クリスマススペシャル
メリークリスマス!
リア充はメリークルシミマス!
今日は12月25日。
つまり、クリスマスな訳だけど、
「何で今日も生徒会は有るんですか!?」
「そう声を荒らげるな、副会長。
だって、この学校はミッションスクールだぞ?
クリスマスにはもちろん行事が有るに決まってるじゃないか」
長い艶のある黒髪を書き上げながら手元の書類に眼を通し、手早く判を押しながら会長が答える。
「そうは言ってもこの学校にキリスト教徒は2割位しかいませんよ?」
「まあ、文化祭だ。
楽しむといい」
「それで楽しめるのは一般生徒だけですよ!?
私たちはクレーム処理に環視、トラブル解決や入学説明会もあるんですよ。
そんなことは出来ませんよ」
それに対して会長がさらっと答える。
「大丈夫だ。
仕事は全部私がやっておく。
副会長も会計や文化部長、運動部長と回ってくるといい」
そんなさらっとカッコいいことを言うから男女問わずにモテモテなんですよ、会長は。
「会長こそ今日が学校生活で最後の文化祭なんですから回ってきたらどうですか?
仕事は私がしますから」
そんな会話をしながら手元の書類に眼を通し、スケジュールを組んでいると、
「只今帰りました~。
センパイ方も、少し回ってきたらどうですか?」
「そ~ですよ。
仕事は私たちがやりますから」
文化部長と運動部長と、
「2周目の巡回終わりました。
会長と副会長も回ってきたらいかがですか?」
「さっきもらった割引券あげますよ?」
庶務君と会計さんも戻ってくる。
「さて、それじゃあ会長、私とデートしましょう?」
「何故私が副会長とデートしなければならない」
「因みに拒否権はありませんよ」
二人で生徒会室を後にする。
ーーーーーー
「さて、会長はどこか行きたいところはありますか?」
「なにさらっと手を繋ぐ」
会長が逃げないように手を恋人繋ぎをする。
因みに恋人繋ぎとは指と指を絡める繋ぎかただ。
「あ、お化け屋敷があります。
行きましょうか?」
「ひっ、ま、まて、副会長。
どこか別のところにしないか?
お化け屋敷は混んでることが多いし」
お化け屋敷にもろに反応する会長。
会長がお化けが嫌いなことは調査済みです。
確かにお化け屋敷は混んでることが多い。
しかしここは私のクラス。
受付のクラスメイトに目配せをしてチャチャっと入れてもらう。
ーーーーーー
うちの高校は教室の窓が広い。
普通は壁の高さの3分の2程しかないが、この高校はほぼ全面が窓になっていてとても明るい。
しかしお化け屋敷のために暗幕を引き、更に段ボールで目張りをしたせいか、教室は真っ暗になっている。
「な、なあ、副会長。
やっぱり引き返さないか?」
会長の怯える顔は可愛いです。
そこに丁度よく飛び込んでくるゾンビ。
顔は小麦粉をベタベタに溶いたものを塗りつけているせいででこぼこしていて、更にメイク班の渾身のメイクによってすごいリアルなかさぶたができている。
「ひいいい!」
驚いて私に抱きついてくる会長。
とても可愛いです。
「うわああ!」
手術台の上の動く死体に悲鳴をあげ、
「きやああ!」
壁から出てきた手に足を捕まれ、
「うわああ!」
墓石に追いかけられる会長。
驚く度に私に抱きついてくる。
やべえ、やべえよ。
新しいなにかに目覚めそうだ!
ーーーーーー
五分後。
中庭のベンチで座る私達。
「だから嫌だったんだ、だから嫌だったんだ。
だから嫌だったんだ、だから嫌だったんだ。
だから嫌だったんだ、だから嫌だったんだ。
だから嫌だったんだ……」
もうすでに精神が限界集落な会長。
因みに私の肌はたぶんつるつるしている。
しばらく復帰出来なそうな会長を尻目に静かに背もたれにもたれ掛かる。
静かに眼をつむると、何か音が聞こえてくる。
「会長、少し静かにしてください。
何か聞こえませんか?」
二人で耳を澄ませる。
すると、中庭の丁度反対側にいる生徒がハーモニカを吹いている。
曲名は分からない。
ただ、とても綺麗な音色をしている。
ほんの三分程だろう。
ただ、その間だけは回りが静まり返っていた。
近くで歩いていた人も、渡り廊下で雑談していた人も、皆静かに聞き入っていた。
静かに曲が終わると、辺りが拍手に包まれる。
とは言え、私の記憶ではこの時間にここで出し物は行われないはずだ。
ツマリ止めなければならない。
声をかけようとしたとき、会長に方を捕まれる。
「まあまて、副会長。
せっかくの出し物なんだ。
ゆっくり見ていようではないか」
そして始まる二曲目。
今度は聞いたことがある。
ジングルベルだ。
ただ、いつの間に参加したのか、隣にリコーダーを吹いている少女がいる。
静かに聞き入ってしまう。
それも終わると、次に鍵盤ハーモニカをもった生徒と手元にパーランクー(沖縄の伝統的な打楽器)をもった生徒が増える。
次の曲はヘイル・ホーリークイーン。
『天使にラブソングを』の曲だ。
歌うのはさっきのハーモニカの生徒とリコーダーの生徒。
序盤の落ち着いた感じを静かにハーモニカの生徒が歌い上げると、後半のゴスペルアレンジのところをリコーダーの生徒がうまく歌い上げる。
終わると、やはり自然と拍手が沸き起こる。
「規則を守ろうとするのもいいが、こう言う時には柔軟さも必要なんだ。
その辺はまだまだだな、副会長」
確かに最初に止めてしまったらこんなに回りの人が楽しめなかったかもしれない。
「それじゃあ、生徒会室に帰ろうか」
全く。
その辺をクールに決めるから会長はモテるんですよ。
ーーーーーー
「我が校の説明は以上です。
質問などはホームページよりお願いします。
退場は役員の指示に従ってください」
既に時間は午後の五時を過ぎている。
24日から続いた喧騒も今はそのなりを潜め、校内には静寂が広がっている。
生徒会室は、既に会長と私以外が全員帰り、二人しかいない。
「すまないな、副会長。
もう帰っても大丈夫だぞ?」
「なに言ってるんですか、会長。
仕事を半分も手伝わせて最後に手柄はひとりじめですか?」
会長の台詞に冗談で返せる程度には仕事が終わってきた。
それから更に十分ほどで仕事は全て終わる。
「さて、帰りましょう、会長」
「そうだな。
今日は遅くなってしまったから、送っていってやろう」
下駄箱で靴を履き、校舎を出る。
丁度降り始める雪。
「ほう、雪か。
風流だな」
会長、おじさんみたいです。
「全く。
今日はクリスマスなのに会長は解っていませんね。
こう言うのはホワイト・クリスマスと言うんです」
肩を並べて二人で歩く。
私の家は高校から近い。
だいたい十分程度で付く。
家のドアを開けると、そこには、
『メリークリスマス!』
クラッカーを鳴らしながら出てくる庶務君たち。
「メリークリスマスです、会長」
後ろからも不意打ちでクラッカーを鳴らす。
「実はですね、副会長さんが会長にサプライズをしたいと言うことで、計画を立てていたんですよ」
と、庶務君が説明をする。
「そうなんですよ~。
場所も提供してくれるということで~」
と、文化部長。
「まあ、どうせ会長さんは仕事ばかりで楽しめないだろうって、副会長が」
それはばらさないでほしかったな。
因みに台詞は運動部長。
「さあ、入って入って!」
呆然とする会長をなかに押し込む。
「いや、ほら、親にも連絡を」
「もうしました」
「勝手に!?
ほら、それに今日は遅いから」
「明日からは代休ですよ。
それにお泊まりもさせていただけるみたいですし」
「ほらほら会長、逃げ場はないです。
さあ、食べましょう!」
Fin.
今日は私の住んでいるところでは雪は降りませんでした。
皆さんはどうでしたか?
もうすぐに年末ですね。
大掃除や年越しの用意、頑張ってください。