第6話 発覚する異能力
(暗い...。ここは??)
そこは見覚えのある場所だった。智は散らかった床にスマホを握ったまま、仰向けに寝転がっていた。
「俺の、部屋....?」
そこは、5日前に叔父から授かった智の部屋だった。
(あれ?俺は異世界転移したはずじゃ...まさか、あれは夢?そんな馬鹿な...あんなリアルな夢があってたまるか!)
智は一人、心の中で叫ぶ。そして時計を確認する。
(19時25分。異世界にいたのは約6時間。こっちの世界で眠りに着いたのが16時くらい。おかしい、計算が合わない。向こうで6時間活動していたのに、こっちでは3時間しか経っていない?ーなんでだ?夢だからなのか?)
智は持っていたスマホを強く握る。
「夢なら、、もしかしたら、もう一度寝ればあの世界へ...!」
智は一人、呟きつつ今度はベッドに寝転ぶ。
(頼む...!)
智はギュッと目を瞑る。
「なんで...だよ、ちくしょう....。なんでいつもみたいに眠れないんだ!クソ...!」
智は激高しながら近くのダンボールを蹴飛ばす。
智はこの世界が嫌いだ。智の両親と義理の姉を奪ったこの世界が...。
だから智は異世界に転移した時、この世の誰よりも嬉しかった自信があった。智は不意に思いつく。
(そう言えば、、あの時スマホから出てきた謎の魔人はどうなったんだ??)
智は淡い期待を抱きながら、チョロットランドを開いてみる。だが、あの時の魔人はもう居なかった。
「やっぱ、あの魔人自体夢だったのかなぁ...」
最後の希望まで無くなってしまった智はそのままチョロットランドをプレイする。
23時56分。智はまだチョロットランドをプレイしていた。
「流石に疲れたな…。よし!寝るか!明日はボス倒すぞ~ニシシ...」
智はチョロットランドのお陰で今までの出来事はほとんど忘れてしまった。智はベッドに横たわり眠りにつく。
(眠れないな~)パチッ
智はまた目を見開く。
「ここは、、、!」
そこは、昼間智が異世界で止まった宿だったのだ。
「やった!まじでやった!!!また来れた!!」
智は喜びを隠せない。だが彼はすぐに冷静になる。ヒキニートなどという称号を持っていても、彼は中学時代は優秀な成績上位者だったのだ。そんじょそこらの16歳とは思考が違うのだ。
(俺はさっき、自室で確かに"寝た"。しかし同じ夢と言っても、こんなゲームのセーブポイントからスタートみたいな都合の良い夢があるだろうか?)
智はふと思い出す。昼間の魔人の事を。
(あの魔人は俺になんらかの"能力"を授けた。もしそれが本当だったのであれば、その"能力"って...)
「寝たら異世界に来れる、異能力...!!」
智は勝手に自分で話を作り上げ、一人盛り上がる。もうそれ以外、何も信じないと言った様子だ。
智はまた冷静になる。
(俺が昼間こっちに来てたのは6時間で、元の世界では3時間しか経っていなかった。という事は、ここでの1時間は、向こうでの30分という事になる。俺の1日の睡眠時間は8時間。単純計算で、こっちの世界にいる間は16時間活動できるということになる。)
智は己の考えが全てだと言わんばかりに話を進める。智は叔父の家に来てから、バイトをするようになっていた。これ以上叔父や叔母に迷惑をかける訳にはいかないからだ。最終学歴小卒と書かれた、履歴書のお陰で何箇所も回ったのだが、先日ようやく採用が決まったのである。
「んじゃ今日は、、!ギルドに行ってみるか!」
智は意気揚々と部屋から出るのであった。