11 妖精の長老(本物)
生きるのが精一杯ってお話。
『失礼なやつじゃの、まだピッチピチじゃぞ……』
妖精サイズの老婆は、ブツブツと文句を言いながら、先行して案内してた。
(ピッチピチ? 生きるのがピッチピチ限界の間違いじゃないのか?)
キンタローは、冷めた目でクマゴローに乗りついていく。
しばらく歩くと、視界が開けて、真ん中には大きな切り株の上で寝ている人物が見えた。
キンタローとクマゴローは、その姿を見ると最大限に警戒をし、キンタローは素早くクマゴローから降りナイフに手を掛ける。
クマゴローは、低い唸り声と共に牙を剥き出しにした。
老婆とミカンは驚き、場の空気が一気に凍りつく。
『『エルフ!!』』
切り株にいた人物は、妖精サイズではなく、むしろ人間の大人と同じ背丈。銀色の長い髪に、スラッとした手足、細身な体型だがかなりグラマーな綺麗な女性。
だが、その耳はエルフ特有の尖った耳をしていた。
しかし、キンタローは背中の羽に気付く。
『しまった!』
キンタローは、すぐにナイフから手を離して、クマゴローを手で制止した。
老婆は『無礼なヤツじゃ!無礼なヤツじゃ!』と騒ぎ、ミカンも『違うの~、違うの~』とキンタローの眼前をうろうろしていた。
『構わぬ、構わぬ。エルフと間違えたのであろう? 気にするな』
切り株から降りた女性が、カラカラと笑いながら、膝をついて謝ろうとするキンタローを止める。
『まあ、何も出せぬがそこに座るとよい』
キンタローは促されその場に座る前に、眼前を未だにうろうろしているミカンを両手で掴み、クマゴローの頭の上に置いた。
『予想はついてるだろうが、ワタシがここの長老だ』
キンタローはその場に座り、クマゴローが伏せるのを見ると、長老もゆっくり切り株に腰をかける。
『すまぬが座らしてもらうぞ。少し体が弱っててな。で、話があるらしいな?』
キンタローは、自己紹介と昨日の出来事を話した。
『なるほどの。エルフに家族をか……しかし、珍しいのエルフがそれほどの人数で集まるのは。それに、魔法ねぇ……』
長老は、思うことがあるのか、頬に手をあて考え事をしている。
『で、敵を討つにせよ何にせよ、力を蓄えるまで庇護してほしい。そんなところか?』
ズバリ言い当てられ、内心キンタローは焦った。
キンタローは元々、何か生活の上で手伝える事があれば手伝う代わりに庇護してもらうつもりでいた。
所謂、ギブアンドテイク。
しかし、先に言い当てられた事で、主導権を向こうに取られる。
庇護してもらうためには、向こうの条件を飲むしかなかった。
『ふむ、全然構わぬよ』
キンタローは、あっさり承諾された事に何かあるんだと疑ってしまう。
老婆が『だめですじゃ~。』と叫ぶ。
『ふむ、何か裏があると思っておるな。そこの妖精、名は何だったかの?』
ミカンはクマゴローの頭の上でモジモジと体をくねらす。
『ミカンなの~、とっても気に入った……あ、きゃっ、痛いの!』
クマゴローは頭の上でもぞもぞするので、ブルッと震えてミカンを振り落とした。
その様子を見て長老はクスクスと笑っていた。
『くくく……ミカンか、良い名だ。ミカンはキンタローから名を付けて貰ったんだろう? なら、家族ではないか? それに、キンタローとそこのクマゴローは兄弟なんだろう? なら家族も同然ではないか』
長老は、キンタローにというより老婆に言っている。
老婆は『むむむ……』と黙ってしまった。
『ミカンよ、キンタローを色々案内してやったらどうだ? と言っても何も無いがな』
長老がそう言うと、ミカンがマントを引っ張って『早く行こうなの~』と急かす。
『なに、まだまだ時間は充分にある。世界の事など、何時でも話してやるよ』
長老にそう言われ、キンタローは渋々、ミカンに案内される事になったが、このままでは迷子になると思い、片手でガッと頭を掴むと『へやっ!』と変な声を出した……………老婆がいた。
『お前も来い!』
老婆は、『長老様!長老様!』と助けを求めるが、『行ってこい』と手振りで合図した。
『あ、そうそう。キンタロー、間違っても他の妖精に名前を付けないようにな』
長老が呼び止めそう言うと、キンタローは首を傾げる。
『(名前考えるの面倒だし)ミカン以外、考えられないよ』
キンタローの言葉に、いつの間にか頭の上にいたミカンは、スルスルと顔を伝って、腕に抱き付き、顔を伏せる。
ミカンの顔は耳まで真っ赤だった。
『あれ? クマゴロー、来ないの?』
キンタローに付いてくる様子が無いので、不思議に思った。
『ああ、昨日から色々あったからな、少し休んでから行く』
キンタローも、いつも一緒に居てくれたクマゴローにも、そういう時があるかと切り替え先に行く事にした。
◇◇◇
キンタロー達がクマゴローの探知範囲内から出ると、立ち上がる。
『それで、ワタシに聞きたい事は何だ?』
長老が先に切り出した。
『あー……、ちょっと気になってな。なんで、名前を付けて貰ったら家族なのかな?ってな』
長老は、含みのある笑みを浮かべる。
『キンタローは、気付かなかったみたいだがな。簡単に説明してやろう。妖精族にとって名付けは、契約みたいなもの……というより《契り》と言った方がしっくりくるかな』
『《契り》?』
クマゴローは、首を傾ける。
『ヒトで言うと、婚姻だな』
『はぁ?』
クマゴローは、ますます首を傾ける。
『魔獣で言うと、番だな』
『はぁ……ハアァァッ!?』
クマゴローの首から、グキッと嫌な音がした。
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