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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第8章 エルフと死竜と魔王
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91 それぞれの戦いに向けて。

「チッ!」


 突然木の中から現れたエルフ。キンタローは、剣を思いっきり振り抜く。首から血を流してエルフは倒れた。


「まさか……」


 エルフの出てきた木を恐る恐る、触れてみる。しかし、妖精の森みたいに中に吸い込まれない。一方通行なのかと安堵したあと、背筋が一気に凍りだす。


 もし、これと同じものがこの大陸のあちこちにあるのだとしたら……


 キンタローは、昔妖精族の長老……と言ってもアリエルではなく、前の長老の話を思い出す。前長老は、エルフは所謂妖精が生まれた後の残りカスみたいなものだと。


 その残りカスであるエルフが、妖精族の森と同じ技術を使う? こんな事を出来る人……いや、人ではない。


 アルメイダ。


 美人だったとは、記憶している顔も思い出せない女神。その名前にたどり着き、歯ぎしりをするキンタロー。


 この場所を残して、後で調査するべきか。しかし、今はまだ戦争中だ。後顧の憂いは取り除くべきだと判断した。


「親父さん!!」


 ノイルを呼び寄せ、この木を倒してもらう。


 この木がエルフの供給元だったのだろう。再びサイレントベアー達と合流したあと、エルフの増加がピタリと止んだ。


『ひとまず、終わったみたいだが。残っているのはそこにいる子供含む五頭か……悪いが、手伝ってもらうぞ。あんたらは、もう家族だ。家族は守るもの、そうだろう?』


 家族を守る。それは、サイレントベアーの矜持でもある。そう言われたら断れない。子供だけ置いていく訳にもいかず、全員がノイルの背に乗り込み、キタ村へと向かって行った。


◇◇◇


「エルフ、来ましたー!!」


 門番の一人が、門の上からエルフを視認して叫ぶ。


「数、かなり多いです!!」

「投石機を用意してください!」


 ゴルザの元に駆けつけていたジャンが叫ぶ。ゴルザがジャンへ使いを出すタイミングと同時に駆けつけられたのは、サイレントベアー達に付いていた妖精族から、サイレントベアーがエルフと遭遇したと連絡を受け、ゴルザの元へと走っていたからだった。


「ゴルザさんは、衛兵を連れて他の場所からエルフが入っていないか確認と、住民の避難を。ここは、私が」

「わかった。任せたぞ、ジャン」


 ゴルザはキンコを連れてキタ村の中の警戒に走り出す。


「さぁ、皆さん! 門を守り抜きますよ! 突破なんてされたらキンタロー村長に合わせる顔がないですよ。あと、死なないように! キンタロー村長なら、お悔やみの言葉どころか、文句を言われちゃいますから!」


「「「「おーーーー!!」」」」


 酷い言い様だが、本当にキンタロー村長なら言いそうだと、門番達は笑いを堪える。随分リラックスしたようだ。


◇◇◇


 キンタローの家に向かったクロウは、家の前が慌ただしくなっている様子が見えた。

こちらにも、ジャン同様、妖精族から連絡が来ていたのだ。


「クロウ!」

「フラム奥様、何してるんすか? 早く避難するっす」

『それより、キンタローはどうしたぁ!?』


 クロウの肩を掴み揺らすクマゴロー。頭が揺れクロウは上手く話せない。それに苛立ちもっと揺らすクマゴロー。いたちごっこである。


 見かねたフラムが、二人を引き離す。


「大丈夫、クロウ? クマゴローはキンタローが心配なのよ。ごめんなさいね」

「だ、大丈夫っす。キンタローさんは、今エルフと戦っているっす。そっちにはノイルさんが向かいました。別れた時にキンタローさんから、伝言預かっているっす」


 表が騒がしく、アンリエッタ達も家から避難の準備を終えるて出てくる。


 クロウはキンタローから受け取った言伝てを伝えていく。


「クマゴローさんとミカンさんは、その気配探知を利用して街中に入って来たエルフをゴルザさん達と、当たるっす」

「わかったの~」


 ミカンは、クロウから聞いたキンタローの言伝てをクマゴローに伝えると、胸を一つ叩いてすぐにゴルザの元に向かっていった。


「フラム奥様方は、避難するようにって事っす。ただし、避難しながら、避難に遅れている住民を助けるようにっす」

「わかったわ。ただし、アンちゃん。シルビアを連れて先に避難してちょうだい。私達は、住民を助けながら避難に向かうから」

「はわっ! フラム姉さん、わかりました。シルビアちゃんは必ず守ります」


 フラムから、シルビアを受け取りアンリエッタは強く頷く。


「フラム奥様。ぶひっ」

「プギー?」

「お願いします。私を前線に行かせて頂けませんか? ぶひっ」


 プギーは、いつもより長めの鞭を構えると、フラムの真後ろにいたハンスに向けて振るうと、前にいたフラムを避けハンスに当たった。


「いでぇ!」


 器用なものである。


「プギー……別にあなたが戦う必要はないわ。衛兵達が頑張ってくれてるもの」

「フラム奥様……勘違いしないでください。私は、ただキンタロー様に褒めて頂きたいだけですよ。下心満載なのです。ぶひっ」


 本音かどうかわからないが、プギーはニヤリと笑って見せる。しかし、その目は真剣で、フラムは止められないと感じ許可を出す。


「わかっていると思うけど、プギー、あなたも家族よ。もし、万一の事があったら、あなたも私もキンタローに怒られるわよ」

「心に止めておきますわ。ぶひっ」


 そう言い残して、プギーは門の方に向かって走っていく。


 クロウは、出発の準備をしていたニナにもキンタローの言伝てを伝える。


「あとは、ニナさん」

「……何?」

「今すぐに、ナギ村の方角に飛んで欲しいっす。魔人族がこちらに向かっている筈っす。なるべく多くの戦力を運んで欲しいっす」

「……わかった」


 ニナは、すぐに白い竜となり、舞い上がると飛んでいった。

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