第十話 元通りの教室。
翌日、私は、ちょっと弾みながら登校していた。
昨日、衣織ちゃんが言ってくれたのだ。「いじめはやめよう」って。
だが、罪の償いだと言って、いじめてきた美玖さんが、あんなにあっさり負けるものなんだ、と実感した。
やっぱり、小さい頃からの友達の力は大きいのだろうか。
でも、教室の前はやっぱり緊張してしまうもので。
さっきはクラスの女の子とすれ違っていたものの、挨拶はしなかったし、もちろん話したりもしなかった。
女の子は、開け放たれた六年二組の扉から、「おっはよ~」と意気揚々と入っていった。
途端に、周りから「おはよ~」「お~っす」という声が聞こえてきた。
挨拶って、こんなに自然なものなんだな……、としみじみと思いながら、私は、教室の扉の前に立って、小声で、言った。
「お、はようございます……」
まるで、これ以上ないというくらい、挨拶にしては小さな声だった。
だけど。
「あ、遥乃ちゃん、おはよう」
「真城、おっす」
そんなことを言ってくれる人達が、いた。
「おはよう」
「おはよっ」
「おっは~」
「お~っす」
次々に、周りの人が、声をかけてくれる。
昨日とは大違いの状況に、私は戸惑った。
もしかして、やってくれたのって。
昨日、美玖さんと話し合ってた衣織ちゃんの方を見た。
衣織ちゃんは、笑ってピースをしてくれた。
私は、その顔を見て、ニッと笑い返した。