エピローグ
『キンタローぉぉぉぉぉ!!!!』
クマゴローが物凄い形相で立ち上がると、フラム達もあまりにも衝動すぎて一瞬行動が遅れる。
ナイフをキンタローの胸に突き刺したレイナは、不気味に笑っていた。
「衛兵っ!」
トーレスが声をかけた時、キンタローの体が後ろに一、二歩下がる。全員が全員、最悪の状況を思い浮かべる中、唯一その表情を崩さなかったのがアリエルだった。
エルフが居なくなり妖精族の森を作らなかったアリエルは、キンタローの家でいつものんびりしており、この日も皆と一緒に宴会を過ごしていたのだが、レイナが宴会に来てからは、ずっと遠巻きにレイナを見ていた。
「えっ!?」
キンタローが刺され、周りが宴会の時以上騒がしくなった時、唯一この声だけがクリアに周囲の者達には聞こえた。
声を出したのはレイナ。その直後レイナの肩から斜めに傷が出来、血が一斉に噴き出す。
「残念だったな、アルメイダ?」
レイナを袈裟斬りに斬ったのは、キンタローだ。その手にはしっかりと剣が握られていた。
「ど、どうして?」
「あ!? あんなバレバレの小芝居しといて、何言ってやがる。向こうのアルメイダが死んだ直後に目を覚ますは、目が見えないのにオレが差し出した手をアッサリと掴むは、アホか?」
平然と立ち、倒れ行くレイナを冷静に見下ろしながら説明してやると、おもむろに服を脱いで見せる。
キンタローの上半身には、以前プギーが使ったコルセットと似た物が巻かれていた。もちろん心臓もしっかりと守られている。
「ナイフで刺してくるのもわかっていたさ。お前を見張っていたのはオレだけじゃないんだ」
「ナイフ隠すなら上手くした方がいい。バレバレ」
倒れたレイナの頭の近くに立ったアリエルが、見下ろしながらそう言うと、レイナの表情が歪になる。
「ぐっ……騙し合いで負けるなんて……」
睨み付けて意識が切れかけのレイナに対して、アリエルはボソッとレイナに向かって呟く。
それを聞いたレイナは目を大きく見開き、悔しそうな表情のまま逝く。
「ふーっ、自分の手でケリつけれたし溜飲が下がったな」
キンタローは剣を鞘に納めると、振り返り全員に聞こえる様に叫ぶ。
「ほら、ほら。宴会は始まったばかりだ! みんな、騒げぇ!!」
「「「お、おぅ……」」」
突然の事にパニックになっているのだ、みんな気のない返事しか出来なかった。
──fin──
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キンタロー達のその後をちょっとだけ
キンタロー。享年94。亡くなる迄に三男三女をもうける。
初代イズーリア王国の国王とされるが、それは後々勝手に呼ばれただけで建国したのは、キンタローの孫。
キンタローの存命中の話ではない。
主だった者達を見送ってきたキンタローは、最期育った洞穴に戻り、唯一生き残っていたミカンに見守られ息を引き取った。
クマゴロー。享年36。決着後、キンタローに年の差をからかわれながらも、番になり双子を産む。
森に戻る事は無く、常にキンタローの側におり、その事に嫉妬したクマゴローの旦那がキンタローに突っかかる度に、照れながらも『アホか』と言って喧嘩を見守っていた。
最期は、大好きなキンタローに見守られ両親達の元へと旅立った。
ミカン。享年不明。キンタローの常に側におり、自分がキンタローの第一婦人だと言い張りながらも、仲良く過ごす。
一応妖精族の長老になるが、森に戻らず常にマイペースで大好きな木苺を頬張っていた。
キンタローの孫達の争いに嫌気がさし、キンタローの希望もあってキンタローを連れて洞穴に。
キンタローを見送った後、姿を消しその後誰も見なかったという。
アリエル。享年不明。レイナが死んだ後、長老の座を降りミカンに譲る。その後キンタローの家を出て行くが、その際キンタローに「見守る主義かなんか知らんが、やるならお前がやれ!」と出て行く時に言われる。
その後、姿を見た者は居なかった。
フラム。享年42歳。シルビアの妹を後に産む。キンタローの第一婦人としてキンタローを支えるも、若くして逝く。
しかし、キンタローが本当に愛していた女性だとして後世に名を残す。
アンリエッタ。享年71歳。キンタローとの間にアルともう一人男の子を産む。
キンタローの第二婦人としてキンタローを支えるも、フラムが亡くなった後、周りから第一婦人と呼ばれるがあくまでも自分は第二婦人だと言い張った。
孫がイズーリア王国を建国するが、フラムの所の孫と自分の所の孫の折り合いが悪く、常に心を痛めていた。
最期はキンタローに見守られ亡くなる。
ニナ。享年不明。キンタローとの間に男の子と女の子を産む。
初めはキンタローの第三婦人としてキンタローを支えるが、アンリエッタの子供アルがキンタローの跡を継いで村長になると、二人の子供を連れて出て行く。
噂では自分の子を継がしたかったとか、アルと仲が悪く追い出されたとか流れるも、キンタローは、たまにフラッとニナの元に行っていた。
トーレス。享年65歳。生涯独身。その容姿からモテてはいたが、結婚する事はなかった。隠し子がいるとかいないとか。
その知謀はキンタローの右腕として発揮し、村の内政に大いに貢献する。
亡くなった後、その体はキンタローの手によって、父と兄が眠る地へ埋葬された。
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「なぁ、ミカン」
「どうしたの~キンタロー」
「オレ、結構幸せな人生だったよなぁ」
「うーん、わかんないの~。でもキンタローは頑張ったの~」
「またクマゴローに会えるかな?」
「絶対待ってるはずなの~。クマゴローならきっと飛び付いてくるはずなの~」
「昔みたいに三人で旅したいなぁ」
「したいの~。でも、キンタロー。その前にゆっくり休んでなの~」
「あぁ……」
~true end~
四月から始めて4ヶ月とちょっと。
出来不出来は別として処女作を完結させる事が出来ました。
良ければ、私の他の作品を読んで頂けると幸いです。
Kaijiin