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13 ジャン=クラウドと「パンツをおくれー」


パンツが欲しいってお話。


「違いますよ。どなたか、お知り合いにでもおられるのですか?」


 ジャンという男は、キンタローに答える。


「あ、こっちの話です」


 キンタローは、名前まで胡散臭いなと心中思っていた。


「あの、ところでキンタローさん。え……と、そのお友達ですか? 出来れば殺気を収めてくれませんかね? さっきから冷や汗が止まらないのですよ」


 ジャンは、飄々とした顔をしていながら、汗をダラダラとかいている。

 友達ではなく兄弟だとジャンに教えて、クマゴローを諫めると少し不満げに、その場に伏せた。


「ところで、お前どうやってクマゴローの探知をくぐり抜けた?」


 クマゴローの不満の原因にキンタローは気づいていた。


 子どものキンタローに「お前」呼ばわりされても平然とした顔をしているジャンは、自分は山猫型の獣人だから、気配を消す事に長けていると話し、「あとは、企業秘密です」などと言う。

 キンタローはクマゴローを、けしかけようとしたが、ジャンは慌てても、商売人の意地だろうか秘密を喋る事はなかった。


 ミカンによると、このジャンという男は2年ほど前に湖の近くで迷っていたところを、妖精が助けたらしい。

 それ以来、ここで薬を仕入れては、商売をしているという。


「主に回復薬と傷薬を仕入れさせて頂いてます。妖精の作った薬は良く効くのです。こちらはお金の代わりに果物とかをお渡ししています。キンタローさんも何か入り用があれば仰ってください。次回仕入れ時ますので」

 

 先ほどからキンタローがジャンを胡散臭く感じていながらも、割りと友好的にしているのは訳がある。

 それは、喫緊の課題《丸出し問題》だった。


「パンツ!」

「なるほど……」


 ジャンは、キンタローの格好を見て頷く。


「わかりました。次回は一月後になりますが、よろしいですか?」


 しかし、自分はお金を持ってない。

 ジャンも商売である。流石にタダという訳にはいかない。

 キンタローもその事はわかっていたので、何か方法は無いかと考えた。

 パンツに必死だった。


 キンタローは、一計を案じ、まずミカンとジャンに相談する。

 クマゴローは、フワ~ッと欠伸をしていたが、キンタローから協力してほしいと頼まれ、可愛い弟の為であるアッサリと快諾する。


『何で、人族はそんなに()が欲しいのだろう?』と、クマゴローは首を傾げた。




◇◇◇

 ミカンとジャンによれば、妖精達は他の人族の生活に憧れがあるらしく、家の庭でティータイムなどを楽しみたいらしい。

 かといって、ジャンやキンタローには妖精サイズとはいえ、家を建てるなど出来ない。

 大工などを連れてくる訳にもいかない。


 なのでキンタローは、東屋なら出来るかもと提案する。

 もちろん、妖精達やクマゴローの協力もいるが、ミカンやいつの間にか周りにいた妖精達は目を輝かせ協力すると言ってくれた。


 結果出来上がった草案をジャンが紙に書きあげる。

 

 一つ、ジャンは、果物などの仕入れの代わりに、東屋の材料、大工道具、妖精サイズのティーセット、他、キンタローが必要な物を薬の代金の代わりに仕入れる。

 

 一つ、キンタローは、果物や木の実の森での採取、薬の材料の運搬、東屋の作成などを行う。


 一つ、妖精族は、薬の生産量の増加、東屋の作成の手伝いなどを行う。


 もともと、妖精族にはお金など必要ない。

 だから果物だったのだが、キンタローのナイフとクマゴローが居れば、この辺りでは珍しくは無いが妖精にとって大き過ぎる果物や皮の固い果物など、食べた事の無いものが食べれる。


 薬の生産量の問題も、単に材料が妖精にとって重く、量が必要なため少量しか作れないのだが、これもキンタローのリュックとクマゴローが居れば問題ない。


 一方、ジャンも大工道具や木材など今までよりお金がかかるが、薬の生産量が増えれば、問題はなかった。


「あ、ここでは火が使えない」


 キンタローは、辺り一面の草と周りの木々を見て、万一燃え移ったら大変な事になると気付いた。

 ティータイムをするには、お湯が必要である。


「大丈夫ですよ。茶葉は水出し茶を仕入れますから。少し味は薄いですが」


 キンタローは、それを聞いて一考する。


「それなら、ハーブやちょっと果汁を入れたらいいんじゃないか?」

「ハーブ?」

「あ、えっと……香草ってやつ? ちょっと試してみるか」


 ジャンはハーブという言葉を知らない。

 キンタローは、ジャンの荷物にぶら下げてあるコップを借り、湖に出て水を汲み、そこに、香草は持ってないので果汁を搾って入れる。

 ジャンは、コップを受け取ると飲んでみた。


「ああ、香り付けですか。いい香りですね、確かに香草でもいい香りしそうだ。果汁だとほんのり甘さがあっていいですね。これ、他の人族でも流行りそうだ。よかったら真似させて頂いてもよろしいですか? そうですね、料金として、最初の仕入れは無料にしましょう。流行れば、その後の仕入れも勉強させて貰います」


 ジャンはいつの間にか商売人の顔になっており、顔をどんどんキンタローに近づけてくる。

 キンタローは、少し圧倒され了承した。


 キンタロー達は、草案を持って長老の所に赴いた。


「ふむ……東屋ねえ………」


 長老は、今までとは違い非常に渋そうな顔をしている。


「他の者達は、いいのぉ……」


 ちなみに、草案に関しては既に快諾して貰っている。


「ワタシでは、東屋に入れないなぁ………」


 長老は、単にふてくされているだけだった。


『キンタロー、なんとかしてやれ』


 クマゴローは、哀れみの目で長老を見ている。


「ジャンさん、通常のティーセット一つと、テーブルと椅子になりそうな材料追加で」


 ジャンは、こんな長老見たことないと、目を丸くしていたが、追加注文に平然としたフリをする。

 しかし、糸目過ぎて、目を丸くしていたのに気づく者は誰も居なかい。

 長老は、キンタローの発言に目を爛々と輝かせていた。



 ジャンを見送るため、中心の大木へ向かっていたキンタロー達。


(あ、名付けの事聞くの忘れてた。また今度でいいか……)


 今のキンタローにはそれどころではない。


「パンツ、忘れるなよ!」

「私は、商人です。注文を忘れるなどありえませんよ。それでは、皆さま、私はこれで失礼します」


 ジャンは、そう言って大木の中へ消えた。



 ジャンが居なくなり、しばらくした後、キンタローは気付いてしまう。


「しまったぁ~! パンツ以外の服、頼むの忘れてたぁ~!」


 マントの中は、パンツ一丁。立派な変態さんの出来上がりである。 

いつも読んでくださり、ありがとうございます。


レビューは、公開ラブレターみたいなもの。たから、書いてみる?


※誤字脱字などもご報告ください。

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