15 新たな生活でクマゴローに趣味ができた
※人を投げて遊んではいけません。ってお話。
キンタローは、今空を飛んでいる。
(なんでこうなった………?)
キンタローとクマゴローとミカンは、先ほどまで獲物を狩っていた。
獲物は野うさぎ。
ただ、キンタロー達は自身だけで狩りをするのは初めてだ。
慎重に慎重に、野うさぎに近づき野うさぎを仕留める。
そこまでは、良かった。
キンタローとクマゴローは、喜びはしゃいぐ。
クマゴローは、キンタローの脇を掴み高く持ち上げ、クルクルと回って浮かれている。
ヘブシュ!!
クマゴローは、大きなくしゃみをすると、手に持っていたキンタローが居ない。
『あ、あれ? キンタローは? ミカン』
『飛んでるの~、ミカンと同じなの~』
クマゴローは、ミカンが指差す方へ目を向けると、上空を舞い、森の中へと消えて行くキンタローが見えた。
◇◇◇
キンタローには《衝撃耐性》のスキルがある。
痛みはあるが、怪我はしない。キンタローは焦っては居なかった。冷静だった。
しかし、その冷静さが今回は仇となる。
キンタローは、《足腰強化》で強化された足で、木の枝に着地すれば、枝は折れるだろうがワンクッション挟む事になる。そうすれば、痛みが少なくなると考え実行に移すべく態勢を整える。
着地する枝を見極め、狙いを定める。
「ッ!!!!!!」
見事に着地した────股間で。
そんな着地の練習などした事も無いのに出来るはずが無かった。
『キンタロー、大丈夫か!?』
『大丈夫なの~?』
クマゴローとミカンが駆けつける。
そこには、男なら一度はやっているだろう、ピョンピョンと中腰のまま跳び跳ねるキンタローがいた。
◇◇◇
キンタロー達は、野うさぎに処理を施した後、果物と薬の材料となる薬草を採取して、妖精の森に戻る。
すぐに薬の制作している場所に向かい、偽長老の老婆に薬草を渡した。
「指定されたの持ってきたよ。多分、種類間違ってるかも知れないけど。ミカンだし」
「うむ、合っとる」
キンタローとクマゴローが一斉にミカンを見ると、無い胸を張る。
「ミカンは、二回か三回に一度は、間違わないのじゃ」
偽長老の老婆から、フォローが入る。
ミカンにではなく、キンタロー達に……
(正解率33~50%かよ……)
最近、ミカンが可哀想になってくるキンタロー達だった。
◇◇◇
キンタロー達は、久しぶりの肉を食べた後、本物の長老の元へ向かう。
それは、長老から色んな話を聞くために。
狩りをし、採取をし、長老から話を聞く。
それがここ数日のキンタロー達の1日だった。
キンタロー達が長老の元へ来ると、起き上がろうとしたので制止した。
『それで、今日は何が聞きたいのだ?』
長老は、クマゴローにも聞かせる為に、魔獣の言語で話し出す。
『エルフ』
キンタローの言葉を聞き、クマゴローの耳がピクッと動いた。
『そうだな、まず何から……やはり、エルフと妖精の関係からだな』
そう切り出した長老の話は、まとめるとこんな感じだ。
妖精は、魔力を集まり人型に型取ることで、新たな妖精が生まれる。
その余った残りカスが、更に集まって生まれたのがエルフである。
そのエルフは古代エルフと呼び、実体の無い意思で、その古代エルフから妖精と似た姿をした、現在のエルフが生まれる。
現在のエルフは、何故か人族と同じように繁殖していき、現在の人数になっていった。
現在古代エルフは、いない。
そして、エルフは魔法を使えない。
『魔法が使えない?』
では、あの時キンタロー達が見たのは、何だったのだろうか?
それに答えるべく、長老が話を続けた。
『キンタローから、詳細を聞いたがの、まずそんな魔法は聞いた事がない。この世界で、魔法が使えるのは魔人族と妖精族だけだ。妖精族は身体が魔力で出来ている為、使えば身体が弱る。今のワタシみたいにの。 故に実際魔法を使えるのは魔人族だけだ。しかし、魔人族の魔法は、魔力を溜めて、直線的に放出する。この程度しか出来ん』
キンタローは話を聞き、ますます疑問が浮かぶ。
父熊の腕を飛ばした魔法は、恐らく魔人族でも出来るのだろう。
ただ、その直後の光の竜巻に関しては、そんなレベルでは無いはずだ。
『もし、オレが見たのが本当に魔法だとして、使えるのが1人だけでは無かったら…………』
『ふむ、世界のバランスが崩れるのぉ……』
辺りに一面重い空気に包まれた。
◇◇◇
すっかり日は暮れ、重い空気の中、キンタロー達は去って行った。
『もしかしたら、世界中が大変な事になりそうだの……』
長老しかいないこの場所で1人心配していた。
◇◇◇
『キンタロー、眠れないのか?』
クマゴローが、目を開けたまま空を見ているキンタローを心配した。
『もしかしたら、父さん達は、魔法の……』
“実験の為に殺された”
そう、続けようと思ったが、それでは余りにも報われない。
『いや、何でもない。おやすみ』
キンタローは、そのまま眠りについた。
いつも読んでくださり、ありがとうございます。
次で、第2章は終わりです。閑話を挟んで、第3章赤い髪と巨人とヒョロ親父に入ります。
さあ、ここらで一服しようか、栞代わりに上のブックマークを押そう。
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