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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
4章:遠き日より来りて
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93話「受胎告知」

6:受胎告知


・12月最初の土曜日。

地区大会の1~3回戦が行われた。

山TO氏高校は1回戦を突破してからも問題なく勝利してきた。

時折ティラとラモンが負けたりシュトラが負けたりしていたが

X是無ハルト姉妹やラットン、

そしてケーラが必ず勝利しているため問題ない。

残すは翌日の4回戦と5回戦だけだ。

「あ、チーム風も勝ち進んでいるみたいですよ。」

「随分と嬉しそうですわね。」

帰りのスカイカー車内。

ライラがキリエに睨まれる。

「そりゃ古巣ですしユイムさんもいます。

シフトを見たんですがユイムさんは俣野さんと

一緒にタッグ戦2に参加しているみたいなんです。

つまりこのまま進めば決勝で

僕はユイムさんと俣野さんの二人と戦えるんです。

勝てないかもしれませんがあの二人と

同時に戦えるなんて考えもしませんでしたから。」

「・・・私もいるんですが。」

「え?いや、もちろん分かってますよ?

キリエさんも含めて僕の知る中でも

トップクラスのプレイヤーが揃ってるんですよ。ワクワクしませんか?」

「・・・あなた、何かありましたの?

ちょっと明るくなったというか・・・」

「・・・ええ、ティラさん達に自分の事を話せて、

その上で前と変わらない関係を保ってくれているんです。

・・・なんだか、すごく嬉しくて・・・。

チーム風のみんなも本当の僕の事は理解してくれていたけれど

何だかずっと守られてきてしまったような気がするんです。

だから互いに支え合って一緒にやってこれてきた山TO氏のみんなと

やっと何一つ隠し事なくやっていけるようになって・・・。

僕、今年はいろいろありましたけどとても幸せだと思うんです。

どうにかなっちゃいそうなほど・・・」

「・・・あなたよっぽどかわいそうな人生を送ってきたようですわね。

でももう大丈夫ですわ。

あなたには山TO氏の方々もX是無ハルトの家族もいます。

少し離れていてもチーム風の古い仲間達や妹さんもいます。

もう、あなたを縛るもの、苦しめるものはほとんどありません。

・・・だ、だからもっと甘えてもいいんですのよ?」

「キリエさん・・・。」

「あなたにはユイムと結婚した後

X是無ハルトの当主にもなって頂きたいんですから。」

「ぼ、僕がですか!?」

「ええ、ユイムの夫になるのでしょう?

それとも本来の性別を取り戻してシュトラさん同様に

泉湯王国アク・サスファンテで同性婚にいたしますの?」

「そ、それは・・・考えていませんでしたけれど・・・」

「あなたねえ、将来を決めているのならもう少し計画的に行かないと・・・。」

「・・・あの、ところでキリエさん。」

「何ですの?」

「これって今何処に向かっているんですか?」

「はぁ?家に決まってますまわよ。」

「でも、いつもと道が違うような・・・」

「え?」

そこで初めてキリエが窓の外を見やる。

確かに景色がいつもと違う。

すぐにCPUを確認すると別の場所からコールを受けているらしい。

「誰かがこのスカイカーを呼んでいますわ。」

「それってまさかブランチ・・・?」

「ブランチでしたら直接やってくるでしょう。

このX是無ハルト専用スカイカーを呼べる人物は3人。

私とあなたともうひとり。」

「・・・ユイムさんですか?」

「そのようですわね。・・・あの子、何の用かしら?」

それからスカイカーが呼ばれるまま空を飛ぶこと数十分。

到着したのは旧帝都方面の小さな村だった。

「ここは確か・・・」

「はい。僕の実家のある村です。

でも、僕の実家よりかは離れているみたいですね。

このあたりにあるのは村唯一の病院くらいで・・・。

まさかユイムさん怪我をしたのでしょうか・・・?」

「女あさり以外で滅多に家を出ることがないあの子が

どうやって病院の世話になるような怪我をするんですの。

大会でも怪我はしないはずですしその道中の事故だったとしても

わざわざ地元の小さな病院を選ばず山TO氏の国立病院を使うはずですわ。」

「・・・なら、一体何が・・・」

「よう、来たな。」

二人がスカイカーから降りると病院の駐車場に葵がいた。

「俣野さん、ユイムさんに何かあったんですか?」

「いや、あいつじゃない。まあともかく来てくれ。」

葵の案内で病院に入り廊下を進んでいく。

やがて1つの病室に到達した。

名札には佐野升子の文字があった。

「升子がどうかしたんですか・・・!?」

「・・・入って見れば分かる。」

葵に言われて慌ててドアを開けて中に入る。

「升子!?」

「・・・ライラ・・・」

ベッドに升子が横になっていた。

その隣にはリイラと自分ライラの姿のユイムがいた。

「リイラやユイムさんまで・・・。」

二人に事情を聞こうとした瞬間、

「ライラ!!」

「わっ!!」

升子が飛び起きて自分に抱きついてきた。

そしてユイムを睨む。

「・・・はいはい。チェンジ・行使サブマリン

ユイムがカードを発動するとライラが外見だけ元の姿に戻る。

しかも現在の自分の姿ではなく

まだ男として生きていくことを決める前の少女の姿だった。

「え、これって・・・」

「ライラ・・・・ライラぁ・・・ライラぁぁっ!!」

疑問を持とうとしても怒涛の勢いで升子が自分の胸に顔をうずめてくる。

そして升子の姿をよく見るとお腹が膨れていた。

「・・・・え?升子、もしかして妊娠・・・・?」

「そうだよライラくん。

そしてそのお腹にいる子のお父さんはね、君だよライラくん。」

「・・・・・・・・は!?」

「まさか私もこんなに早く叔母になるとは思わなかったわよ。

・・・どっかのレズのせいで必ずその時が来るとは思っていたけどね。」

「ま、待ってよ!僕升子とそんなことした覚えないよ・・・!?」

「・・・この方がどなたかは存じませんがこの状態は

もういつ出産してもおかしくない状態。

大体妊娠9ヶ月といったところですわね。」

「9ヶ月って僕とユイムさんが初めて会った頃・・・

ってまさか・・・!?」

「・・・うん。僕がライラくんの姿になって

升子ちゃんとの間に作った子供だよ。」

「ゆ、ユイムさん・・・!?ちゃ、ちゃんとゴムしてたんじゃ・・・・」

「前に言ったよね?僕がこの姿になってすぐにこの子には気付かれたって。

その時黙っていてくれる代わりに1つ条件を与えられたって。

・・・それが僕がライラくんの体で升子ちゃんが妊娠するまで

セックスし続けることだったんだ。だからゴムは付けてなかったの。」

「な・・・そ、それって、えっと・・・」

はっきり言って混乱の極み。

ユイムが何を言っているのか理解できない。

「ま、升子・・・?」

「・・・そいつが言っているのは本当よ。

私、ライラのことがずっとずっとずぅぅぅっと好きだったの。

女の子同士でも構わないし気付かれなくても構わないって。

でも、ライラがそいつに夢中になって

私のことなんて見向きもしてくれなくなった。

それでそいつとの試合に行った後まるで人が変わったように

女遊びを始めたのを見て殺してそのあと心中しようと思った。

でもライラは本当にそいつのことが好きだったから、

だから苦しむのは私だけでいいって思った。

だって私ライラと一緒になりたかったけど

ライラを苦しませたくはなかったんだもん・・・。

だから本当はそいつなんかと寝たくなかったけど

ライラの邪魔をせずにライラを愛した証が欲しかったから

私・・・ライラの赤ちゃんが欲しかったの・・・」

「升子・・・」

「それにこの前の交流試合で私の対戦相手だった子に

失礼なことをしたのも私の大好きなライラが好きで仕方がないそいつが

ライラのことなんて身もしないっていうのに

その子のことを好きだって言うからムカついて・・・。

私、ひどい女だよね・・・?軽蔑しちゃうよね・・・?

ライラが何回かこっちに戻ってきてくれた時も私は顔を出さなかった。

もう合わす顔がないって思ったから・・・。

だから赤ちゃん産んだらどこか一人で消えようと思っていたの。

それなのにそいつがライラを呼ぶから・・・!!」

「升子ちゃん、ぼ、僕は・・・」

「本当は黙っておきたくなかった。

黙っている間もそいつはライラの体で数え切れないくらいの女の子を騙して

来る日も来る日もセックスばかりしていた!

でも、私が真実を話したら

またライラの体を傷つけてしまうかもって・・・。

だから・・・だから・・・・!!」

「升子、」

ライラの手が升子の背中に回る。

「・・・ありがとう。

小学校時代中学時代と升子が僕を守ってくれなかったら

多分僕はもうここにこうしてはいなかった。

人間を捨てた怪物に成り下がっていたと思う。

それからごめんね。僕やっぱりユイムさんのことが好きなんだ。

升子の事は今でも親友だと思ってる。

かけがえのない仲間だと思ってる。

でも升子の気持ちは受け入れられない。」

「・・・ライラぁぁ・・・」

「気張らせてごめんね・・・。

その子は僕も一生懸命面倒を見て養っていくから・・・。

だから僕の前からいなくならないでね・・・?

升子は僕にとって一番の親友なんだから。」

それ以上言葉はいらなかった。

ただ胸の中で泣きじゃくる升子を抱きしめてやるだけだった。

だから気付かなかった。

キリエとユイムがいつの間にか部屋から去っていたことに。

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