第一章 第一部
前回は世界観の紹介だけで終わってしまいましたが、今回からはしっかりと内容に入っていきます
どうぞよろしいお願いします
巨大大陸の中心に位置する地下世界に髪の色と同じ色の装備にそれぞれ身を包んだ四人組が歩いていた。彼らは、この地下世界の長に呼ばれたのだ。地下都市の中には、地上と変わらない文明があった。否、それ以上のものだ。百年以上進んでいる可能性がある。地上では、鉄道が無くなりバスが高速化し各地を結んでいる。慣性制御によって、人体への負荷を無視できるようになったのだ。しかし、地下世界ではバス停のようなものはあるがバスは走っていない。それは瞬間移動用の設備だからだ。その設備は、地上にも合計五台置かれそこから地下世界に出入りするのだ。もちろん、四人もその装置を使って地下世界に入った。
初対面だからか、四人が会話もせずに歩いているのを見かけた。あれが『選ばれた』子達か。僕は仕事を継続するだけだ。まあ、気まずい雰囲気を取り払ってあげようか。一応確認含めて、と思い話しかけた。
「あなた方が、『選ばた』人達ですか?」
四人ともなんのことかわかってないな。
「この地下世界に呼ばれた方々ですよね?」
「はい、そうです」
緑色の少年が答えた。いい返事だ。
「私はあなた方を長老のもとまでの案内を申し使っております」
事務的に挨拶をした。本当はこんなに丁寧である必要はないんだが、まあせめてもの敬意を払ってあげようか。
「そう。ワタシは火狼夏燐、よろしく」
今度は赤色の少女が答えた。少し上からだな。十五歳だから仕方ないか、どうせ自分の部族のところでは甘やかされてきたんだろう。一応名乗っておくか。
「申し遅れました。私は、偶麒と申します。
「麒か。縁起がいいな。俺は、金亥秋鎚だ」
察しがいい。黄色か、あああの部族か。さすがは神に見放されたってだけはあるな。
「わたしは、水霊冬江です。よろしくお願いします」
「僕は、木龍春樹です」
青と緑は礼儀がいいな。まあいい、仕事を続けよう。
「では、ご案内いたします」
「着きましたよ。ここに長老がいらっしゃいます」
地下世界の中心、長老の住む塔に着いた。
「大きいなあ、ここが地下だって信じられないよ」
「そうですね。他のところから来られた方はみんなそうおっしゃいます」
子どもは素直だな。自分自身人のことを言えるほど歳をとっているわけじゃないんだけど。二歳から三歳ってところかな。
「長老お連れしました」
「おお、よく来たな。若者」
さっき、火狼と名乗った少女が小声で「声、渋っ」と言っていた。率直な感想だろう。確かに、いつ死んでもおかしくない声をしている。実際はそう簡単に死なないから長老なんだがな。
「ご拝謁、感謝いたします」
金亥か、意外と立場をわきまえた言葉遣いもできるのか。
「よいよい、そんな固くならんくとも」
「はい、それでは。――今回呼ばれた理由は何だ」
いきなりそれかよ。年長者として多少のアドバイスはするべきか。
「金亥さ――」
「おい、若造。無礼だぞ、改めよ」
長老の側近か、あの口煩い。これ以上話がややこしくなる前に助太刀してやろう。
「申しわ――」
「すいません。後で言っておきますんで」
二度も声を出そうとしたら、阻まれた…。
「なかなかいいコンビじゃないか。これなら、竜の討伐も期待できると言うのものだな」
「「竜の討伐?」」
「なによ、アンタ。ハモったじゃない!」
「ごめん」
「ふん」
木龍と火狼気が合うな。確か、本人は知ってるかわからないが木龍は『木』だけど、何百年か前に『風』を滅ぼしてるからその力も引き継いでいてもおかしくないな。『火』に対して『木』と『風』か。相性が良さそうだ。
「仲が良いのだな」
「良くない!」
火狼の声が思った以上に響く。
「そんなことより、竜の討伐とは何だ」
「お主ら、聞いておらんのか?」
「きいてないな」
「簡単に言うと、お主らに竜を討伐してもらうために集めたのじゃよ」
四人とも呆然としている。最初に口を開いたのはやはり金亥だった。
「竜?そんなもの存在していた事実はないはずだ」
「わたしは、全部聞いています」
水霊が答えた。
「他の三人は聞いていないと...。まあ良い、今から数十年前に地球に隕石が落ちたことは知っているな」
「はい」「聞いている」「聞いてるわ」
「よろしい。その隕石なは竜の卵が混ざっていたと言うだけの話じゃよ。そして、その竜の卵が帰り今この星の生命を脅かしている。だから、『選ばれた』子であるお主らに討伐してもらいたい」
「なぜ俺達なんだ。『選ばれた』とかいう訳がわからない言葉を使わないで説明しろ」
言葉遣い。長老の側近の目が怖い。長老は気にしていない様子だったが。
「察してはいると思うが、お主らは他の人間とは戦闘能力が圧倒的に違う。それは、各部族がそうしたからだ。生まれる前からな。強い力はみんなの為に使わなければならない。例えそれが、過去に因縁がある現在地上に住んでいる奴らのためになってしまうとしてもな」
「それがなぜ俺らなんだ?」
「たまたまじゃな」
「......」
流石に、言葉を失ったか。他の二人はとっくに口が開いたままなのを見るとここまで喰い付いただけでも凄いだろう。
「勝てる保証はあるのか?」
「正直わからん」
「ふざけるな!」
「元気がいいなぁ。よろしい、これからお主らに背後霊を上げよう。これで、お主らの魔力による攻撃は威力、速度共に三倍程まで上がるじゃろう。使いこなせればの話だがな」
その声は、大人気なくどこか楽しんでいるようであった。
「それと、水霊ちゃんにあれを上げよう。お守りじゃ」
長老はその子に土人形を上げるのか。年甲斐もなくちゃん付けか、長老が気に入られたなら仕方ないと思うが。
「なんで、水霊だけなのよ」
その疑問はもっともだが、あまり触れるべきところではないな。だが、長老がなんて返すかが見ものだな。
「そうじゃのう。可愛いからかのう」
「ワタシは、可愛くないっていうの!」
「まあ、そういうことになるかのう」
おいおい。そこまで言うか...。やばい、これ以上火狼がヒートアップしないうちに止めなきゃ...。
「すいません。時間がないので、背後霊を与えるための部屋にご案内致します。こちらへ」
偶麒と名乗った青年は、誰にも気づかれないように一息吐き後ろを見た。四人ともついて来ていることを確認し、歩きだした。
「一人づつお願いします。誰からにしますか?」
背後霊のマッチング用の部屋番がそう言った。しかし、顔を見合わせただけだった。
「決まらないのでしたら、木龍さん、火狼さん、金亥さん、水霊さんの順でお願いします」
――二時間後――
「四人とも相手が決まったようなので、今日は解散です」
「まだ、なんの背後霊かわからないじゃないですか」
「背後霊はピンチになったときに助けてくれますよ。多少生命力が吸われますが、吸う力は出した分だけですし、あなた方の膨大な生命力があれば大丈夫ですよ。しばらく寝たら回復しますし」
――だから言って乱用はオススメしませんが
最後にそう付け加えた。そして、明日の出発へ備えて休息を取るために解散となった。各自泊まるところまで案内され、そこで一夜を明かした。
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