92話「絆の足跡」
5:絆の足跡
・地区大会1戦目。
山TO氏VSバリリANT高校。タッグ戦1が終了した。
「では、行きましょうか。」
「はい、キリエさん。」
キリエとライラが席を立つ。
「・・・相手に同情しちゃうな、これ。」
シュトラがげんなりしながらつぶやく。
「まあ、あんたらには言うことないだろう。」
「はい、見ていてください。」
ミネルヴァが手を振り、二人が控え室を後にする。
と、モニター内で一気に景色が変わった。
まばらにしかいなかった客席が一気に人で埋め尽くされた。
当然タイトルホルダーたるX是無ハルト姉妹の戦いを
直で見たいという人達だろう。
タイトル戦はチケットの倍率が高すぎて滅多に見ることは出来ないが
地区大会程度ならチケットも申請も必要なしに誰でも入場できる。
「あ、ティラさんラモンさん。」
廊下で前から二人がやってきた。
「えへへ、こうしてライラくんと廊下でタッチするのも久々だね。」
「そういえばそうですね。」
「客席はすごいことになってるよ。
現在二人しかいないタイトルホルダーが
二人揃ってタッグ戦に出るなんて前代未聞だからね。」
「客席がどうであろうと関係ありませんわ。」
そして廊下に乾いた音が響く。
それ以上は言葉もなく4人はすれ違い、
片方が舞台へもう片方が控え室へとまっすぐ向かう。
「ではこれよりタッグ戦2を行います!
山TO氏高校からは皆さんお待ちかね!
ユイム・M・X是無ハルトとキリエ・R・X是無ハルトの
タイトルホルダー姉妹ですっっ!!」
アナウンスが入ると同時に二人が舞台に上がれば一気に歓声が沸く。
「対戦相手はバリリANT高校の岩窟景蓮・EXと
パンシー・ロゼロッT・丸ニアス選手です!!」
対戦相手の二人が入場して正面にやってきた。
「今度はどっちだ?」
「まだ僕です。岩窟景蓮さん。」
「・・・そうか。だが、タイトルホルダーとそれに匹敵する強さの選手と
戦えるこの数分間は有意義にしよう。」
「僕としては尻尾巻いて逃げたい状況なんだけどね。」
「あら、それならお逃げなさい。
どうなっても私達は一切責任を負いませんので。」
4人が言葉を交錯させる。
「では!タッグ戦2を始めたいと思います!
見合って見合って・・・はじめっ!!」
号令と号砲。同時に4枚のカードが宙を切る。
「ミラージュ・行使!」
「ラッシュ・行使!」
「テンペスト・行使!」
「マグネット・行使!」
4枚同時にカードが発動された。
同時に舞台には暴風雨が吹き荒れ、
蜃気楼が発生して4人の体がまるで万華鏡のように歪んで見え、
岩窟景蓮のラッシュが強力な磁力で反発されて全て流される。
「!?」
それを確認してから岩窟景蓮がラッシュを解除するまで1秒。
まだ号砲の耳鳴りが残っている。
「ソニック・行使!」
代わりに発動したのは音と風の塊を発射するカード。
ライラの発動したテンペストの暴風雨によって幾分か強化されている。
しかもパンシーの発動したミラージュの効果で発射された塊は
一発だけでありながら無数に向かってくるように見える。
と、キリエが磁力を放って発射された塊を引き寄せ地面に激突させて防ぐ。
同時にライラがテンペストを解除して
「ステップ・行使!」
脚力を強化して一気にパンシーに接近する。
そして勢いを殺さぬまま飛び蹴りを放つ。
が、それは蜃気楼が生んだ虚像でありすり抜けてしまった。
空振りして僅かに生まれた隙に岩窟景蓮がソニックを発射する、
その直前にキリエが磁力を用いて地中から砂鉄を大量に引き上げて
岩窟景蓮の手からソニックのカードを叩き落す。
さらに引き上げた砂鉄が直径2メートルの塊に集中して
勢いよく真上に飛び上がると間髪入れずに
急降下して真下にいた岩窟景蓮に落ちる。
「ラッシュ!」
それを秒速10発の連続パンチで粉砕する。
が、粉々になった砂鉄が岩窟景蓮の体にまとわりつき
一瞬で首から下が砂鉄に覆われて身動きがとれなくなった。
同時にライラが走り込み、岩窟景蓮の額に飛び蹴りを叩き込む。
「がはっ!!!」
額の一点に数百キロの威力がぶち込まれ、
体にまとわりついた砂鉄を吹き飛ばしながら
巨体が反対側の壁まで吹っ飛び叩きつけられた。
「・・・おいおい、」
思わずパンシーが声を上げてしまう。
それで本物の位置を察知したキリエが磁力を使って
パンシー向けて一直線にリニアモーターのようなものを作り上げ、
ライラを電車のように超スピードで発射する。
「いいいい!?」
「はっ!!」
そしてパンシーの目前で磁力が解除されると同時に
ライラが跳躍して後ろ回し蹴りをパンシーの即頭部に叩き込む。
パンシーの体が高速回転しながら5メートル以上ぶっ飛ばされて
頭から地面に叩きつけられて気絶した。
「そこまでっ!勝者・山TO氏!!
さすがはX是無ハルトの姉妹!タイトルホルダーです!!」
アナウンスと同時にライフが解除される。
「・・・今度は完敗だな。」
岩窟景蓮が気絶したままのパンシーを抱え上げてライラに向く。
「本物は見つかったか?」
「はい。僕の本当の体を使ってます。
この大会にもチーム風の一員として参加していますよ。」
「・・・あのチームか。観戦しておかなくてはな。」
「え?」
「忘れたか?そもそもお前と初めてあった場所がどこか思い出してみろ。」
ライラが岩窟景蓮と初めて会ったのは10か月前のユイムの対戦相手を
決めるためのトーナメントだった。
参加者の多くは恐らく自分と同じくユイムのファンだろう。
つまり、
「あ、なるほど・・・」
この高校生に見えない屈強な大男もユイムのファンということだろう。
「・・・でも、ユイムさんはあげませんからね。
もう最後まで済ませたんですから。」
「何!?・・・くっ!本当に完敗していたか・・・!!」
本当に悔しそうな表情をしてブツブツ
言いながら岩窟景蓮が舞台を後にした。
「・・・いいですか?」
「はい?なんですか?」
「私あの人のこと全く聞いていないのですが。」
「・・・・あ。」
それから控え室に向かうまでの間ひたすら説教を受けていた。
舞台に向かう途中であったシュトラが思わず止めに入るほど。
「じゃ、行ってきます。」
シュトラが姉妹とハイタッチをしてから舞台に向かった。
「シングル戦1!シュトライクス@・イグレットワールド選手と
須田・ミライ・ZZ選手の試合を始めたいと思いますっ!!」
アナウンスが掛かり、シュトラと須田が舞台に上がる。
「私の相手はあなたなのね。」
「悪いわね、ケーラさんじゃなくて。けど結果は変わらないわ。」
舞台の上で二人が視線を交錯させる。
「では!見合って見合って・・・はじめっ!!」
号令と号砲。同時に互いのカードが宙を切った。
それからシュトラは苦戦しながらも2ラウンド目の中盤ほどで
須田の体力を奪い尽くしてギリギリで勝利した。
これにより山TO氏高校の2回戦進出が決定した。




