82話「鋼鉄の防衛戦」
26:鋼鉄の防衛戦
・X是無ハルト邸。
ライラ、シュトラ、そして剣人がそこへやって来た。
「・・・これはまた珍しい来客ですわね・・・」
「なんだ、俺のことを知っているのか?」
「風行剣人・・・!
現在の議会に関係していて知らない人はいませんわ。
ナイトメアカードの祖と出会えるとは・・・。
ですが今はそれどころではありません。これを。」
キリエがモニターを見せた。
映像では既に議会が制圧したはずのHル卍邸が無数の機械人形で
奪還されてそこを陣取っていた。
さらに100体ほどオメガが追加されていて
警官隊では太刀打ち出来ず怯んでいた。
「パラレルじゃオメガを相手するのは難しいからな。
それにあれがいるってことはパラディンのヤローが
手を加えたってことだろう。
なら一筋縄に終わる話じゃない。ライランド、手伝え。俺も行く。」
「は、はい。」
「待ちなさい!誰が参加していいと言いましたか!?」
「姫さんよ、俺の言葉を聞いていなかったのか?
オメガはパラレルで倒すのは厳しい。
だからほぼノーリスクでナイトメアカードを扱える俺達が行くんだ。
現代の聖騎士もナイトメアカードを使えるそうだが
そいつらの到着を待っていたらあのヤロー何をしだすか分からない。」
「・・・けど、」
「大丈夫。こいつはなるべく無傷で返してやるからさ。」
剣人がライラの胸元をタッチ。
「ユイムさんの体ぁぁぁぁっ!!!」
直後にシュトラが剣人にジャーマンスープレックスをぶち込んだ。
・Hル卍邸。
「・・・ふふ、」
ステメラが久しぶりに自室の椅子に腰掛けた。
この椅子にはステメラが座ることでしか
発動しないある仕掛けが備わっていた。
それは全国に散らばっている機械人形達を即座に引き戻し
自分の命令に従うだけの強制指令を発する機能だ。
「第二世代型にしか反応しないのが玉に瑕だが
しかしあまり問題はないだろう。
ざっと見ても600体以上。それにあのオメガまでいる。
この包囲網突破出来るものかな。」
「戻っていたのか。」
と、部屋にブランチが出現した。
「貴様、どうして私を助けなかった?」
「貴様を見捨てていたからだ。
しかしよもやパラディンが手を貸し力を与えるとは思っていなかった。
今再び我らも力を貸そう。」
「ならいくつかナイトメアカードをもらおうか。」
「何を望む。」
「そうだな・・・。」
ステメラが悪略の笑みを浮かべた。
・午後11時すぎ。
ライラ、シュトラ、剣人、キリエの4人が
スカイカーでHル卍邸を目指していた。
「くっ!Gがきついな・・・!」
「あなたずっとキマイラに乗っていたんじゃないんですか?」
「いや、キマイラと乗り物じゃ全然違うな。」
「・・・なら私だって怒られることなかったのに。」
「茶番はいいですからそろそろなので備えてください。
あと今更ですがシュトラさんは帰ったほうがよろしいと思います。」
「ど、どうしてですか!?」
「あなたじゃオメガは倒せないでしょう?
私には蒼があるのでオメガ相手でもなんとかなりますが・・・」
「む、むむぅ・・・」
「シュトラさん、僕もキリエさんの意見には賛成です。」
「どうしてよ!?愛する人が邪魔だって言うの!?」
「好きだからこそ傷つけたくないんです。」
「・・・い、言ってくれるじゃない。
・・・あ!そうだ!剣人さん!」
「ん?どうした?」
「交換のカード持ってます?」
「そりゃ俺は数百枚以上のナイトメアカードを持ってるが・・・」
「それ私に下さい。ユイムさんとライラくんの体を元に戻したいので。」
「・・・そういえばそんなこと言ってたっけな。
いいぜ、この戦いが終わったら1枚やるよ。だから今日は・・・」
「約束ですよ!なら帰ります!
・・・だからライラくん、死なないでね。」
「・・・はい。」
シュトラが自分のスカイカーを呼び
今乗っているスカイカーから飛び移って帰っていった。
「・・・ところでライランドくん。」
「はい?」
「シュトラさんと随分仲良くなられたようですが何かありまして?
確かあなたこの前ユイムとも一晩同じ部屋にいたはずでは?」
「・・・あー、その、実は・・・。」
「はっきりなさい。」
「は、はい!ユイムさんとシュトラさんの二人と将来を誓いました!
初めても頂きました!で、ですのでユイムさんを僕に下さい!!」
「・・・・・・」
「・・・おー、」
思わず剣人が声を上げてしまった。
まさかこんな場面を生で体験することになるとは。
自分の場合は嫁が身内だったからこんなことはなかったが・・・。
「・・・あなた以外にあの子を預けられる方がいると思いまして?」
「き、キリエさん・・・」
「ただ、初めてを貰ったということはあなた妊娠してるんですの?」
「えっと、どうなんでしょう。」
「帰ったら精密検査を受けなさい。
あとシュトラさんの方はあなた一人でどうにかするんですのよ?
私が認めたのは飽くまでもユイムとの婚約だけですから。」
「は、はい!」
「よろしい。では、そろそろ戦場ですわね。」
車窓からHル卍邸が見える距離にまでやってきた。
既にマサムネにはキリエと剣人の両方から連絡が行っているため
ここへ来ることが許可されている。
スカイカーが着陸して3人が降りるとすぐにマサムネがやってきた。
「初めまして風行剣人殿。
私はマサムネ・七星・アーティファクトと申します。」
「ああ、知っている。剣一の子孫なんだろ、あんた。」
「剣一・・・七星剣一ですか。
私の40代前の当主だったと聞いています。」
「あいつの子孫にしては礼儀正しいな。
あいつは元気だったか・・・って知るわけないか。」
「え、ええ。ただ先祖が残した書物にはあなたのことも記されていました。
剣一の生涯の親友であったと。」
「・・・ふん、らしくないな。まあいい、で、状況は?」
「はい、現状私の部下400人が応戦していますが
機械人形はともかくあの白い巨体に関しては
大凡の攻撃が通用しないので・・・」
「あれはオメガだ。パラレルであれを倒すのは難しい。
お前の部下達には機械人形の方をやらせろ。俺達でオメガを殲滅する。」
「はっ!」
マサムネが早速動き、部下達警官隊の動きが変わった。
「俺達も行くぞ!」
「はい!」
「分かりましたわ!」
剣人、ライラ、キリエがそれとは別にオメガ達へと向かっていった。
・一方。
Hル卍邸近くの森。
徒歩で戦場を目指すのはミネルヴァ、民子、ラットン、ケーラだった。
「あの、どうして私まで・・・」
「お前はまだ知らなかったかもしれないがあのクソ親父はな。
水がダメなんだ。」
「は?」
「昔事故か何かで全身をくまなく切り刻まれた事があったらしくてな、
当時の機械人形の技術じゃ傷を治すのは不十分で
関節部分にはまだ手術の跡があるらしい。
その隙間から水が内部に染み込むと
動作不良を起こす可能性があるらしくてな。
だからあいつはそれ以来シャワーも風呂もなく除菌したタオルで
体を拭くだけって生活を送っていたんだ。」
「それと私に何の関係が・・・」
「覚えてないか?あたしがあんたと再会した時のことだ。
あいつに細工されて暴走したラットンが
試合に乱入してシュトラを襲った。」
「私はその時のことあまり覚えていないけれど
でも確かに誰かを狙っていた気がする。」
「そう。その話を聞いてよくよく思い出してみたらあんた、
あの時の試合速攻で終わらせていただろう?
だからラットンが到着した時にはシュトラの試合が始まっていたんだ。」
「・・・ラットンが私を狙っていたと?でもどうして・・・あ、」
「分かったかい?あの男は水が苦手。
そしてあんたは時間が経過するより先に早く水を放つカードを持っている。
もしあの男の弱点を知っているケーラが
近くにいたらあいつにとっては危険すぎる。
だからラットンを暴走事故に見せかけて
けしかけてあんたを始末しようとしたんだ。」
「・・・それで再び戻ってきた彼を私のクイックで完全に始末しようと?」
「そうだ。ただそれだけが理由じゃない。
あいつが逮捕されて取調べを受ける際に
そんな欠陥のある機械の体をそのままにしておくと思うか?
何か隠しているに違いないと思うはずだ。
だからもしかしたらあの男の不備は取り除かれているかも知れない。
そしてそうなればクイックで奴を完全に倒すことが出来なくなる。
正攻法でしか倒せなくなるってのにこの状況だ。
民子からの証言であいつがブランチと手を組んでいてナイトメアカードを
どこかに所持しているのは確実。
あいつが自分の居城と決めたあそこにどんな仕掛けがあるかも分からない。
・・・今のあいつがどんな手段を使ってくるか見当もつかないんだ。
それでも一抹の可能性はある。だからあたし達が行くんだ。
ステメラ・I・Hル卍の娘達であるあたし達がな。」
そして4人が敷地内に入った。




