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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
最終章 金と神とエルフ
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99 突入前日

 クマゴローが復活した後、しばらくしてキンタローはクマゴローから夢の話を聞かされる。それはクマゴローが生死を、さ迷っている時に見た夢。


 河の対岸に知らない四人の男女。しかし、何処か懐かしい四人の男女の夢。


 キンタローは、当時クマゴローが生死の境にいたことと、河という言葉から、所謂“三途の川”ではないかとすぐに思い付く。


 しかし、この手の話に出てくるのは、祖先とか近親者だ。クマゴローから容姿を詳しく聞くが背の高い男女と子供の男の子と女の子の人族だと。


 クマゴローにはピンと来なかったようだが、キンタローは違った。そう、この手の話に出てくるのは、血縁者が大概だ。しかし、確信などは持てない。キンタローは、いずれ話そうと、心にしまうのだった。


◇◇◇


 エルフがいる所へ突入する前日。キンタローから出発に向かうメンバーが発表される。


「まず、向こうはどんな所かわからない。入ったらエルフが大勢待ち構えているかもしれない。

一つだけ、こちらへ戻ってくる出口は残してはいるが、それを見つけられずに閉じ込められるかもしれない。それを心しておいて欲しい」


 キンタローの周りには、覚悟を決めている者がほとんどだ。文句や愚痴を言い出すものは居なかった。


『まずはクマゴロー、ミカン頼む』

『おう、任せろ』

『わかったの~』


 キンタローが一番信頼出来、一番最初に思い付いたのはクマゴローだった。

ミカンは自薦だ。本来アリエルを生んだミカンには、キンタローの側にいる必要はない。しかし、ミカンが側にいたいとこの日の前夜、こっそりとキンタローに頼んでいたのだ。


「次にハンス、ニナ」

「……わかった」

「わかりましたぁ!」


 周りはざわつく。ハンスもニナも意外な人選だった。ハンスには、突入した後どのくらい滞在出来るかわからないが、力があり食糧を持ってもらうつもりだ。

 ニナに関しては、キンタローの気遣いも含まれている。ニナは、フラムやアンリエッタとの結婚の式を見てからと言うものの、しきりに自分ともと言い出していた。

下手をすれば、二度と式など挙げれないかもしれない。故にノイルではなく、ニナを選んだ。


「最後に、おっちゃんと、魔王のおっさんにも来てもらう」

「「おう!」」


 メンバーを発表した後、選ばれなかった人達は動揺する。何より一番意外だったのはトーレスだ。


「キンタロー。どうして僕は入っていないのですか?」


 珍しくキンタローに食ってかかる。それもそのはず。キンタロー以外の全員がトーレスは入っているだろうと、予測していた位だ。


「トーレス。お前には万一オレが戻って来なかった時、みんなを率いてもらいたい。それが出来るのはトーレスだけだと、オレは一番初めに外したメンバーはトーレスだ。だから、頼む」


 トーレスはキンタローに頭を下げられ、それ以上何も言えなくなってしまう。


「ワタシも行く」


 突然この場に現れたアリエルに一同驚く。横には若返った元老婆の妖精も。


「妖精の森はいいのか?」

「あそこは一時閉めてきた。ワタシは恐らくここにいる誰よりも、詳しいはず。だから」

「わかった。向こうにはアルメイダがいるかも知れないしな」


 しかし、アリエルは首を横に振る。


「それは、まずない。こことは次元が違うから」

「え? そうなの?」


 向こうに行けば、アルメイダの顔面に一発くらい食らわそうと思っていたキンタローは、残念そうだ。


「しかし、それならどうして一緒に?」


 アリエルは口角がつり上がり、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。


「少なくとも、アルメイダをこういう顔にさせる材料があるはずだから」


 アリエルは、両目尻を指で引っ張って見せた。アルメイダに、この顔をさせるのがアリエルの趣味なのだ。


「大丈夫。ワタシ強いから、足手纏いにはならない」


 細い腕で力こぶを作る仕草をする……が、出会った頃のアリエルの姿と変わらない。とても強そうには見えなかった、キンタローを除いて。


 本気か嘘かわからないが、アリエルはアルメイダをボディのワンパンで沈めている。しかし、その威力は食らったキンタローの保証付きだ。


 その威力を思い出し、キンタローの顔は強ばっていた。

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