84話「Hル卍の夜明け」
28:Hル卍の夜明け
・オメガαと一体化して機械の体となったステメラ。
「・・・これは想像以上だ。」
軽く笑いステメラが右手をライラに向けた。
「!危ない!!」
直後ステメラの指からビームが放たれそれを間一髪ラットンが庇う。
「がはっ!!」
「ラットンさん!!」
背中から煙を上げながら倒れるラットン。
それを見てライラはすぐシプレックのカードを解除した。
「どうした!?」
「シプレックは防御力が低いんです・・・!
今の攻撃、僕は反応すら出来ませんでした。
まだ経験が浅い内には相手したくないですね・・・!」
「いい判断だ。だが、その判断は無駄に終わる。」
直後ステメラが尋常じゃない速さでライラに迫る。
「ステップ・行使!」
脚力を強化して何とか突進を回避するが、
「捕まえた!」
その太くて白い腕に足を掴まれてしまう。
「っ!!」
足を握るその強さの違いが電気信号となって頭を駆け巡ると同時に
逆の足でその腕を蹴り払って離脱する。
「ほう、いい反応だ。私がまだこの体に慣れてなくて助かったな。」
「・・・あと1秒遅かったら足を引きちぎられていた・・・!」
「ライランド!俺がやる!!」
剣人が抜刀してステメラに向かう。
「風行剣人か。伝説の聖騎士二人に会えるとは今日は珍しい日だ。」
「・・・!やっぱりパラディンと接触していたか!」
「それだけじゃないよ。」
ステメラは指先にカードを召喚した。
「あれは・・・!」
「雷鳴・行使!」
直後その場にいた全員に電撃が走った。
「・・・がはっ!!!」
血煙を口から吐いて次々と倒れいく。
「な、ナイトメアカード・・・!?」
「まさかまだブランチと・・・!」
「そうだ。パラディンから受け取った闘将の体と
ブランチから与えられた悪夢の力!
これが合わさればたとえどんな相手でも私は勝てる!
私はこの世界を支配する王となるのだ!!!」
「・・・こ、この程度ぉぉぉっ!!」
剣人が立ち上がり剣を握る。
「時間・行使!!」
カードを発動し、10秒間だけ周囲100メートルの時間を止める。
その間に走り、剣でひたすらにステメラを切り刻む。
が、10秒過ぎて時間が戻っても
ステメラの体には一切傷がついていなかった。
「何!?」
「ふっ!!」
そして剣人の腹に神速の廻し蹴りを叩き込む。
「かはっ・・・!!」
「まさか時間を止めるカードまであるとは恐れ入ったよ。
だが流石に複数のカードを同時に放つことは出来ないようだな。」
「ならば!これでどうですか!?蒼・行使!」
キリエがカードを発動し、世界が蒼に染まっていく。
「ふっ、キリエ嬢さん。ここが屋外だということを忘れていないかな?」
そう言うとステメラは一瞬で遠くまで移動してビームを発射する。
「くっ!」
「危ない!!」
回避行動が間に合いそうにないキリエを民子がかばった。
「かはっ!!」
「民子さん!!」
「ふん、どこまでも邪魔ばかりをする人形だなお前は。」
「時間を止めてもカードの効果がなければ突破できない防御力に
火力を優先させても一瞬であそこまで移動できる速度じゃ当てられない・・・!
これじゃ、勝ち目がないじゃないか・・・・!」
「そうだ!諦めろ!
私の手駒として機械人形になるというのなら命だけは助けてやる!」
「・・・剣人さん。以前にα型と戦った時はどうだったんですか?」
「その時は俺のクローンがオメガになってたから
俺自身が熟知していた隙を突いて何とか倒せた。
その時と防御力が同じ程度だって言うのなら
奥義を当てさえ出来ればきっと勝てる。」
「なら・・・!」
「勝てると思うかね?私に!!」
直後ステメラがライラの眼前に迫っていた。
「!?」
「はああっ!!」
目にも止まらぬ速さの鉄拳がライラの腹にぶち込まれた。
「ううううっ!!!」
「ライランド!!」
「お前も邪魔だ!!」
次いで剣人も殴り倒されてしまう。
「貴様らさえいなければ烏合の衆!」
そして二人を締め上げて少しずつ首に込める力を強めていく。
と、
「相変わらずだね、あんたは!」
その両腕をミネルヴァが払い除け腹に蹴りを叩き込む。
「ミネルヴァ、わが娘よ。どうして父親に逆らうのだ?」
「喩えあんたがあたし達娘を裏切らなかったとしても
人類すべてをブランチに売ろうっていうのなら
それはあたし達への裏切りだ!」
「そのとおり!」
次いでケーラがレンゲルを構える。
「私達はもうあなたの娘ではありません!
この世界と人類を守るためにここへやって来たあなたの敵です!」
「・・・どうやら私の教育は間違っていたようだな。
こんな親不孝な不届き者になってしまうのだからなっ!!」
駆けるステメラ。先程と同じように鉄拳を突き出す。
と、ミネルヴァはそれを容易く受け流しケーラが足をレンゲルで払った。
「何!?」
そして転倒したステメラに二人が乗り、
ミネルヴァがキャメルクラッチを、ケーラが逆エビ固めを繰り出す。
「馬鹿な!?どうして私の技が・・・!?」
「あんたはあたしに機械人形を通して戦い方を教えてくれた。
相手の目を見て領域を奪う。対人戦の基本さ。」
「それを私達はずっと実践してきたんです!」
「「ただ椅子の上で悪略を奏でていたあんたとは違う!!」」
「ぐっ・・・!!バカ娘どもがぁぁぁぁっ!!」
関節を決められていながらも力ずくで
二人を払い除けて立ち上がるステメラ。
が、すぐに立ち直った二人に足を穿たれる。
「ぐっ!!」
「人型ならどんなに硬くたってやり方は変わらないさ!」
「娘の教育を自らの目で確認しなかったのが運の尽きですね!」
「やり方が変わらないのなら!水難・行使!」
ライラが再びスク水姿となって水を凝縮させる。
「アクアニードル!!」
500リットルの水を4センチほどの針の形に凝縮して発射。
「ぬうううううううううううう・・・!!」
ステメラの胸に命中し、その鋼鉄の体を削っていく。
「これ以上貫通は出来ない。でも、」
「下手に動いたら手足が千切れるかもな!」
そして剣人が走り出した。
「行くぜ!!」
握った剣に神速、煌牙、転回、灼熱、
風華、狼牙、魂刃、穿矢のカードを込める。
「あいつらがいないから代用はあるが威力に妥協はない!!
喰らえよ!!俺の奥義っっっ!!」
8枚のカードの魔力が込められた剣を逆胴でステメラの胸に叩き込む。
「八又轟閃!!!!」
「!?」
剣がステメラの鋼鉄の肉体に命中した途端に空間がねじ曲がった。
超えてはならない限界をはるかに超え、
至ってはいけない領域を余裕で飛び越えた衝撃がそこに放たれた。
「が、が、があああああああああああああああああああ!!!!」
打点から空間ごとステメラの体を両断する。
そしてその剣圧と魔力が混ざり合った衝撃が切断面から
ステメラの切り分けられた体を侵食していき、
分子レベルで分解されていく。
「・・・あばよ、父さん。」
「・・・私達はあなたに頼らない生き方で生きていきます。」
ミネルヴァとケーラがそう言い残し、
二人の目の前でステメラは跡形もなく消え去った。
「・・・ふう、成功するかどうか分からないアドリブだったが
何とか出来たな。」
剣人がカードをしまい、剣を納める。
「で、てめぇは何がしたいんだ?そこでじっと見てばっかでよ。」
「え?」
剣人が睨む眼光の先。
三日月をバックに大木の上に白い影が立っていた。
「そう怖い顔をしないでくれないか。長い付き合いじゃないか。」
「800年以上も腐れ縁で二度とそのツラ拝みたくなかったがな!
パラディン!!」
「・・・あの人が・・・」
「お初にお目にかかります、
私が全ての始まりを起こした男・パラディンです。
ああ、ブランチとは関係ありませんよ?
アレは私が眠ってる間に勝手に発生した自然現象のようなものなので。」
「目的を聞いているんだ!」
「おやおや、剣人くんもボケているのかな?
800年前にも言ったじゃないか。私の目的は人類全体の進化。
そのためにリード・クロイツの手からナイトメアカードを盗み出して
世界中にばらまいた。
・・・言ってみればごく少数の人間にしか力を渡さず
人類の自滅を願うブランチとは天敵同士さ。
だからその両方から力を得た彼は
ある意味超えちゃいけないラインを超えてしまったんだ。
その結果がそれさ。
まあ、自己紹介はここまでにしておさらばさせてもらうよ。」
「待て!!」
夜の闇に消えるように去っていったパラディンを
追いかけて剣人もまた闇の中に消えていった。
それからマサムネ率いる警官隊がやってきて
再びこの場で事情聴取が行われた。
それが終わる頃には夜明けが始まろうとしていた。




