103 再会
「アルメイダぁぁぁぁっ!!!!」
神罰の槍を携えアルメイダに突進していくサフィエル。キンタローがコードに繋がれた少女を救うために機械を破壊したことで呆然としていたアルメイダは、サフィエルに気づくのが遅れ、身を翻すが槍が服を掠める。
「くっ!」
サフィエルは躱され悔しがるが、キンタローの行動とサフィエルの攻撃で苦々しく思い顔を歪めるアルメイダ。と、アルメイダの視界の端に拳が突如現れ、顔に当たり数メートル飛ばされる。
「ぐぅっ! いつの間に!」
かろうじて首を捻っていたアルメイダには、クリーンヒットとはならず、体勢を立て直しかけるが、またしても右腕に痛みが走る。
軽く飛ばされたアルメイダが、先ほどまでいた位置を見ると、そこには蹴りを繰り出した後の長身の男性が、顔を殴られた所には長身の女性がいた。
「がは……っ!」
確認の一瞬の隙をつかれ腹を押さえながら、よろよろと後退するアルメイダ。目の前には腹を殴ったであろう二人の子供達が見えた。
「い、一体どこから?」
サフィエルの一撃を躱したくらいだ、油断はしていない。しかし、何処からか現れ殴られた事に混乱をきたしていた。
子供達が追撃してくる為、常人では考えられない位に跳び上がり躱してみせる。が、そこに羽の生えた女性が飛びかかってくる。そのまま胴体を掴まれたアルメイダは後方の壁に叩きつけられ、ずるずると壁に擦りながら地面へと落ちた。
「長老っ!? それにサフィエル」
「久しぶりだな、キンタロー」
自分の目を疑うキンタロー。思わず見えない壁際まで寄っていく。
「お前がキンタロー……つまり八雲だな……って、アリエル!? なんで、お前がそこにいるんだよ」
「久しぶり~」
驚くサフィエルに対して、へらへら笑っているアリエルが手を振る。
「チッ、どんだけ心配したと思ってるんだ。おい! お前ら、あそこにいるのがキンタローだと」
サフィエルがキンタローを指差しながら、長身の男女に向かって叫ぶと、長身の男女そして二人の子供はキンタローの前まで駆け寄ってくる。
突然駆け寄ってくるが、キンタローには見覚えがない。しかし、隣にいたクマゴローは違った。見覚えがある四人。
クマゴローには何故ここにあの夢の中の四人がいるのかがわからない。困惑した様子のクマゴローを見て、キンタローは察した。この四人がクマゴローが話をした夢の中の四人だと。
肩を震わしながら俯いて黙っているキンタロー。その足元には、ポタポタと滴が落ちる。
「うわあぁぁぁぁっ!! 父さんっ! 母さんっ! 兄弟!」
大声で泣きながら叫ぶキンタローにクマゴローは驚く。思わず人族の言語で叫んだためクマゴローには分からなかったが、壁の向こうの四人も泣いて何かを話かけてきていた。
クマゴローはキンタローが何を言ったのかミカンに聞くと、わなわなと身体が震えキンタロー共々泣きながら、見えない壁を何度も何度も叩き出す。
『父さぁん、母さぁん!! 兄弟ぃ!!』
何度も何度も手応えなどないのに、見えない壁を叩く。向こうに行って父さん達に触れたい。
向こうに行ってキンタローとクマゴローを抱き締めてあげたい。
その一心で。
しかし、それは叶わずキンタローの手に合わせる様に、母さんも壁に手をあてる。
「こんなに大きくなって……」
「母さん……」
頬を流れる涙を拭うことなどなく、お互いの姿を目に焼き付ける。二度と会えないと思っていた人を、今度は本当に二度と会えなくなることがわかっているから。
名残惜しそうにお互い壁から離れると、四人はアルメイダの方に向き直す。
「あんた達! 今度は子どもの前で情けない姿見せられないさね!!」
「「「おー!」」」
四人の目は不退転の決意に燃える。十数年前、キンタロー達の前で見せてしまった無様な姿を払拭するかのように。
「やっと終わったか? アリエル、お前にはアルメイダと決着着けたら話がある」
サフィエルは槍を構え、四人と長老も身構えた。
次で最終話になります( ^∀^)