12 胡散臭い雰囲気の商人って致命的な気がする
※人族の言語は「」で、それ以外は『』になります。
追々、クマゴローくらいしか『』で会話しませんが、しばらくは混在します。
ややこしくて、申し訳ないです。
ミカンは、今地面の上で正座をして冷や汗を流していた。
キンタローは、ミカンの正面に伏せているクマゴローの上で、胡座をかいて座る。
威厳を出すため、腕組みもしようかと思ったが、胡座で座るとマントが広がり丸出しになる為、手で押さえるしかないのでやめた。
キンタロー達の周りには、草むらから、木の陰から、他の妖精達が何をしてるのか、興味津々で聞き耳を立てている。
クマゴローから、妖精の名付けの意味を教えて貰ったキンタローはミカンを問い詰める。
『ミカンは名付けの意味を知っていたんだな?』
『知ってたの……』
ミカンは、目を反らしながら、小さい声で答える。
『……で、《契り》を結んだから、オレとミカンは夫婦で、家族ってことか……』
キンタローは、何故長老があんなにあっさり承諾したのか納得するが、肝心のミカンが『ふうふ?………なの?』と、頭を傾けている。
うん? とキンタローは、自分が変な事を言ったのか、ミカンの様子に何かズレているのに気付いた。
『ミカンは《契り》がどういう物だと聞いてる?』
キンタローとミカンで《契り》の解釈が違うのかもしれないと。
『子どもが出来るの』
ミカンは、あっけらかんと答える。
『はぁ…………? ………ハアアッ!? イヤイヤイヤイヤ、おかしいよねソレ!』
キンタローは、顔を真っ赤にして、慌ててしまう。
まだ、キンタローは息が整えきれていなかったが、話が進まないので、ミカンに《契り》について、知ってる事を全て聞いてみる。
ミカンは、長老に、気に入ったヒト族(老若男女問わず)に、名付けて貰いなさい、そうすれば子どもが出来るから。とだけ言われたと話した。
『原因、長老かーーーい!』
キンタローの頭の中で、くくくっと笑う長老に怒鳴る。
(詳しくは、明日にでも長老にでも聞くか……)
キンタローは、疲れて過ぎて、次で最後にする事に決め、ミカンにちょっと投げやり気味に質問する。
『なぁ、ところで何でオレなんだ? 他の奴じゃ駄目なのか?』
『エッ!?』
クマゴローが驚き、キンタローの方に顔を向ける。
『エッ!? なの』
ミカンが、うつ向いていた顔をキンタローに向ける。
『『『エエエッッ!?』』』
周りで聞き耳を立てていた妖精が、思わず顔を出す。
『えっ? えっ? えっ?』
キンタローは何故そんな反応をするのかわからず戸惑っている。
『キンタロー、流石にそれは……』
クマゴローが呆れた顔を見せる。
『酷いの~、あんまりなの~』
ミカンは目に涙を浮かべる。
『ないわー』
『サイテー』
『泣かしたー』
周りの妖精はキンタローに冷たい視線を送る。
(えっ? 何でオレが責められてるの?)
キンタローの周りの空気が一気に凍りついた。
しかし、その空気を壊す声がキンタロー達の背後から突如聞こえる。
「お話はお済みですか?」
クマゴローは、その場から飛び退き、牙を剥き出しにして低い声で唸る。
キンタローもクマゴローの探知範囲をあっさり掻い潜り、背後で声を掛けられるとは思っておらず、声の主を警戒する。
その声の主は、飄々と立っており、背丈の高い人族の男性だった。
目は糸目で胡散臭く、その口元は笑みを浮かべ、まるで能面のようで胡散臭く、出で立ちも、やたらカラフルな服装も、ただただ胡散臭い。
ただ頭上には耳がピンと立っている。
キンタローが初めて会う獣人族だった。
『誰だ! オマエ!!』
キンタローは、糸目の男に聞くがその男は、表情は笑みのまま、首を傾げる。
「ああ、もしかして魔獣の言語ですか?」
糸目の男が両手でポンッと叩く。
「あ、ジャンなの~、久々なの」
ミカンが警戒心の欠片も無く糸目の男に近づく。
「お久しぶりですね、オレンジの妖精さん」
どうやら2人は顔見知りらしい。
「今はミカンなの~、キンタローに名前貰ったの~」
ミカンが、ジャンの前をクルクル回転しながら飛び回っている。
「素敵なお名前ですね。キンタローさんというのは、サイレントベアーの上の黒髪の少年ですか?」
ミカンが頷くと、ジャンはキンタローの方に近寄ると頭を軽く下げる。
「はじめまして、キンタローさん。私はキタの村のジャン商会の主、ジャン=クラウドと申します」
丁寧な挨拶が返って胡散臭さを増加させていた。
キンタローは《異界言語》のスキルのお陰で魔獣の言語を話せる。
しかし、キンタロー自身は人族だし、人族の言語も話せるはずと考え、少し喉の調子を確かめてから、ジャンに話しかける。
「クラウド? クロードじゃなくて?」
これがキンタローの初の人族の言語だった。
いつも読んでくださりありがとうございます。
評価ポイントの場所は、最新話の下の方にあるけど?
※誤字脱字などもご報告ください。




