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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第3章 赤い髪と巨人とひょろ親父
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19 赤い髪


ヒロインってお話。


「「「───な!!!?」」」


 馬車を追っていた3人のエルフは、突然馬車が端に寄ったかと思うと、その横をすり抜けて、こちらに向かってくる巨体に驚いた。


 横並びで追っていた為、両端にいたエルフは咄嗟に街道脇の森へ避けれたが、真ん中のエルフは躊躇ってしまう。


『行けぇぇぇ!クマゴローぉぉ!!』


 キンタローは叫ぶと、クマゴローは一切スピードを落とすことなく、真ん中のエルフを吹き飛ばす。

 簡単に5メートル近く撥ね飛ばされ、そのまま地面を転がり気を失った。


 キンタローは、クマゴローから飛び降り『殺すなよ!』と声をかけると、その声に一つ頷く。

 キンタローが背負ったリュックの取っ手に、指を引っ掛けて、そのまま一回転すると、キンタローをリュックごと、そして懐にいたミカンごと、森へ避けたエルフに向かってぶん投げた。


「───なの~~~!!」


 森へと消えていく叫びに、ミカンをすっかり忘れていたクマゴローは一言『すまん』と心の中で謝った。



 森へ回避したエルフは、突然現れたサイレントベアーに対処すべく直ぐに態勢を立て直し、弓を構える。

 しかし、そこに自分に向かって飛んでくる、リュックと少年と「なの~~」という変な声。

 もしかしたらもう少し、森の奥へ進んでから態勢を整えれば、避けれたのかもしれない。

 しかし、すぐに立て直したのが却って仇となった。


 エルフは、なすすべもなくリュックにぶつかる。

 ただのリュックではない。

 中は小玉スイカ並みの大きさの《マーレ》が大半を占めている。

 思わぬ衝撃に、エルフは軽い脳震盪を起こし倒れこみ、キンタローは、着地と同時にナイフを抜く。

 すぐさま倒れたエルフに馬乗りになって、ナイフの切っ先を首に突き付けた。


「動くなよ。エルフには聞きたい事があるんだ」

「酷い目にあったの~~」


 キンタローの懐から出てきたミカンの抜けた様な声により、キンタローの冷静な声が、却ってエルフにとっては、冷めた声に聞こえ、キンタローが只の少年じゃない様に思えた。


 決着は着いたと、クマゴローの方にほんの少し意識をやる。

 しかし、ここで予想外な事が起こる。

 完全に諦めた様子だったエルフが、突然キンタローの下で暴れだし、ナイフを握った手首を掴まれる。


「しまった!!」


 そう思った刹那、更に予想外の事が起こる。

 エルフはナイフを奪うのではなく、キンタローの手首を自分の首に引き寄せ、自分の首をナイフで突き刺した。


「な、なにぃぃ!!!?」


 キンタローは突然の事に動けずにいる。

 そして、キンタローの下にいたエルフは、最後にビクンと跳ね、動かなくなった。


「大丈夫なの~? 大丈夫なの~?」


 キンタローは、ミカンに揺すられハッと気が付く。

 どうやら、暫く呆然としていたみたいだった。


 キンタローがミカンを見ると、揺するミカンの手は、震えている。

 ミカンに礼を言うと、その震える手を取りミカンを懐に入れてやった。


 キンタローは、エルフからナイフを抜いて返り血を浴びると、リュックから水筒と布キレを取り出し、顔とナイフを拭いた。


 エルフの遺体は枯れ葉などで隠したあと、水をがぶ飲みしてから、クマゴローの所に戻った。




◇◇◇

 クマゴローの近くには二体のエルフの遺体があった。


 しかし、その二体ともクマゴローの仕業ではなく、首にナイフを刺して死んでいる。

 クマゴローの話では、回避出来たエルフは、逃げだしたが、背後からの体当たりで倒れこむ。

 背中から押さえつけたが、すぐにナイフを懐から取りだした。


 クマゴローは、ナイフを出した時、直ぐに払おうとするが、まるで当たり前のかの様に、訓練でもされてるが如く、スムーズに自分の首に刺した。


 初めに吹き飛ばしたエルフは、目を覚ますと仲間の様子を見て直ぐに自殺したとの事だった。



『なぁ、キンタロー。エルフ(こいつら)って何なんだよ?』

『そんなの、こっちが聞きたいよ………』


 クマゴローもキンタローも、そしてミカンも、あまりにもエルフの不気味さに、背筋に冷たい汗が流れるのを感じていた。 




◇◇◇

「これでよし、と」


 ここは、キンタロー達が森を抜け、最初に出てきた丁字路。

 先ほど、逃げていた馬車が丁字路の中心に停まっている。

 ここからドワンゴ村までは、馬車ですぐだが、怪我人の応急処置をするためだった。


(結構酷い怪我……すぐに村に戻らないと……)


「ハンス! どう? エルフ達、追ってくる?」


 ハンスと呼ばれた御者の男は、木の上で見張りをしていた。


「お嬢!! 大丈夫です! エルフは見えませ──あっ!! お嬢!! サイレントベアーです! サイレントベアーがこっちに来ます!」


 ハンスはスルスルと木から降りてきながら、叫んだ。




◇◇◇

『キンタロー、あれ見ろ』


 クマゴローが先に丁字路に止まっている馬車を見つける。


『あんなところで何してんだ?』


 クマゴローの首をポンと叩くと、スピードを上げる。


(うわぁ……本当にお嬢の言ってた様にサイレントベアーに子どもが乗ってるよ……)


 ハンスは、逃げるのに夢中で、さっきはキンタローが目に入っておらず、お嬢と呼ばれた女の子から、サイレントベアーの上に子どもがいたと言われても半信半疑だった。


 キンタロー達が、馬車の近くに来ると、女の子は馬車から降りてキンタロー達の元へ近づき、頭を下げる。


「エルフに追われている所を助けて下さりありがとうございます。私はドワンゴ村でラウザ工房の親方をしております、フラム=ラウザと申します。以後お見知りおきを」

 

(……ラウザ?)


 フラムは礼を言うと、顔を上げニコッと微笑んだ。

 

 キンタローは、フラムのその可愛らしい笑顔と、燃える様な真っ赤な髪の美しさに、見惚れていた。

 

いつもお読み下さりありがとうございます。


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