77話「世界への一歩・後編」
21:世界への一歩・後編
・VS西シッピー実業団。
現状シングル1戦目が終わり山TO氏が2勝1敗。
「・・・次は私ね。」
シュトラが席を立つ。
「シュトラさん、頑張ってくださいね。」
「もちろんよ!もう常敗無勝なんて言わせないわ!」
「自分で言ってるだけじゃないのか?まあ、結果は間違っていないし。」
「ミネルヴァさん!自分の弟子を少しは信じてくださいってば!」
「バ~カ。誰が信じないって言ったよ。
新しい山TO氏の切り札の力を見せつけてきな。」
「はい!」
シュトラが一礼してから控え室を出る。
「でも、大丈夫なの?シュトラちゃんシングルで勝ったことないのに
大人相手にシングルで試合なんて。」
「あの子の努力を信じないわけじゃないが・・・」
「大丈夫ですよ。シュトラさんは強い人ですから。」
「お、」
シュトラが廊下でケーラと出くわす。
「さすが無敗の人。」
「シュトラさんも頑張って下さい。」
「当然!」
廊下に響く乾いた音。
ハイタッチを済ませた二人がすれ違い、シュトラが舞台に上がる。
相手は先程ミネルヴァと言い争いをしていた
エイト・82式・Blancベル馬だ。
「あなたのチーム、すごいわね。」
「え?」
「最上級の自然干渉系に世界に5枚しかない空間支配系の1枚、
それに一騎打ちであのフレイヤを圧倒する高校1年生。
・・・さて、あなたは何を見せてくれるのかしら。」
「では!山TO氏パラレル部VS西シッピー実業団シングル2戦目!
シュトライクス@・イグレットワールドVSエイト・82式・Blancベル馬!
見合って見合って・・・はじめっ!!」
号令と号砲。同時に2枚のカードが宙を切る。
「煌・行使!」
「あ」
直後エイトがシュトラの背後に回っていた。
「螺・行使!」
そしてカードを発動した右手でシュトラの背中に触れる。
「れは・・・」
「たあああああああああああっ!!!」
と、シュトラの体が螺旋状に高速回転しながら吹っ飛ばされる。
「うああああああああああああああああああっ!!!」
そのまま80メートル離れた反対側の壁に激突した。
「言い忘れていたけど私、前の5人よりガチだから。」
エイトがスパイラルを解除してタキオンのカードを握る。
「・・・・くっ・・・・!」
顔面から壁に激突し激痛の中でシュトラが立ち上がる。
(今のは・・・まずったなぁ・・・。
タキオンってケーラさんが前に戦った全国区の相手が使ってた奴か。
確か時間よりも速く動けるって言うチート。
ケーラさんはそれとほぼ同じ最速のカードで対応してたけど
私にはそんな最速とか最上位とかってカードはない。
相手の目を見て反応・・・と言っても流石に速すぎる・・・!)
「どうしたの?ひょっとして打ちどころ悪かったかな?」
「だ、大丈夫です!!握・行使!!」
シュトラが握力を強化して舞台の石畳3畳分1トンを持ち上げる。
「タキオン・行使!」
「まにあ・・・・」
シュトラが石畳を投げ用とした瞬間にエイトはタキオン時間に突入して
シュトラの死角に走りこむ。
そして3秒経過すると再び使用して徐々にシュトラに接近していく。
3回目の発動でシュトラの側面2メートルにまで接近した。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「残念。」
石畳を投げると同時にシュトラの背中に手を置く。
「あっ!」
「スパイラル・行使!」
そして再びシュトラの体が高速回転してすっ飛んでいく。
「きゃああああああああああああああああああああ!!」
自分で投げ飛ばした石畳に突っ込んでいき、
無数の瓦礫を作りながら倒れる。
「・・・・くっ・・・うううう・・・!!」
全身に激痛が走る。このまま眠っておきたい。
でも、そうして意識が遠のくほどにライラやケーラの顔が浮かび上がる。
「はあ・・・・はあ・・・・はあ・・・・」
膝に力を込めて必死に立ち上がる。
数倍に強化された痛覚が熱すぎてどうにかなってしまいそうだった。
「まだやるつもりなんだ。君、弱いでしょ。山TO氏の誰よりも。
何か理由があって実力が伴っていないのにも
関わらずチームに参加してるみたいね。」
「まさか・・・・まさかもう勝ったつもりでいるの?」
可能な限り余裕を作った顔でエイトを睨む。
「・・・だって君はもうボロボロ。気合だけで立っている状態。
いくらライフで守られているからってその痛みは幻じゃない。」
「だから!勝った気でいるなぁぁぁぁっ!!!
サンダー・行使!!」
カードから雷鳴が迸りエイト向けて電撃が飛ぶ。
「タキオン・行使」
それを時間を止めて余裕で回避。
「・・・けど、広範囲の電撃か。
タキオンを解いてまた2回目を発動じゃ、多分間に合わないな。」
エイトが一瞬で計算して距離を取る。
体内時間で3秒過ぎるとタキオンが解除される。
と、何か違和感があった。
「え・・・!?」
エイト向けて放たれていた電撃は目的が違った。
「くううううううううううううううううううう!!!!」
「自分に向かって放電!?あの子死ぬ気なの!?」
100万ボルトの電撃を自分自身の体に浴びながら
シュトラはエイトを睨んでいた。
「かああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
そしてその状態でエイトに向かって走り出す。
しかも尋常じゃないスピードだ。
「電気を浴びて電車みたいになってるとでも言うの!?
けどどんなに速くたってタキオンには及ばない!」
2回目を発動してシュトラの側面に回り込む。
そして3回目を発動してシュトラの脇腹に飛び蹴りを叩き込む。
時間が止まっているためか電流は流れない。
そして電気の届かない場所まで離れてからタキオンを解除する。
「うああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「電気が強烈すぎて痛覚が働いていない?
でもそんな強力ならもう何秒も持たないはず・・・」
「それはァァァァお前のほうだァァァァァァァァァァっ!!!!」
シュトラが叫ぶと全身から広範囲に電撃を走らせる。
「タキオン・行使!」
エイトがタキオンを発動する。そこで初めて気付いた。
走らせた電撃の範囲が広すぎる!
これでは攻撃を当ててから離れたんじゃ間に合わない。
今このフィールドであの電撃が及ばない場所は、
「あそこしかない!」
ここから正反対の角。そこまで全速力で向かう。
「間に合え・・・間に合え・・・間に合えぇぇぇぇぇっ!!!」
3秒間で可能な限り走る。3秒過ぎると2回目を発動・・・する直前に
100万ボルトの電撃が背中を掠めた。
「かはっ!!」
躓きそうになるが堪えて無事発動。
また3秒を走っては過ぎると背中に電撃を掠めながら3回目を発動。
「はあ・・・はあ・・・」
無事安全地帯に到着すると同時にタキオンが解除される。
振り向けば目論見通り電撃はギリギリこの場所まで届かなかった。
しかし、
「つーかーまーえーたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
その電気に乗ってきたのか光の速さで
シュトラが眼前に迫り両肩に手を置いた。
「ひっ!」
「な”め”る”な”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!」
そしてその状態で100万ボルトの電流を放つ。
「があああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
全身をもはや虚無に近いほど静寂なしかし業火のような激しい痛みが走る。
肩を掴まれて動けない上この状態で
タキオンを使ったとしてもそれでも距離が間に合わない。
「ぐうううううううううううううううう!!!
スパイラル・行使!!」
何とかカードを発動してシュトラをぶっ飛ばす。
が、
「肘・行使!!」
ふっ飛ばされながらそれを発動して肘から先を刃のついた籠手が覆う。
そしてそれをミサイルのように発射する。
「え!?」
「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
サンダーを解いたとは言えまだ電流の生きている鋼鉄の拳が
エイトの顔面に亜光速でブチ込まれる。
次いでもう片方の鉄拳が同じく亜光速で腹にぶち込まれた。
「がはっ!!!」
背を託していた壁が砕けてエイトが何メートルもぶっ飛んでいった。
ライフの効果範囲外にまで吹っ飛び、
ステージから100メートル以上離れた
手術室に壁をぶち破ってなだれ込んだ。
「・・・ぐ、ぐべっ・・・・がぎゃ・・・・」
全身からバチバチと火花を放ちながら
エイトがちょうど手術台の上で気絶した。
隣で臨死したばかりの患者がエイトから発せられた電気を浴びて蘇った。
「・・・・はあ・・・はあ・・・」
ステージの上ではもはやそこに立っているだけの
置物状態なシュトラがいた。
限界を超えた激痛と消耗から一時的に失明していた上両腕に神経が届かなくなっていた。
「な、な、なんという規格外パワー!!
まさかステージ外までぶっ飛ばすとは思いませんでしたぁぁぁぁっ!!
と言うか二人共生きてますか~~~~!?
ともあれ勝者は山TO氏パラレル部!
この時点で3勝したためチームとしても勝利です!!」
アナウンスが半ばヤケになってコールする。
・3時間後。
両腕にギプスを巻き鼻から上を包帯でグルグル巻きにされたシュトラと
整形したあとのように顔面を包帯でグルグル巻きにされて
車椅子状態のエイトが対面した。
「・・・あんたらパラレルを死闘か何かと勘違いしてないか?」
ミネルヴァが呆れる。
「お二人共細胞再生装置を使うことで一週間ほどで回復するそうです。」
ケーラが診断書をもらってくる。
「シュトラさん、もうあの戦い方はしないでって・・・」
「ごめん。でも、どうしても私の力を証明したかったの。
自分のためにも、みんなのためにも。」
「・・・シュトラさん・・・」
「ま、勝ちは勝ちだ。ちゃんと後で酒樽奢れよエイト。」
「・・・あんたこんなミイラみたいな姿の先輩から酒を奢らせる気か。」
ちなみに当然のように後でMMが
西シッピー実業団相手に多額の慰謝料を納めた。
「あとあんた3年間私の授業の単位未履修ね。」
「え!?そんな殺生な!」
当然シュトラにも罰が与えられた。




