79話「そして白い夜に」
23:そして白い夜に
・円cryン家。
半年以上ぶりに自室に入ったライラ。
「・・・まるっきり変わらないな。」
質素な布団、膝をつく形の勉強机、一冊しか残されていない本棚、
女物の汚れたペンケース、櫛の刺さった小さなテレビ、
血を吸いすぎて錆び付いて動かなくなった鋏、赤く染まったカレンダー。
「・・・でも流石にあんなものは置いてなかったと思う。」
ゴミ箱には穴の空いた大量のゴムが積まれていて
その隣には箱ごと買い置きでもしているのか
ゴムの箱が無数に重ねてあった。
「・・・ユイムさんどれだけやってきて
どれだけやるつもりなんだろう・・・。」
とりあえず妊娠させた子はいないのだろうと安心しておく。
「ライラくん、いい?」
「ティラさん?あ、待って!入らないで!」
つい声が大きくなってしまった。
「ご、ごめん。何かしてたかな?」
「い、いえ、そういうわけではないので・・・」
なるべくティラに部屋を見せないようにして部屋を出る。
「どうかしたんですか?」
「いやぁ、そのユイムちゃんとシュトラちゃんが・・・」
ティラの後を追ってリビングへ行くと、
完全にゆでだこになって下着姿で倒れている二人の姿が見えた。
「・・・どうしたんですか二人共。」
「ちょ、ちょっと興奮して風呂場ではしゃぎすぎて・・・」
「の、のぼせて・・・・あううううう・・・・」
「人の家で何やってるのさあんたらは。」
ラモンと民子が呆れながらもうちわで扇いでいた。
「今リイラちゃんがお風呂入ってるんだけど
お冷ってどこにあるのかなって。」
「あ、はい。こっちです。」
ライラが台所の足元にあった隠し収納庫から氷塊を出して
トンカチで小さく割ってから袋に詰めて2つ持って戻ってくる。
「床下収納になってるんだ。」
「はい。うち冷蔵庫置けないんで
天然の冷蔵庫になってる床下に食料とか収納しているんです。」
「冷蔵庫置けないってどういうこと?」
「この家の持ち主である義理の両親、
リイラの両親がその、家賃と食費を稼ぐので手一杯なので・・・。」
「だからうちに来ればいいのに~」
ユイムが風を浴びながらつぶやく。
「・・・いえ、あの二人には迷惑が掛かっていますので
それでも用意してくれているこの家を離れるわけにはいきませんよ。」
「ここ、スカイカーも置いてないものね。あたしが1台贈ろうか?」
「いえ、お気になさらず。幸いリイラの通う学校は近場なので。
それにチーム風のみんなもよく遊びに来てくれたり
誘ったりしてくれているので。」
「そーいえばそんなのいたねー。」
「いやユイムさんは覚えていてくださいよ。
と言うかあれからみんなはどうですか?」
「うんまあ、最初ここに来た時はあまりの別人さに警戒してて、
でも僕の正体が分かってからはまあ、知り合いくらいの仲かな。
あまり遊んだりはしないけどね。
僕もこっちに来てからほとんどパラレルやってないし。」
「そう言えばどうしてユイムさんパラレルやってないんですか?」
ライラが自分の体に感じた違和感を確かめる。
普段からパラレルをやっていれば自然と
魔力がまとわりつくような感覚がある。
以前元の姿に戻った時はまだ感じられていたが
今はほとんど感じられない。
まるっきりか少ししかカードを使っていない証拠だ。
「だって僕だってバレたら大変でしょ?
それにパラレル自体は好きだけど試合とかはあまり好きじゃないし。
お姉ちゃんとかパパママに言われたからタイトル出てたけど。
それに一応保護観察処分中だからね。こうやっておとなしくしてるの。」
「・・・だったら女遊びも
もう少し抑えてもらえるとありがたいんですけど。」
「ちゃんとゴム使ってるから大丈夫だよ?部屋、行ったんでしょ?」
「・・・・・・はい。」
「・・・ごめんね。あんなふうになってるとは思わなかった。」
「いえ、あんなところに寝かせてすみません。」
やや微妙な空気が二人の間に流れる。
「それともうひとつゴメンなのがリイラちゃん
あの部屋に入れちゃったんだ。」
「え?」
「後から聞いたんだけどリイラちゃん
あの部屋に入るの禁じられていたんだよね。
・・・ライラくんに。」
「・・・・・それであの子は・・・?」
「・・・一晩だけ一人にしてって言われて、あの部屋に。
それからはもう何も言わなかった。」
「・・・そうですか。」
「・・・やっぱりあれって・・・ううん、何でもない。
ライラくんが話せる時を待つよ。」
「・・・はい。ありがとうございます。ユイムさん。」
それからリイラが上がってきたらティラとラモンが、
その二人が上がったらミネルヴァと民子が入り、
最後にライラが風呂に入った。
「・・・で、そんなにヤバイの?ライラくんって。」
ライラがいない間にティラがユイムに尋ねる。
「ヤバイっていうかあれはその・・・」
「あまり興味を持っていい分野じゃないわよ。
・・・まだ小学生の妹をずっと入れないようにしていたくらいにね。
まあ、それより私が今一番気になるのは。」
牛乳を飲んでリイラが一拍置くと。
「これだけの人数がどこで寝るかよね。」
・風呂から上がったライラ。
「・・・・・・・・・・・・・」
しばらく忘れていたけれどしかし
見るに堪えない自分の姿を目に消化活動が逆戻りしそうだった。
それに耐えて久しぶりに自分の寝巻きに着替えた。
ユイムの趣味なのか頭髪は短めに揃えられていた。
「・・・僕はこんな体をユイムさんに押し付けていたんだ・・・」
自己嫌悪がさらなる闇を心の中に蘇らせていく。
なるべく考えないようにしてドライヤーで
髪を乾かしてからリビングに戻る。
「あれ?皆さんどうしたんですか?」
何やらほか8人の様子がおかしい。
「あ、ライラくん。大変だよ。こんな人数どこに寝かせるの?」
「・・・・あ、」
「パパママの部屋は物置になっているから使えないから、
今人が眠れる部屋なのは私の部屋と
お兄ちゃんの部屋とこのリビングだけなのよ。
私の部屋は狭いけど3人くらいなら寝れるし、
このリビングでも同じくらいは眠れると思うけど・・・。」
「・・・どうしても僕の部屋が必要・・・か。」
「えっと、僕ライラくんと一緒に寝てもいいよ?
変な意味とかじゃなくて普段あそこで毎晩寝てるわけだし・・・。」
「私も夏休みにここ来た時はあの部屋で寝ていたんだけど。」
ユイムとシュトラが名乗りを上げる。
「けどどうしてもって言うならスカイカーの中で何人か寝ても・・・」
「あ、いえ、僕は・・・・・・・・。」
逡巡。動揺。恐怖。不安。憎悪。悪意。偽善。腐臭。悔恨。
様々な感情が心に芽吹き蘇り砕き微かに残ったその感情だけが残った。
「・・・・・・・・・分かりました。一緒に寝ましょう・・・・・。」
・ところで普通男子高校生がそれなりに好意を抱く
同い年の少女と同じ部屋の同じ布団で眠るという場合
大なり小なり興奮やら緊張やらが起きるはずだ。
しかし今この場にいる少年はどうしようもなく萎縮していた。
明かりのない部屋。右にはユイム、左にはシュトラがいる。
プライベートゾーンとか
そういうレベルじゃないほど3人はくっついている。
自分の腹の上に乗せた手が少しズレただけで隣の股間に落ちてしまうほど。
「・・・・あの、これはどういうことなんでしょうか?」
布団に入って数分。ライラが声を上げる。
何故ならライラの股間をズボンの上から隣の二人が片手ずつで握り締め、
逆にライラの手をそれぞれのズボンの股間に押し付けていたからだ。
「ライラくんが不安にならないようにって。」
「こ、こうしていれば不安なんてない・・・でしょ?」
「ま、まあそれはそうですが・・・」
ちょっとだけ指が動いてしまうと
「やん、」
「ひゃ、」
すぐ耳元で艶かしい反応が起きる。
確かにこうなれば不安など吹っ飛んでしまう。
そして意識が二人の手で握られたあそこに集中してしまう。
「あの、これじゃ興奮して眠れません・・・」
「へえ、ライラくん。
ずっと僕の体使ってたのに今更僕の体で興奮しちゃうんだ。」
「そ、それは・・・そうですよ・・・。
・・・・だって僕はずっとユイムさんだけを見続けてきましたから・・・」
「・・・でもシュトラとヤったんだよね?」
「え!?」
「私が教えたの。でもユイムさん。
あの時はお互い女の子の体でしたから生産的なことはしてませんよ?」
「なら今日は生産的なことをしちゃおうか。」
自分のを握りながらユイムの指がシュトラの指に絡み、
それに相対してシュトラもまた握りながらユイムの指を掴む。
「ちょっ・・・ユイムさ・・・」
ユイムの方を向いた瞬間だった。
唇が重なった。ずっと憧れていてずっと借りていた体の唇と。
「・・・キス、しちゃったね。」
「あ、あわわわ・・・・」
「夢ですら望まなかったというわけではないんでしょ?」
「ゆ、ユイムさん・・・」
「ライラくん、僕をもらって?」
「ゆ、ユイムさん・・・僕は・・・僕はもう・・・!」
「うん、いいよ。激しく僕を頂いちゃってよ。」
言葉の途中からユイムの体が揺さぶられた。
そして欲望の全てを彼女の中にぶちまけた。
それから3人の交わりは朝陽が昇るまで続いた。
「・・・よく小学生の妹のいる部屋の隣で一晩中出来たわね。」
寝不足気味のリイラが同じく寝不足の3人を睨んだ。




