21 ドワンゴ村と劣化キツネ
キンタロー、ハンスの扱い見極めるってお話。
村に近づいて行くと、その入り口には五人の門番らしき人が見えた。
何やら、慌てているようにも見える。
「止まれ!」
門番の1人が前に出て、キンタロー達と馬車に立ちふさがった。
その門番は、キツネ目に、チョロ髭と、明らかに胡散臭い感じがする。ただ髪の毛は赤茶けてるのでドワーフなんだろうが。
(うわぁ……ジャンより更に胡散臭い……しかも、小者感がハンパない。ジャンの劣化版。)
「フレデリックさん、何か問題でもありましたか?」
フラムが馬車を降り、フレデリックと呼ばれたキツネ目の男の前に出る。
「いえいえ、フラム嬢。貴女方は、全く問題ありませんよ。ですが………」
チラッとキンタロー達を見る。
「そこにいる、キンタローさんとサイレントベアーのクマゴローさんは、私達がエルフに襲われたところを助けて下さったのです!ですから、ラウザ工房の客として迎えたのです!貴方にそれをとやかく言う資格は無いでしょう。それと!!フラム嬢ではありません。ラウザ親方と呼びなさい!!」
フラムの凄い剣幕に、キンタローも流石に驚いた。
「同じくらいの年なのに、随分しっかりしてるな」
ハンスがそれを聞いて、キンタローに近づく。
「多分、キンタローさんとは年が違うと思いますよ。お嬢あれでも15歳で、成人ですよ」
まさかの年上にキンタローは、また驚いた。
「まさか、サイレントベアーを村に入れる気だったとは。もし、暴れたらどうするのです?怪我人や死人が出てからでは遅いのですよ」
「だから何度も言ってるでしょう?キンタローさんとクマゴローさんは兄弟なんです。暴れるなんて事はありません!それに貴方に私達を止める権利は無いでしょう!!」
先ほどからフレデリックとフラムのやり取りに、キンタローは少しウンザリしていた。
「ハンスさん、あのフレデリックとか言う劣化キツネって、門番じゃないの?なんか、さっきから聞いてると違うみたいだけど」
「劣化キツネ……ぷぷ。違いますよ、フレデリックさんは、フレデリック工房の主人です」
「ふーん……で、偉いさん?」
キンタローは、問題起こせばフラムに迷惑がかかるので、問題起こしても問題にならない相手か確認する。
因みに、引くつもりは一切ない。
「この村で、一番偉いのは村長です。お嬢は三番目くらいですか。フレデリックは、むしろ嫌われ者ですね。というか、好かれる顔してないでしょう?」
ハンスが、あっさりフレデリックを呼び捨てにするあたり、どういう人物か想像出来る。
「そうだな。まだハンスさんの方がマシな顔してる」
キンタローとハンスはお互い顔を見合せプッと吹き出し「「あはははは」」と笑いだした。
「って、キンタローさん、結構酷い!!」
ハンスがやっと気付いた。
キンタローは、ハンスをからかうのに飽き──もとい、ハンスから情報を聞き出し、クマゴローにちょっと耳打ちした。
キンタロー達は、ズンズンと村の入り口に向かって行く。
「おい!こら!勝手に入るな!!」
フレデリックは、慌ててキンタローの前へ走り込む。
「大丈夫。暴れない様に言ってあるから」
それでも、退かないフレデリックに、ちょっとキレたキンタロー。
「わかった。じゃあ、フレデリック、責任取ってね」
フレデリックは、は?とした顔で、いきなり責任を取れと言われ困惑していた。
「オレ達は、入れてくれれば、暴れない。だけど、フレデリックは入るなと言う。だから、ここで暴れます」
「「「「は?」」」」
フレデリックやフラムは勿論、ハンスや門番も突然の事に目を丸くする。
「あ~あ、すんなり入れてくれれば、ここにいる門番達も怪我や死ななかったのかもしれないのに。フレデリックのせいで、タイヘンダー。門番の家族や友人に恨まれるだろうなー。オレは暴れないって言ったのに、フレデリックが止めるから、暴れるはめにナルトワナー」
無茶苦茶な暴論である。
『やれ!クマゴロー!』
キンタローの合図で、クマゴローはその巨体を起こし立ち上がり、牙を剥き出しに、低く唸る。
ただでさえ低身長のドワーフには、クマゴローの巨体は倍近い。
クマゴローの殺気を浴びて、怯える門番達とフラムとハンス。
「あれ?フレデリックは?」
いつの間にか、フレデリックは居なかった。
「あ……あの……村の中へ逃げました」
門番が恐る恐るキンタローに言う。
「速っ!」
キンタローがフレデリックの逃亡に呆気に取られていると、クマゴローは殺気を消して、フワァ~~と大きな欠伸をしてその場に伏せる。
その様子を見て、ホッと一息ついた門番とフラム。
「悪いけど、村長さん呼んできてくれる?それが手っ取り早いから」
そう言うと、門番もフラムもハンスまでも、そういや居たな、って感じでポンと手を叩いた。
◇◇◇
しばらく、待っていると門番が村長を連れてきた。
村長は意外にも若い青年だ。
「そうですか……またフレデリックさんが勝手な事を。申し訳ありません、キンタローさん。それとラウザ親方達を助けて頂き村を代表してお礼を申し上げます」
村長は、頭を下げて礼を言った。
暑苦しいイメージのドワーフとは、かけ離れた爽やかさだ。
そして何でみんな、この爽やか村長を忘れてたんだろう?と疑問に思うキンタローだった。
「ところで、村に入っていいのですか?」
フラムが村長に問いかける。
「暴れないと言ってくれてるのでしょう?構いませんよ。ですが、その前に………」
村長がチラッとキンタローの胸元を見る。
「良かったら、お顔を見せて頂けませんか?妖精さん」
ミカンはそう言われ、キンタローの服の襟元から、ひょこっと顔を出した。
「はぁぁ………妖精族を追い帰すなんて、あり得ないでしょうが、全く………」
村長は、深いため息を吐くと、アーチ型の入り口の横に移動し、頭を下げる。
門番もそれに倣って並び頭を下げた
「「「ようこそ!我がドワーフ最大の村、ドワンゴへ」」」
キンタロー達と、フラムを乗せた馬車は、アーチ型の入り口をくぐった。
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