
「デカッ!!」
部屋に入ったキンタローの第一声はそれだった。
他の部屋の扉の大きさと比例するが如く、部屋はとにかく、大きく広かった。
しかし、キンタローが驚いたのは、部屋の大きさではなかった。
それは、ベッド。
まるで、ダブルのベッドを縦に並べた位に大きく、そして長かった。
キンタローは、荷物をその場に置き、思わずベッドへとダイブする。
「デカっ!そして、長っ!!」
思わず叫んでしまった。
◇◇◇
キンタローは、ベッドに寝転び、今日あった事を振り返る。
初めての森の外………エルフとの戦闘、そしてあまりにも不気味な自殺………アレンやアマンダ、ハンス………そして、フレデリ………違う違う。
キンタローは、キツネ目のドワーフを頭から、すぐかき消す。
そして、フラム=ラウザ。
燃えるような真っ赤な髪をした見た目同じくらいの女の子。
キンタローは、そんな女の子が気になっていた。
好意ではないと思う。
それは、アレンが父親の話をした時に、見せた悲しそうな顔。
(多分、生きてはいるんだろうな………もし、亡くなっていればアレンが先代の話をした時点でフラムが止めているはず……先代の祖父の跡を継いだのはフラムだし、接点はあるはず、継いだのを誇りに思っている節があるし、先代を尊敬しているのだろう……なら父親の話を遮った理由はそこか)
キンタローは、そんな事を考えていたが一番気になっている事が頭にこびりついていた。
キンタローは、部屋に扉に目をやる。
「なんで、この扉、こんなにデカイの!!!?」
キンタローの心からの叫びに、驚いたクマゴローとミカンだった。
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