98話「風の果つる先へ・前編」
11:風の果つる先へ・前編
・タッグ戦2が終わりライラとユイムが試合をするということで
観察をしていた政府議会が不穏な空気を感じたのか
それぞれの学校の控え室に向かい
ライラ、キリエ、ユイムを検査のため回収することになった。
「ライラくん・・・」
「検査だから大丈夫ですよ。
それよりシュトラさんも試合頑張ってください。」
それだけ言ってライラとキリエは病院に運ばれていった。
「・・・私、こんな状況で試合やるんだ・・・」
閉ざされたドアを前にシュトラが俯いた。
「シュトラ、そろそろ時間だ。行け。」
「けど、師匠・・・」
「今あいつは何て言った?お前に頑張れって言ったんだ。
それをお前は無駄にするのか?
テンションの低さを言い訳に白旗掲げたまま試合に臨むのか?
お前の実力を見せて来いよ、シュトライクス@・イグレットワールド。」
「・・・分かりました。」
拳を握りシュトラが控え室を後にした。
「・・・・・・・」
誰とも交錯せずこの廊下を渡るのは初めてだ。
あの少年の自分を応援するためだけに作られた笑顔が
向こうから見えることはない。
確かにそれ以前に自分にだけ特別な笑顔が贈られてはいる。
だが、
「・・・ライラくん・・・」
唇を噛み喉の奥が圧力を加えて乾きを訴えていながらも
しかし一度として振り向くことも立ち止まることもせず長い廊下を渡っていった。
「それでは!地区大会決勝戦!シングル戦1を始めたいと思います!
山TO氏高校パラレル部からはシュトライクス@・イグレットワールド選手!
萬屋高校チーム風からはビビンバルド・BAN・エイジ選手!」
アナウンスがかかり、舞台に二人が上がった。
「そんな顔するなよ。」
「え?」
「事情は何となく分かるがその顔の女と戦ったら格好悪いじゃないか。」
「・・・バカにしないで。ひどい顔になるのはあんたの方よ!」
「それでは!見合って見合って・・・はじめっ!!」
号令と号砲。同時に2枚のカードが宙を切る。
「グリップ・行使!」
「龍・行使!」
シュトラが握力を強化すると
同時に10メートルほどのドラゴンが出現した。
「レッドドラゴン・・・!」
「へえ、よく分かったな。見るのは初めてじゃないのか。」
「戦うのは初めてだけどね・・・!」
しかし臆さずシュトラがまっすぐレッドドラゴンに向かっていく。
レッドドラゴンは鼻を鳴らしながら
口からもはや川と言っていいレベルの炎を吐き散らした。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」
その炎に真っ向から突き進んでいき正拳突きの拳圧で炎の中に道を作り、
その道を突き進んでいく。全方位からの炎が道をふさいでしまう前に
炎のトンネルを完走してレッドドラゴンの眼前にまでたどり着いた。
「はああああああああああっ!!」
その顎に全身全霊をかけたアッパーを叩き込む。
数百キロもの衝撃が顎から脳天までを
突き抜けてレッドドラゴンが後ろに倒れた。
「おいおい、普通アレに向かって肉弾戦するかぁ!?」
「お生憎様!最強クラスの高校生3人を相手にいつも稽古してるんで・す・わ・よ!!」
そしてレッドドラゴンの尻尾を掴んでブンブンと振り回して
ビビンバルド向けて投げ飛ばす。
「り、リターン!!」
慌ててレッドドラゴンをカードに戻す。
と、その手をシュトラが笑顔で掴んだ。
「うああああああああああああああああああ!!!!」
そこからはもうひどい有様だった。
片手一本掴まれたまま何回も一本背負いで地面に叩きつけられる。
タイルに体格ぴったりの傷跡が刻まれるほどの衝撃だ。
20回ほど投げた後無理矢理立ち上げられてから
その胸に全体重を乗せた正拳突きが叩き込まれた。
「がはっっっっ!!!!!」
運動エネルギーが炸裂してビビンバルドの体が後方にぶっ飛ぶ。
が、シュトラが手を掴んだままのためシュトラの体を軸にして半回転する。
当然その半回転にシュトラは力を振り絞り、
「てやああああああああああああああああああああ!!!!」
「バカ野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!!」
半回転すると同時に手を離す事で目一杯助走をつけられたビビンバルドは
超スピードで投げ飛ばされてミサイルのように壁に叩きつけられた。
おびただしい量の砂煙が巻き起こりそれが晴れると
そこには凹んだ壁に上半身が埋まって微動だにしないビビンバルドの姿があった。
ライフの効果は切れていないから死んでも怪我してもいないだろうが
間違いなく気絶しているであろう。
「勝者!山TO氏!シュトライクス@・イグレットワールド!!」
「ふう、すっきりした。」
ライフの効果が切れる前にビビンバルドの救助活動が行われ
それが完了してからライフが切れてシュトラは舞台を後にした。
「あ、あの女、怖すぎる・・・・!」
そんな声が後ろから聞こえたが気のせいだろう。
「随分派手にやったわね。」
少し廊下を歩くと正面からラットンが歩いてきた。
「そうかな?前の試合に比べたら地味じゃない?」
「・・・あんた本当に怖いわね。」
「もうラットンまでそんなこと言わないでよ。」
「・・・笑顔が怖いわ。タッチするのが躊躇われる。」
多少びくつきながらもラットンはシュトラとタッチを交わしてすれ違った。
それから控室に戻る。
「おかえり、シュトラちゃん。」
「随分派手にやったね。」
「・・・どうされました?」
「・・・ううん、なんでも。」
やはりそこには顔がひとつ足りなくて・・・。
また喉を襲った乾きをごまかすために紅茶を放り込んだ。
一方。舞台ではラットンが入場していた。
「これより山TO氏高校パラレル部VS萬屋高校チーム風の
第四試合・シングル戦2を始めます!
山TO氏高校からはラットン・MK・Hル卍選手!!
萬屋高校からは小濱飛鳥選手!」
「よろしく頼むわ。」
「見ない顔だな。新入りか?」
「見合って見合って・・・はじめっ!!」
号令と号砲。同時に2枚のカードが宙を切る。
「ストリーム・行使!」
「ロケット・行使!」
ラットンが魔力のビームを発射すると同時に飛鳥が空へ飛んだ。
「!?飛んだ!?」
「そのカードは嫌ってほど見てる。
真上に撃つと光の関係で視界が半分以上阻まれる。」
そう言って飛鳥はラットンの真上に移動した。
「・・・使いたくはなかったけど!」
ラットンは発動したまま脇のブースターを起動させた。
「何!?機械人形だったのか!?」
「その名で私を呼ぶな!!私は人間だ!!」
飛行してそのまま魔力のビームで薙ぎ払うように飛鳥を穿つ。
「・・・ぐっ!!」
回避も防御も出来ずに飛鳥が落下して地面に倒れる。
「・・・ってぇ・・・。今のは効いたなぁ・・・。
けど、相手が機械人形だったなら手はあるぜ。
マグネット・行使!」
「!?」
飛鳥が発動すると同時にラットンの体が地面に引き寄せられていく。
「どこまでかはともかく体に機械があるんだったらこれは効くよな?」
「くっ・・・!一瞬で対策を・・・・」
ついにブースターの推力よりも磁力が勝りラットンが地面に落ちてしまう。
さらに大量の砂鉄がその体に引き寄せられていき
両手足が砂鉄まみれになってしまう。
「・・・悪いな。機械人形なんて言っちまって。
けど勝負は勝負だ。討たせてもらう。」
「・・・まだ勝負は始まったばかりよ・・・!」
二人の視線が交錯する。




