20 ドワーフ族
赤い髪=ドワーフってお話。
「あ、あの……私の顔に、な、何か付いてますか?」
じっと見てくるキンタローから視線を外し、頬を朱に染めた。
フラムは、身長こそ130cmと今のキンタローと同じくらいだが、典型的なドワーフのイメージとは違い細身で、スラッとした体型をしていた。
白いワンピースで真っ赤なストレートのロングヘアがよく映える。
日の光が髪にキラキラと反射していた。
実はキンタローは、初のドワーフとの遭遇にじっくりと見たかったが、髪の反射に少し眩しく、目を細めてただけだった。
「ねぇねぇ、この人苦しそうだけど放っておいていいの?なの~?」
いつの間にか、馬車の荷台の上にいたミカンが声をかけた。
「「よ、妖精!?」」
フラムとハンスは、突然現れた妖精に驚いた。妖精など、ほとんど森から出ない為、二人とも初めて見たのであった。
「ア、アレン!!」
フラムは、ハッとして荷台にいるアレンを覗きこむと、アレンはうなされていた。
「あ、あの妖精さん。もし、良かったら妖精さんが作る傷薬を譲って頂けませんか?お願いします。」
フラムは、ミカンに向かって頭を下げた。
「ミカンなの」
「へ!?」
思わず頭を上げミカンを見る。
「妖精さんじゃないの、ミカンはミカンなの」
「あ、えと……ミカンさんお願いします」
再び頭を下げた。
「でも、ミカンは持ってないの」
えっへん、と胸を張るミカンに、フラムは頭を下げたまま怒りに震えている。
(あぁ~、このままじゃ不味いな……)
キンタローは、そう思うとリュックから餞別に貰った妖精の傷薬を、フラムに渡す。
(持っているじゃない!!)
フラムは、文句の一つも言いたかったが、グッと堪えて顔を引きつらせながら、キンタローとミカンに礼を言うのだった。
「ね、ミカンは持ってないの。持ってるのは、キンタローなの。」と益々胸を張るミカン。
(紛らわしいのよ!!)
そう、心の中で怒鳴るフラムだった。
アレンを手当てしたフラムは、改めて礼をキンタローだけに言った。
「本当に助かりました。お礼がしたいので、ドワンゴ村まで来てくれないかしら?えーと、あ、名前伺ってもいいかしら?」
「オレはキンタロー。このサイレントベアーが兄弟のクマゴロー。で、さっきから人の眼前でブンブン飛び回ってる蝿みたいのがミカン」
「蝿はあんまりなの!」
飛び回るのをやめ、キンタローの方を振り向いて、プリプリと頬を膨らませ怒っている。
「キンタロー……さん、ですね。それにサイレントベアーが兄弟………それに蝿………」
「だから、蝿じゃないの!!あんまりなの!そろそろ本当に泣くの!」
こんな道のど真ん中に、いつまでもいるのは御免だと、キンタローはミカンを捕まえ、自分の懐に入れて落ち着かせた。
◇◇◇
「お嬢!いつでも出発できますぜ」
ハンスがそう声をかけると、フラムは「お嬢じゃなくて、いい加減親方と呼んでよ」と文句を言うと「はい、わかりました。お嬢!」と力強くハンスは答えた。
この二人のやり取りで、フラムとハンスが長い付き合いで親しい関係なんだと見てとれた。
◇◇◇
「そう……クマゴローさんのご両親に………」
馬車と並走しながら、キンタローは、自分の生い立ちをフラムに話していた。
フラムがジーッとキンタローを見る。
「気になったんだけど、キンタローさんの黒髪は珍しいわね。いえ、珍しいというより黒髪自体見ないわね」
そう言い、フラムはハンスの方を見るとハンスは首を横に振る。
(そういえば、長老も同じような事言ってたな……)
「知ってるとは思うけど、種族によって色んな特徴があるわ。例えば、私達ドワーフは、他の人族に比べて低身長で、赤っぽい髪の毛が特徴ね。ま、私は赤過ぎるけど……」
フラムは、そう言うと真っ赤な髪を指先で弄りながら、不機嫌そうな顔をした。
「あれ?自分の髪、嫌いなの?オレは綺麗だと思うけど?」
フラムは、キンタローの言葉に驚き、思わず顔を伏せる。
「そ、そう?ありがと……」と小声で言ったのだった。
ちょっと気まずい空気になったが、それを払う様にハンスとクマゴローが同時に「『ごほん!』」と咳払いをした。
「え、えーと、あ、種族の特徴ね。ドワーフはさっき言った通り。獣人は、髪の毛は様々だけど、何型の獣人かによってその特徴が出るわ。だけど、やっぱり黒髪はいないわね。魔人族は、分かりやすいわ。頭に角が生えてるもの。エルフはやっぱり耳ね。めったにエルフ自体は見ないけど、黒髪のエルフは聞いた事無いわね」
やはり《人間》だからだろうと、考えていた矢先、
「お嬢。この方、もしかしたら少数種族じゃないですかね?」
ハンスがそう言いだした。
少数種族──こういう場合、珍しがられるならまだマシで、迫害などを受ける場合が多い。
キンタローはこの世界初の《人間》である。間違いなく少数種族である。
「まあ、それでも私は気にしないわ。大体キンタローさん自身、赤ん坊の時に捨てられたのよ。本当に少数種族かどうかもわからないわ」
キンタローは、その言葉を聞き、ホッとする。
迫害よりも、迫害されたキンタローを見てクマゴローが黙ってる筈がない。
キンタローは、そっちの方が怖かった。
◇◇◇
「あ、見えてきたわ。ドワンゴ村よ」
フラムが指差した先を見ると、アーチ型の入り口があり、村を囲うように木の柵があった。
あちこちに家がある雑多なイメージだったが、外から見る限り区画整理がされた感じに家が並ぶ。
その家々の屋根は、ドワーフを示す様に全て赤色だった。
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