75話「世界への一歩・前編」
19:世界への一歩・前編
・そして迎えた事業団との交流試合当日。
2か月前に性殺女神の被害にあった街の復興支援も兼ねている。
スカイバスに乗って会場まで向かう山TO氏パラレル部。
「でも本当に良かったんですか?」
「ん?何がさ。」
「ミネルヴァさんをシフトに組み込まなくて。」
「ああ。元々団体戦で全国3連覇しろってのはあのクソ親父の指示だからね。
もう関係なくなったし流石にあたしは場違いだ。
だからこの2週間あんた達のコーチに甘んじていたってわけさ。」
「まあ、そのおかげで皆さん僕が指示するより断然
地力が上がったのでとてもありがたいのですが・・・。」
「それにMM先生からコーチとしてのアルバイト代もらってるしね。
・・・結局あのクソ親父あたしの口座止めたまま封印されたから
あの口座が使えるようになるまでまだまだかかるみたいだし。
KYMのバイトだけじゃちょっと家計がね・・・。」
「ごめんなさいミネルヴァさん。あまりお給料出せなくて。」
「いいんだよティラちゃん。」
「そうですよ。この方の家計が辛いというのは
生活費の半分近くを酒類に使っているからですので。」
「・・・民子、あんたどうしているんだい?」
「応援です。ラモンに呼ばれたので。」
「それよりミネルヴァさん。いくら20超えてるからといっても
スポーツ選手がそんなたくさんお酒を飲むのはどうかと思いますよ。」
「あ、いや、それはそのだな・・・」
「ミネルヴァ様は筋トレか男子が好きそうな漫画か
決して場違いな女物雑誌か飲酒しか趣味がない方なので。」
「民子!あんたどっちの味方だ!」
そんなこんなしてる内に会場に到着して部員&MM、民子合わせた28人が
案内を受けて舞台に上がる。同時に笑い声が響いた。
「ちっ、こいつがいたのか。」
「あーっはっはっはっは!!ミネルヴァあんた何してんの!?ぶっ!!」
ミネルヴァが舌打ち。
「ミネルヴァさん、この方は?」
「前にあたしがいた事業団のメンバーだよ。
1年前に引越しで転属したんだけどまさかここのチームにいるとは。」
「どうも。エイト・82式・Blancベル馬です。」
「あ、はい。ユイム・M・X是無ハルトです。」
「へえ、中々の大物だね。タイトルホルダーとは。
でもそのワンマンチームじゃ事業団には勝てないよ?」
「誰がワンマンチームつったよ。あたしが全員の力を底上げした。
高校は愚か並の事業団だって舐めてかかったら負けるよ?」
「へえ、いい自信じゃない。なら賭けてみましょうか。」
「いいぜ、何賭ける?」
「私のチームが勝ったらあんたには悪霊退散音頭を踊ってもらうわよ。」
「・・・本気かよ。ならばあたしのチームが勝ったら酒樽2俵だ!」
ミネルヴァとエイトが睨み合い、やがて踵を返す。
「みんな、負けたらあたしは社会的に死んじまう。
何、勝てない相手じゃない。日々の練習成果を信じるんだ。」
「・・・ミネルヴァさん、ものすごい目が死んでるんですけど・・・。」
「大丈夫だ、勝てれば問題ない。」
「・・・・は、はぁ・・・・。」
控え室。
ものっそい形相のミネルヴァに見送られてティラとラモンが舞台に向かう。
「・・・本当大人気ないですね。」
「大人というのはこういう遊びをするものだ。
尤も遊び半分でやってもらっちゃ困るんだけどね。」
「大丈夫ですよ。喩え何かが懸かっていなかったとしても
僕達は決して遊び半分でカードを握りませんから。」
「・・・期待しているよ。」
ミネルヴァがモニターを見やる。
やがてティラとラモンのペアがモニター内の舞台に現れた。
ほぼ同時に対戦相手のペアもやってくる。
「お待たせしましたーっ!
これより山TO氏学園パラレル部と西シッピー事業団の試合を始めますっ!
まず一戦目はタッグ戦!
ティライム・KYM&赤羅門・ミドリュエスカラナイトVS
北岡・ホッカン・HKK&津南・XAN区・ハイエスター。
見合って見合って・・・・はじめっ!!!」
号令と号砲。同時に4枚のカードが宙を切る。
「壁・行使!」
ラモンが速攻で壁を召喚する。
しかし大きさはいつもの一畳より小さくミットサイズだった。
「巡れ!」
そしてラモンが唱えるとウォールが動き始めた。
いつもよりもサイズが小さい分動かしやすく
相手二人の視界を著しくかく乱する。
「子供だましね。凍・行使!」
津南がカードを発動すると動く壁が地面ごと凍結して動かなくなった。
さらに氷は周囲の地面まで凍った。
「ハンマー・行使!」
北岡が巨大なハンマーを出して遠くから二人を狙う。
「地面をこちらのカードごと凍らせて接近戦を封じる作戦か・・・!」
「流石に手ごわいね。」
二人が横薙ぎに振るわれたハンマーをしゃがんで避ける。
「前までのあたし達なら負けていたね。
でも、今は違う。填・行使!」
ティラがカードを使って周囲から魔力を貯めていく。
「チャージ?魔力の低い者が補うために周囲から魔力を補給するカード・・・。」
「でっかいのが来るってことかしら。」
北岡と津南が注意をしながらも攻撃を続ける。
津南のフリーズが二人の足場まで迫る。
このままでは二人の両足まで凍ってしまう。
それを避けるためには横に避けるか後ろに避けるかしかない。
そしてどちらを選択しても北岡がハンマーで横薙ぎに殴る。
「さあ、どうする?」
「浮・行使!!」
ラモンがティラと手をつないだ状態でカードを発動し、
二人の体が宙に浮かび上がる。
「填・行使!!」
同時にティラが再度チャージを発動して魔力を自分の体に集める。
「多少浮いた程度じゃ!!」
北岡がハンマーを振り回し、浮かび上がった二人を攻める。
「ラモン!」
「そろそろいいね。」
と、ティラは新たなカードを取り出した。
そしてそれを手をつないだまま発動した。
「海・解放!!」
チャージ2回と二人分の魔力を吸ってそのカードから
莫大な量の水が生まれ大津波が地上を襲う。
「な、何!?」
ハンマーの打点と激流がぶつかり合うが当然威力が違いすぎて
ハンマーが破壊され、激流は北岡と津南の二人を押し流す。
「解除!!」
そこでカードの発動を中断して二人が着地する。
ミネルヴァから教わった対人防御術を使って敵の攻撃を凌ぎながら
チャージで魔力を増強して二人でダイダロスを発動する。
パラレルカードになったとは言え水属性トップクラスのカードだけあって
制御が難しいためこうでもしないとまた街を沈めてしまいかねない。
しかし、チャージ2回をした後に二人で発動すれば
その圧倒的エネルギーをある程度制御出来るのは非常に強力な武器だ。
「・・・ぐっ!」
とは言え相手もプロだ。
今まで一度も最上級の攻撃を受けたことがないわけではない。
流石に女子高校生がこんな方法で使ってきたことには驚きを隠せないが
それでも受身を取ってみせた。
「・・・油断した。」
「でも、これで終わりじゃない。むしろこれからだ!」
二人が立ち上がってティラ達に向かう。
「アクア・行使!」
北岡が発動し、舞台にまだ残っていた水を操り二人を狙う。
「チャージ!」
ティラが再び発動する。と、その両腕を水がまとわりついた。
「フリーズ・行使!」
同時に津南が発動してティラの両腕とまとわりついた水が凍る。
「あ・・・!」
「ティラ!」
「あんたの相手はこっち!ハンマー・行使!」
北岡がハンマーを出してラモンを狙う。
ラモンが避けてしまえばハンマーは無防備のティラに命中してしまう。
「反・行使!」
ラモンがそれを反射してハンマーが逆方向へ回転する。
「津南!しゃがんで!」
「わかってる!」
津南がしゃがみ、その頭上をハンマーが横切る・・・・
「グラビティ・行使!」
寸前にラモンがカードを発動してハンマーに2倍の重力がかかり、
遠心力のかかったハンマーは高度を下げてしゃがんだ津南に直撃した。
「ぎゃあああああああああ!!」
「津南!!」
津南は勢いよくぶっ飛ばされて壁に叩きつけられて気絶した。
発動者である津南が気絶したことでフリーズが解除され
ティラの両腕の自由がもどる。
「チャージ!ラモン!!」
「あいよ!!」
二人が手をつなぎ、
「ダイダロス・行使!!」
カードを発動して直径5メートル以上の水の塊が
まるでミサイルのように放たれて北岡を穿った。
「ごふっ!!」
一気に出入り口まで吹っ飛ばされて地面に叩きつけられ、気絶した。
「そこまで~~~っ!!勝者・山TO氏パラレル部!!」
「やった~!」
「ああ!」
ティラとラモンがハイタッチしてから舞台を後にした。




