第2話 動き出す物語(前編)
今日も智は昼過ぎに起き、朝飯兼昼飯を食べて、また引きこもる。
2月14日。1年前の事件から1年と3日。今日はバレンタイン...なのだが智の誕生日でもある。去年の誕生日パーティは、智は精神的に楽しめる状況ではなかったので、気付けば自然消滅していた。今年は...と智は美里の顔を思い浮かべる。
(なぁーんて、ヒキニートの俺の誕生日なんていわってくれるわけないかっ。姉貴だって彼氏いるだろうし…)
智は何故か胸がチクッと痛む。
「疲れた...少し寝るか…」
智はそうして目を瞑る。
【さ...旅...た.....い...】
智はまたあの夢を見る。何か言っている...15、6歳のエルフのように美しい少女。神は青く長い、肌は透き通るように白く、背は智より少し低いくらいだ。その華奢な身体は、男の庇護浴を掻き立てる。まだ何か言っているが智にはその声は届かない。
なんだ...?頬が痛む。でも、どこか懐かしい痛みだ。そうだ、この痛みは母さんの...
「智!お き な さ い!!」
その言葉で智は目を見開く。姉の里美が智の頬をつねっている。
「あ、姉貴おは幼女」ムニャムニャ
「何ふざけたこと言ってんの!早く来なさいよ!」
「?」
俺は寝起きで話が理解出来ず、1階に降りる。
「ハッピーバースデー智!」チュ
「ヒョワッ?」
いきなりの頬キスに智は状況が理解出来ず、顔を赤らめる。
「スキンシップよ!スキンシップ♪そんな事より、今日はあなたの誕生日なんだから、これから出かけるわよ!」
(出かける?ヒキニートにとっては嬉しくないよっ)
「う、うん。ありがとう姉貴。」
「無限の彼方へ、さあ行くわよ~!」
(苦笑)