10 妖精の長老(偽物)
偽物って何?偽者やろって、お話
キンタロー達は、湖に着くとミカンの案内で湖を迂回し、対岸へと渡った。
湖の対岸には、他の木々から少し孤立した一本の木があり、その周りには小さな花畑になっている。
『着いたの』
ミカンがそう言うと、キンタロー達は辺りを見渡すが、他の妖精などいない。
『ここなの』
ミカンが孤立した木に手で触ると、フッと木の中へ消える。
『おおっ!』
キンタロー達も後に続くと、木の中に吸い込まれると、着いた先には草しかない、ただの原っぱだった。
キンタローはてっきり、綺麗な花畑にたくさんの妖精が飛んでいる風景を思い浮かべていたのでガッカリする。
キンタロー達が出てきた大木を中心に辺り一面、新緑の草の絨毯を、周りの木々に囲まれている。
改めて見てみると、出てきた大木にの大きさに驚く。
入り口の木などとは比べものにならないくらい大きかった。
『ちょっと待ってて欲しいの。長老様に聞いてくるの』
そう言い残し、ミカンは木々の中へ消えていった。
キンタロー達は、大木の根元に置いてかれ、勝手に動き回る訳にもいかず、落ち着かない。
更に落ち着かないのは、先ほどから感じる視線。
それもたくさんの。
気付いてはいたが、先ほどから、木々の間から、草むらの間から、大木の上から、チラチラと覗いている妖精達。
四方八方から覗かれ、キンタローは思った。
(まあ、仕方ないか……急にサイレントベアーが来たら驚くよな。ちょっと見た目も怖いし……)
四方八方から覗かれ、クマゴローは思った。
(まあ、仕方ないか……急に子どもが来たら何事って思うよな。見た目可愛らしいし……)
お互い、お前のせいだぞと顔を見合わせる。
四方八方から覗いていた、妖精達は思った。
((なんで、ここにサイレントベアー(子ども)が………?))と
キンタロー達の事が気になって仕方ない妖精達だったが、思い切って勇気を振り絞り、2人の妖精がそれぞれ、キンタローとクマゴローに近づいて質問する。
『あの……あのサイレントベアーってワタシ達を食べるんですか?』
紫の髪をした妖精がキンタローに聞いた。
『あの……あのヒト族の子どもってエサですか?』
黄色の髪をした妖精がクマゴローに聞いた。
『食べないよ』
『食べないよ!』
キンタローとクマゴローの答えは奇しくも一緒だった。
◇◇◇
『何してるの~?』
いつの間にか戻って来ていたミカンが、聞いてくる。
キンタロー達は、さっきの出来事を話すと、ミカンは笑いだした。
『あはは。それは仕方ないの~。サイレントベアーがいたら食べられる心配するし、ヒト族の子ども連れていたらエサだと思うの~』
サイレントベアーは、ヒト族を積極的に襲わない。ましてや食べることも無い。
エルフは襲うが食べない。
しかし、それをわかっているのはサイレントベアー自身のみで、周知されていない。
二人は誤解だと訴えていたが、キンタローは両親やクマゴローに初めて会った時、食べられると思い意識を失った事を思いだし、黙ってしまった。
◇◇◇
『長老様に会わないの~?』
ミカンに促され、当初の目的を思い出したキンタロー達は、案内されて木々の中に入ろうとしていた。
キンタローは、咄嗟にミカンを両手で掴もうとするが、サッとミカンに避けられる。
『いくらなんでも、ここでは迷子にならないの~』
ミカンがそう言うと、流石にそれは無いかと思い任せようとした。
その時、木々の中から、1人の妖精サイズの老婆が出てきた。
『あんまり遅いから、また迷子になったかと思ったよ』
二人は、ミカンを見ると、咄嗟に横を向き鳴らない口笛を吹いていた。
キンタローは、老婆を改めて見ると背中には羽を羽ばたかせ、大きさも他の妖精と変わらない。
キンタローは、妖精も老けるんだなと思ったが、何故か飛んでいるのに杖を持ってる。
失礼のないように、クマゴローから降り、軽く頭を下げ挨拶することにした。
『はじめまして、長老様。自分は……』
『違う!!』
突然、挨拶を老婆に遮られ、思わず頭を上げる。
『儂は長老様じゃない! そんなに年を取ってはおらん!』
見た目どっからどうみても長老っぽい老婆から叱責を受ける。
キンタローは『しまった!』と思った。
『儂は……儂は……儂はまだ、二十歳じゃあぁぁぁぁ!!』
老婆は叫んだ。
『…………………………絶対ウソだぁぁぁ!!』
キンタローも叫んだ。
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