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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
3章:鋼鉄の謀略
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76話「世界への一歩・中編」

20:世界への一歩・中編


・VS西シッピー実業団。

タッグ戦1戦目を終えてマリアとマリナが席を立つ。

「頑張って下さい。」

「相手が大人で自分達が中学生だからって恐怖する義務にはならない。

常に勝機を捨てずに行けばやってやれない相手じゃない。」

ライラとミネルヴァからエールを受けて二人が控え室を後にする。

とは言え当然不安はあった。相手は高校生どころか大人である。

年齢で言えば倍近いかも知れない。

いくら空間支配系カードを制御出来るとは言え

イコールで必勝というわけではない。

当然大きなプラスではあるもののそれだけで

勝てると思えるほど二人は幼くはない。

発動する前に倒されるかもしれないし発動しても勝てないかもしれない。

ましてや穹以外の雑多なカードでは太刀打ち出来ないだろう。

先に戦った先輩二人が最上級の自然干渉系を使って何とか勝てた相手だ。

「あ、マリアちゃんマリナちゃん。」

廊下を歩いているとその先輩二人が向こうからやってきた。

「先輩・・・」

「あはは、そんな不安そうな顔しないで。」

「確かに相手は大人でプロで練習量でも負けているかもしれない。

だけどあんた達は大人相手になら負けてもいいだなんて気概で

入部して練習し続けてきたわけじゃないでしょ?」

「あたし達だって勝てるかどうか分からないつもりで、

けど最期まで諦めず戦ったんだからあなた達も諦めちゃダメだよ?

少なくとも戦う前からそんな顔しちゃダメ。」

ティラが優しく二人を抱きしめてくれた。

「負けてもいい。だけど自分には負けちゃダメだよ?」

「それさえやり抜ければ結果はどうあれ気持ちで負ける事はないよ。」

「「・・・はい!」」

それから先輩二人とハイタッチをしてすれ違う。

不安は消えない。でも元々それは無理に否定する必要はない。

大事なのは自分を肯定し続けること。

その思いを胸に手を繋ぎながら二人が舞台に上がった。

「くすくす。可愛い。」

「あれ、高校生じゃないよね?ひょっとして中等部の子かな?」

既に先方は舞台に待ち構えていて微笑みながらこちらを見下ろしていた。

「・・・うん!」

「・・・うん!」

顔を見合わせてから対戦相手の前に立つ。

「それではタッグ戦2戦目を始めたいと思いますっ!

見合って見合って・・・はじめっ!!」

号令と号砲。同時に4枚のカードが宙を切る。

「可愛い。でもさっさと終わらせちゃう。

トルネイド・行使!!」

「悪く思わないでね。フレイム・行使!!」

相手二人が竜巻と炎のカードを同時に放って

マリアとマリナは炎の竜巻の中に飲み込まれてしまった。

ライフのおかげで火傷の類は一切起きないものの

摂氏150度以上の熱と風圧が容赦なく呼吸器を襲う。

その中で、

「「穹・双行使!!」」

二人が手を繋いだままカードを発動した。

直後舞台含む景色の全てが蒼穹へと変化した。

「え!?ナニコレ!?」

「まさか、空間支配系なの!?」

驚きを隠さない二人の前で空気を操り炎の竜巻をかき消す二人。

「今はこれ以外通用しないかもしれない。」

「でも、それでも私達の力だから!!」

二人が念じると今度は相手二人が

突如発生した竜巻の中に飲み込まれていく。

「くうううううううううううう!!!」

「これが・・・空間支配系・・・!最上級自然干渉系ともレベルが違う・・・!」

亜音速で体が回転して三半規管を激しく刺激される。

それでも対戦相手の二人が完全に気絶するまでどんどん加速していく。

「・・・それでいい。自分達の強さを自覚して

その上で力を完全に使いこなせるのならあの子達は山TO氏で一番強い。」

ミネルヴァが笑いモニターの中の蒼穹が少しずつ晴れていく。

「はあ・・・・はあ・・・・」

「も、もうだめ・・・・」

対戦相手の片方は完全に目を回して倒れたがもう片方は無事だった。

そして、肝心のマリアとマリナは膝をついて汗だくだった。

「・・・やっぱり基礎体力や魔力量が違うか。」

「でもよく頑張りましたよ。」

ミネルヴァとライラが賛すると二人は倒れた。

「そこまで~っ!!短期決戦ではありましたが

やはり中学生と実業団の大人では体力が違った!

勝者・西シッピー!」

アナウンスがコールしてライフの効果が切れると同時に

倒れた3人が目を覚ます。

「・・・負けちゃった。」

「あれだけ応援してくれたのに・・・。」

「そんな泣きそうな顔しないでよ。」

「あなた達はとても頑張ったわ。

少なくとも今まで見てきた中学生の中では間違いなく最強よ。」

「そーそー。可愛いだけじゃないってこと充分見せてもらったわ。

いつか同じ道に立った時はお互い負けないようにしましょう。」

「「は、はい!!」」

4人が握手を重ねる。

その様子をミネルヴァはモニター越しに何とも言えない表情で眺めていた。

「あれが私達の試合ですよ、姉様。」

その隣でケーラが立ち上がった。

「喩え負けても相手も自分も惜しみのないカタルシスを味わい、

それが次の勝利につながる。・・・行ってまいります。」

「ケーラさん、お気をつけて。」

「はい。私はもう誰にも負けるつもりはありませんから。」

ライラとミネルヴァに目配せしてからケーラが控え室を後にする。

「・・・なあ、あんたから見てあの子はどうなんだ?」

「え?」

「あたしはあの子とはあまり関わってこなかった。

元からあたしに腹違いの妹がいるってことは伝えられていたけれど

実際に会ったのは3年前が初めてでその時も

春休みの2週間しか一緒じゃなかった。

本音を言えばあたしもあの子のことはよくわからないんだ。」

「・・・ケーラさんは強い方ですよ。

2年間も復活しないかもしれないこの部でたった一人で待ち続けて

ひたすらに腕を磨いて勝ち続けてきた。

・・・ユイムさんならともかく僕ではきっと勝てませんよ。」

二人が会話しているとモニター内の舞台にケーラが姿を見せた。

同じように対戦相手も舞台に上がる。

「では!シングル戦1戦目を始めたいと思います!

山TO氏パラレル部は部長であるケーラ・ナッ津ミLク!

西シッピー実業団からは山西フレイヤ・Conクール・磁屍!

見合って見合って・・・はじめっ!!」

号令と号砲。同時に2枚のカードが宙を切る。

「レンゲル・行使!」

「アロー・行使!」

ケーラが杖を、フレイヤが弓を握り締め走る。

しかし、ケーラは距離を詰めフレイヤは距離を稼ぐ。

若干フレイヤの方が足が速く、少しずつ距離が稼がれていく。

そして射程距離に入ったのかフレイヤが弓の弦に手を触れると

魔力の矢が2本形成されそれを弓に番えて放つ。

「っ!」

ケーラは迫り来る2本の矢をレンゲルを振るって打ち落とす。

そしてその流れを殺さぬままレンゲルをフレイヤの顔めがけて投げつけた。

「!?」

フレイヤが投げられた杖を弓で払うと、

そのわずか2秒の間隙を使ってケーラが

フレイヤの側面にまで距離を詰めた。

そして払われたレンゲルを一度消してから

自分の手に新たなレンゲルを生み出し、

距離を取ろうとしたフレイヤの足を払う。

バランスを崩したフレイヤの脇腹を打ち抜き体勢を立て直したフレイヤの

顔面を狙うフェイントをかけてから右膝に打ち込む。

これらの動きをわずか2秒で、

それも一切相手の目線から目を離さぬまま行う。

「・・・なるほど。怖い子だね。」

「え?」

「あたしが付けた練習を完璧にこなしている。

それに今まで練習してほぼ極めたといっていい

あの棒術と組み合わせている。

・・・自分より強い相手と戦うほどに

強くなっていくんじゃないのかあの子は。」

ミネルヴァが冷や汗を拭いながらしかし一瞬たりとも

目を逸らさぬまま戦いの様子を窺っている。

ケーラの鋭さを肌で感じとっていたのはミネルヴァだけではない。

(・・・なんだこの子、色んな意味で本当にパラレル選手なのか!?)

徐々に追い詰められているフレイヤが焦燥を生み出し始めていた。

今ほかのカードを使うためにアローを戻してしまえば

恐らく一瞬で畳み掛けられてしまう。

しかしかと言ってこのままアローで

接近戦をしていても不利に変わりはない。

(と言うか、違和感程度にしか思っていなかったがやっぱり間違いない・・・!

この棒、どんどん伸びてきている・・・!)

そう、ケーラは絶妙なタイミングごとに少しずつレンゲルを長くしていた。

この5秒の攻防で既に10センチ以上伸びている。

それに攻撃の手をどんどん加速させてもいる。

(少しずつ棒自体が伸びて、加速していって、

しかもどんどん攻め手が際どくなって行ってる・・・!

・・・こ、このままじゃ・・・!)

焦燥が一歩を踏み、フレイヤが力のまま弓を使ってケーラの杖を払った。

不意を突かれたのかレンゲルはケーラの手から離れ宙を舞った。

「今だ!」

フレイヤがアローを解除して距離を取る。

そう思慕を作った瞬間、彼女は突如水をかぶった。

「きゃ!?」

直後再びレンゲルを手にとったケーラがまるで鉄槌のように

フレイヤの即頭部をレンゲルで穿った。

「・・・あ、」

その事実を認識する前にフレイヤは意識を失った。

「そこまで!勝者は山TO氏パラレル部ケーラ・ナッ津ミLク!!」

アナウンスが入りケーラは一礼してから舞台を去った。

「馬鹿な!?今のカードは・・・!!」

ミネルヴァが思わず立ち上がる。

「今のは多分クイックのカードですね。

相手の思考速度よりも早く発動出来る水属性のカードです。

威力は低いですがその圧倒的なスピードは間違いなく虚をつけます。

・・・どうしたんですか?」

「・・・なんてことだ。あのカードがあったからあいつは・・・・」

「ミネルヴァさん?」

「・・・あたし達はとんでもないことをしてしまったのかもしれない。」

表情を青くしていくミネルヴァの胸中をまだライラは知らない。

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