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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
4章:遠き日より来りて
90/158

89話「ライランド・円cryンの真実」

2:ライランド・円cryンの真実


・それは今から16年前。

父のハイキュリアス・円cryンと母の霞・S・円cryンの

間に一人の女の子が誕生した。

大地に横たわるような信頼感と逞しさを持って

成長して欲しいという願いからライランドと名付けられらた。

しかし彼女は成長するごとに違和感もまた成長し続けていた。

まだ3歳だというのにヤケに陰核が発達していた。

それに少しはしゃぎ方が男の子っぽかった。

夫婦は僅かな違和感と恐怖を抱きながらも成長を見守った。

やがてライラが6歳になった時にそれは如実に表れてきた。

もはや彼女の陰核は男性器のそれと著しく似たものに変わってきていた。

それとヤケに爪が鋭く伸びるようになっていた。

ハイキュリアスは妹に相談した。

「これってもしかして・・・」

「あまり深くは考えないように。・・・でも可能性はあるかもね。」

「・・・また来るかもしれないってわけね。」

ライラは学校で虐められるようになった。

自分が男なのか女なのかよく分からない不気味な生き物だと

物理的にも精神的にも反芻させられる毎日だった。

ある日その迫害に耐え切れず虐めてきたクラスメイトに手を上げた。

子供ながら、いや子供故の純粋な闘争本能に反応してか

手首から先がまるで猛禽類の足のように変貌して虐殺を始めた。

気が付いたらライラは大量の血の中に沈む

無数の肉の残骸の中に座り込んでいた。

醜く変貌した両手で顔を傷つけながらもひたすらに泣き喚いた。

やがて、父が来た。

「・・・ごめん・・・ごめんね・・・・ごめんね・・・・」

普段にも増して女々しく謝り続ける父の胸に抱かれた。

やがて、雨が降り注ぎ気付いたら両手は元に戻っていた。

それからライラは転校することになった。

また力の使い方を父から習った。

「とにかく強く意思を保つこと。暴力への快楽に溺れないこと。

それから決して空を飛ぼうとは思わないことと、

直接誰かを集中して見ないこと。

・・・こんな力なんて本当はない方がいいに決まってる。」

父からそういうアドバイスが与えられた。

数ヶ月の間そういう教育と練習を繰り返しそれ以降変化は起きなかった。

それから旧帝都付近の村に引っ越してそこの小学校に通うことになった。

そこで後のチーム風のメンバーと出会った。

そして後に義妹となるリイラとも初めて出会った。

リイラの母親はライラの父親の妹である。

つまり従姉妹であるのだが最初はあまりいい関係じゃなかった。

それでもメンバー中最年長の俣野葵が上手い采配でみんなをまとめた。

ライラの異形に関しては最初は黙っていたが

ハイキュリアスによって葵にだけ教えられていた。

その後同性であったリイラと升子にも発見され最終的には

チーム風のメンバーには全員知れ渡った。

ただそれでも誰も自分を忌避することなく

生まれて初めて楽しい日々が続いた。

しかし中学に入った頃だ。

両親は自分をリイラの家に預けて突如失踪した。

残ったのは窓辺にあった母のスリッパだけだった。

それから引き取られた後リイラの母に尋ねた。

「・・・ごめんね。

だけどきっとあなたがもうあの二人に会うことはないわ。

私の二人の姉は自分達が誤魔化してしまった戦いに決着を付けに行った。

・・・絶対に叶わないと分かっていながらもね。」

「そんな・・・じゃあ私はどうしたらいいの・・・?」

「・・・ごめんね。・・・ごめんね。」

彼女は涙した。まるであの日の父のように。

そして改めて事実を聞かされた。

自分の兄でありライラの父であるハイキュリアスは

ライラと同じ半陰陽だったと。

そして人ならざるものだった。

当然彼女とも兄妹ではなかったがライラに似た形で義理の兄妹となった。

ハイキュリアスはその異形の力と半陰陽故に周囲から迫害された。

それでも自分を愛してくれた人達のために必死で笑っていた。

やがていつしか自分を追って自分と同じ存在が襲いかかってきた。

彼は自分の全てをかけてでも愛した人々を守るために戦った。

その過程で完全に女性の部分は消え去ってしまったが

無事戦いを生き延びて愛した人と結婚して自分ライラを産んだ。

が、生まれてきたライラはハイキュリアスの

性格を強く受け継いでいてしまっていた。

このままではまた自分を襲ってきた敵が

ライラを目当てにやってきてしまう。

そう考えた父は既にほとんど力を失った状態で

食い止めるために向かったのだ。

「霞、あんたはライラを・・・」

「こら。」

「な、何をする~!?」

「なに父親ヅラしてるのよ。

あんたはいつまで経っても私からしたら

手のかかる妹みたいなもんなんだから。

・・・もうあんた一人だけを行かせはしない。私も一緒に行く。」

「・・・霞・・・でも、あたしは・・・」

「こら。」

「あだっ!」

「あんたは男!父親でしょうが!」

「おのれ霞、相変わらず理不尽な!」

「・・・弱気になるなっての。

私がいる。私はいつまでもあんたと一緒にいるんだから。」

「・・・そうだね。」

そうして二人は誰に声をかけるでもなく姿を消した。

運悪くその日を境にライラが中学で迫害を受けるようになるのだが。

同じクラスだった小濱飛鳥が庇ってはくれているもののあまり効果はなく

耐えかねたライラは陰茎と化した自分のそれを鋏で切断した。

想像を絶する痛みと鈍い水音が響く。

だが、それは何度でも生えてきた。

それを見たライラはまるで何かに取り付かれたように

何度も何度も切断し続けた。

鋏が血で動かなくなるまで。

「ライラ!もうやめて!!」

「升子・・・」

「他の奴なんてどうだっていいじゃない!

・・・私のためだけでもいいからしっかりしてよ・・・!

自分を捨てないで!傷付けないでよ・・・!!」

そうして升子が止めてくれなければ出血大量で死ぬところだった。

また、同じ頃に自分達がいなくなったことで

まだ小学生だったリイラまで迫害を受けるようになった。

しかも同じ小学生にではなくライラの通う学校の中学生にだ。

レイプされる寸前にまで追い詰められたがそれをライラが救った。

「私は・・・僕は父さんとは違う!

父さんが否定したこの力を僕は肯定する!

どんな力でも使い方次第で誰かを守ることが出来るんだって!

そして何よりも強いのは誰かを守るために

迷わず引き金を引くことの出来る強い心だ!!」

リイラを背に言い放ち、変化はしなかったが人間離れしたその力で

リイラを襲った中学生達をなるべく無傷で追い払った。

それから迫害はなくなりライラは男として生活するようになった。

それでも生理が来てしまう。

こんな姿でありながら予定を書いたカレンダーが真っ赤になるほどに。

迫害はなくなったが自分の体の問題が収まった訳ではない。

まだまだ分からないことばかりだ。

リイラの母に相談したかったが自分達姉妹を育てるための

お金が必要だって言って夫婦揃って出稼ぎに行ってしまった。

自分の体に恐怖と不安と憎悪を抱えながらも

リイラや升子を守るためになるべく気を張り詰めたまま生活していた。

そんなある日だった。

チーム風のみんなで集まって見ていたテレビで

自分と同い年の女の子がパラレルカードの全国大会で優勝する試合を目撃した。

「・・・ユイム・M・X是無ハルト・・・」

自分と同じかそれ以上の強い力を持っていながらあんなにも輝いて見えた。

どうしようもなく心を奪われてしまった。

それからパラレルカードを始めた。

他のメンバーも乗り気だったから中学の校長でもあった元聖騎士の

安ニッシー朗・舞網・デルタテロスが経営している

カードショップで安くカードを仕入れて隣町まで行っては

そこで狂ったように練習に励んでいた。

自分にはユイムほどの魔力はなかったがこの力がある。

もしかしたらこの力を使ってユイムみたいに輝けるかもしれない。

それだけを夢見て来る日も来る日もカードを握り締め

拾ったプロレスの本を見て技を勉強し続けた。

いつしか葵を超えて村でも街でも最強のプレイヤーとなったライラは

旧帝都で行われる大会に参加してそこでも見事優勝を果たした。

長い髪は邪魔になるからと一気にスポーツ刈りにまで短くした。

中学3年生の後半。ユイムが5回目のタイトルを防衛した頃。

X是無ハルト主催の海上エキシビジョンが行われることが決定した。

しかもそこではあのユイムと戦えるとのことだ。

いくらライラが強くてもユイムとタイトルで戦えるほどの実力にはなれないだろう。

でもそのエキシビジョンでなら憧れのユイムに会えるかも知れない。

益々躍起になったライラはいつしかリイラや升子の事も忘れて

日々を練習に費やしてついにユイムの対戦相手を決めるための

トーナメントにエントリー出来るようになった。

「何だ、随分と小柄だな。」

対戦相手の岩窟景蓮がこちらを見下ろす。

自分の頭が彼の胸に届いていなかった。

男女の違いはあれどこれで同じ中学生なのだから不思議だ。

しかしユイムと会うと言う目的が原動力の今の自分は誰にも止められない。

苦戦はしたけれどカードとプロレスを合わせたスタイルで

何とか岩窟景蓮を撃破して無事ユイムの対戦相手に選ばれた。

そして、あの日に至る。


・全てを話し終えたライラは自分の手を見る。

「僕は、僕はあんな化物の体をユイムさんに押し付けてしまったんです。

あんな男か女かも分からないような不気味な・・・」

そこで乾いた音が響いた。シュトラだった。

「ユイムさんを見くびらないで!」

続いてケーラが。

「自分を肯定するのがあなたの強さではなかったのですか?」

「ライラくんはライラくんだよ。」

「立派に妹や幼馴染、それにティラやユイム本人を守ってきたじゃない。」

「み、皆さん・・・」

「ライラくん、実はね。

ユイムさんは夏休みの時にはライラくんの体について気付いてたよ。

私によく相談してくれてたもの。

それにチェンジの効果で相手の過去は情報として記されていたんでしょ?

ユイムさんはね、

その過去があってもなおライラくんを好きになったんだよ?

ユイムさんは一度もライラくんを化物だなんて思ってない!

もちろん私達だって喩えどんな姿になったとしても

絶対にライラくんを見捨てたりなんてしない!

ライラくんのお父さんが心配していたその敵ってのが来たとしても

私達が絶対に守るから!・・・だから自分を否定しないでよ・・・」

「・・・シュトラさん・・・」

一糸まとわぬまま5人の少女が抱き合った。

「・・・・まさか、そんなことが・・・・」

それを更衣室からMMが見ていた。

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