SS サフィエル登場!
「ワタシがサフィエルと出会ったのは、ワタシが生まれた直後だ。お前は踞って、洞穴に隠れる様にワタシを見ていたんだ」
元長老はサフィエルに出会った頃の話を始める。当時、長老になる以前にサフィエルと出会い、そして名付けとして、アーガスタ=リード=エーシアタ=ルノーを貰った。
しかし、サフィエルが付けたにも関わらず、長い、面倒と言う理由で、頭文字を取り、アリエルと呼んでいた。
三年ほどイズーリア大陸を回り、様々な人達に会った後、突然サフィエルが自分の元から居なくなったと話す。
しんみりとした空気の中、サフィエルが口を開く。
「……なんか、悪かったな。覚えていなくて」
「随分、殊勝だな。気にする必要はない、これからは嫌がっても一緒にいるしな」
元長老のアリエルの少し皮肉気味な笑顔に、サフィエルの表情は強ばった。
サフィエル達は移動し続けるが、階段を上がったり下りたりと向かっている目的さえ見えない。
「おい。本当に何処に向かっているんだよ。脱出なら上じゃないのか?」
「もうすぐさね。サフィエルを助けたら、連れて来るように頼まれたのさ」
そう言いながらも、再び上がったり下りたりと繰り返す。そして、目的地に着いたようで長身の女性は立ち止まる。
「ここさね」
立ち止まった所にある扉を開けると部屋になっており、そこには袋に包まれた長い棒状の物を肩に立てかけている真っ白な仮面を付けたマントを羽織った人物が。
「し、守備隊? どうしてこんな所に……」
サフィエル達を閉じ込めた張本人の登場に、警戒するサフィエル。自分達が閉じ込めて、助けるように頼むとは意味がわからなかった。
真っ白な仮面マントは、肩にかけた棒状のモノをサフィエルの足元に投げる。
「持っていけ」
サフィエルは怪訝な顔をして、恐る恐る棒状のモノを拾うと、袋から中身を取り出す。
「神罰の槍!?」
中身を見て驚くサフィエルだが、何故これを渡すのかがわからない。
「オレにこれで何をしろと?」
「今からお前には行って貰うところがある。それはお前が、いやお前達が一番会いたい人物の所だ」
仮面マントからその人物の名前を聞き、全員が固まる。
「お前はいったいどっちの味方なんだ?」
「私に敵味方などない。あるのは、あのお方の命令と守る事だけだ。下の者達は知らんがな」
いまだに納得はいかないサフィエルだが、仮面マントからその人物がいる場所までの道程を聞くと、しばらく考え事をして再び目を開ける。
しかし、そこには既に仮面マントの姿はなかった。
「あれ? アイツは……?」
誰も気づくことさえなく、皆は、ただ首を横に振る。
ここで、立ち止まっても仕方がないと、槍を強く握りしめ再び全員走りだした。
◇◇◇
かなりの距離を走り、下へ下へと向かっていく。
「うん!? 話声が聞こえるさ」
立ち止まった場所の壁に耳を当て中の様子を探ると、確かに話し声が聞こえたのだった。
「ここか。ここにアイツが……」
サフィエルは、耳を当てた壁に人工的な亀裂を見つけると、槍を構える。
長身の男女が、亀裂に指を引っかけると思いっきり力を込めると、壁を下へと動かし、同時にサフィエルは開いた穴へと力一杯突っ込んで行き叫んだ。
「アルメイダぁぁぁぁっ!!!!」