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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
4章:遠き日より来りて
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94話「X是無ハルトの流儀」

7:X是無ハルトの流儀


・ライラと升子の会話を聞き届けた後

キリエはユイムを呼び出して病院の裏庭にやってきた。

すっかり夜になって周囲を暗闇が覆っている。

月のない漆黒の帳が姉妹の間にそびえ立っているように。

「・・・何よ、お姉ちゃん。」

「言うまでもありませんわ。

あなたの周りを顧みない行動でどれだけの人が迷惑を被ったか。

ブランチがどうとかナイトメアカードがどうとかもう関係ありませんわ。

あなたの唯一の保護者として私がここであなたを再起不能にします。」

「・・・・本当にやる気?これライラくんの体だよ?」

「お黙りなさい!!」

キリエがカードを出し、指先でカードに搭載されている

発動承認システムにコードを入力する。

政府議会メンバーが緊急時にカード使用禁止エリアで

カードを発動するための隠しコードだ。

ブルー行使サブマリン!」

そして発動が強制的に承認されると同時に空間を蒼が包んでいく。

夜の海よりも暗いブルーが夜の闇に混じっていく。

数秒ほどで視界の全てがダークブルーに包まれて手元すら見えなくなる。

元々キリエのブルーは青空のブルーよりも夜空のブルーに近い。

だからか解放された屋外であっても夜発動した場合は日中に比べて

展開が早く濃度が高く、強度も硬いのだ。

「・・・まさか・・・僕の精神だけを殺す気なの・・・!?」

「そうすればライランドくんの体に危害は生じませんわ。

あなたは保護観察中だというのに

散々好き勝手していましたからね・・・!」

「・・・一応出来るだけ女の子を

襲ったりは自重してるんだけどね・・・。」

「あなたには他人の悲哀を感じて苦しむだけの心がないんですの!?

それも自分であの少女を苦しませて傷つけて・・・!

過ぎたことだからとあの少女自身の願いだからとブランチの仕業だったと

そうやって自分に言い訳して自由を気取って!

・・・あなたさえいなければ

私は腕を失うこともなければ親を失うこともなかった!

あの少女もここまで傷つくことはなかった!

ライランドくんもあなたのために辛い思いをすることはなかった!

・・・あなたを処分するのは身内である私の務め。覚悟なさい。」

「・・・お姉ちゃんこそそうやって

目上ぶって他人を見ようとしていないじゃない!!」

「え?」

ユイムの強い魔力が僅かに蒼の空間を歪ませた。

展開速度を優先させて濃度を薄くしていたとは言え驚くべき結果である。

しかしそれ以上に驚いているのが、

「僕が何も感じていないと思ってるの!?

僕が無責任に女の子と遊んでばっかりだとでも思ってるの!?

僕だって何度罪悪感で押しつぶされそうになったか分からないよ!

ライラくんの時間を奪ってしまって、関係性を奪ってしまって、

リイラちゃんはもっとお姉さんと一緒にいたいだろうし

升子ちゃんだって僕なんかいなければいいとまで思ってる。

でも僕にはそれが出来ない!

こんな僕でもライラくんやシュトラは好きだって言ってくれている!

一緒に未来を歩んでいこうと約束してくれた!

だから僕は絶対に死ねない!ここでお姉ちゃんなんかに殺されてしまったら

僕はもう取り返しのつかない嘘つきになってしまうから!」

そしてさらに高まる魔力がダークブルーをさらに歪ませていく。

ユイムの言葉にもこの現象にもキリエは閉口せざるを得なかった。

どちらに対しても全く対抗手段がない。

屋内だったらユイムの魔力を完全無効に出来たかもしれないが

下手に周囲への被害を考えて

外に連れ出してしまったのは失敗だったかもしれない。

「ユイム、おやめなさい。その体で魔力を高めたら・・・・」

「卑怯なのはそうやっていつだって僕を制するために

ライラくんを盾に使うお姉ちゃんの方だよ!

・・・僕だってこのままま力を高め続けたらどうなるか分からない。

でも、そうしないとお姉ちゃんは僕だけを殺す。

僕はこの体であろうと元の体であろうと

最後の最後まであの二人のために諦めるわけにはいかないんだ。

だからお姉ちゃん、負けを認めてブルーを解除して。」

そしてゆっくりとユイムがこちらに近付き始めた。

空間支配系に苛まれた状態で自由なのは魔力だけだというのに

ついに体まで動かし始めてしまった。

これもブランチが狙っていたその体の特異性故なのか。

ともかくこの状況はまずい。

ブルーを解除すればユイムもあの少年の体も救える。

だが、再発動には時間がかかる。

可能性は低くともその間にユイムから反撃を、

空間支配系すら歪ませるほどの

魔力が込められた攻撃を受けてしまったら・・・。

その生存本能的恐怖がキリエを躊躇わせていた。

しかしこのままブルーを続けていれば

あの少年の体はどうなってしまうのか。

そしてユイムが手を伸ばせばキリエに届く距離まで近付いた時。

破滅スライト行使サブマリン!!」

外界から声が響き、次の瞬間には蒼の空間の一部が黒い光に貫かれた。

ただでさえユイムの魔力に脅かされて

現状維持がやっとだった出力のブルーは

今の衝撃で完全に停止してしまい発動が中断され1枚のカードに戻った。

「やめてください!」

そして両者の間にスライトを発動したライラが着地した。

「ライラくん・・・」

「ライランドくん、」

「どうしてお二人が戦わなくてはならないんですか!?

僕はお二人のことは大事に思っています。

ユイムさんのことは恋人として、キリエさんのことは家族として!

だから争わないでください・・・・。

もしまだ続けるというのなら僕がその戦いを破滅させます。」

しかしライラはその手にハンドガンを握っていなかった。

「・・・私はあなたのためを思っているんですのよ?」

「以前言ったはずです。どんな理由があろうとキリエさんがユイムさんを

始末しようとするならば僕は立ちはだかると。

いつもみたいに軽い口喧嘩をするくらいなら構いません。

仲良しの裏返しだってわかっていますから。

でも今のはそんなんじゃありません。

キリエさん、僕は今幸せだって言ったじゃないですか。

僕のことを思ってくれているのは嬉しいですが、落ち着いてください。」

「・・・何ですの。これではまるで私が悪者みたいじゃありませんか。」

「ユイムさんも僕のこの姿を知っているということは

無闇矢鱈にその体で闘争本能や魔力を高めたら

どうなるか分かっているんじゃないですか?」

「・・・あまり詳しくないけどね。」

ユイムが魔力を沈静化させる。少しだけ腕が変貌しかかっていた。

それを確認してからライラはスライトを解除した。

彼女の長い髪が夜風になびく。

「とにかくもうこんなことはやめてくださいね。」

「・・・はぁ。分かりましたわ。もう何も言いません。

ライランドくんもユイムももうお好きになさい。」

ため息をついてからキリエはスカイカーに乗って帰っていってしまった。

「・・・キリエさん、」

「大丈夫だよライラくん。お姉ちゃんはあれでも強い人だから。」

「・・・ええ、分かっています。でも、どうしましょう。」

「・・・だったら久々に実家に帰るってのはどうかな?」

ユイムが何を言いたいか直ぐに分かった。

「・・・面会時間いっぱいまで升子と一緒に居てからでいいですか?」

「・・・うん。僕は部屋の外にいるから。

あの子、本気で僕の事を嫌ってそうだし。」

そう話しながら二人で病院に戻りユイムは部屋の前のベンチに座り、

ライラは時間いっぱいまで升子の傍にいた。

それからリイラも含めた3人で円cryンの家に帰った。

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