73話「本当の始まり」
17:本当の始まり
・警察署。
ティラ、ラモンと合流したライラ、シュトラ、ケーラがそこへ来ると
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
取調室には既に鬼の形相のキリエが待ち構えていた。
「・・・・えっと、キリエさん・・・・?」
「・・・あなたまた血を吐きましたね?」
「え?」
「乾いた血の跡が残っていますわ。
全くどこの世界に血を吐きながら病院から抜け出して
戦いに馳せ参じる高校生がいますの?」
「・・・すみません。」
「キリエさん。そこまでにしてあげていいんじゃないかな。」
部屋の奥。数名の警官を侍らせてアルナカタタが座っていた。
「では、これから取り調べ・・・
というよりは情報収集をしようと思うんだけど、」
「あの、その前に1ついいですか?」
ライラが挙手をした。アルナカタタは無言で頷く。
一拍置いてからライラはティラとラモンに振り向いた。
「まずはごめんなさい。僕はあなた達を騙していました。」
「どういうこと?」
「僕はユイム・M・X是無ハルトじゃありません。
半年前にナイトメアカードの事件でユイムさんと体が入れ替わってしまった
ライランド・円cryンです。騙していてすみませんでした!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「彼を責めないでやって欲しい。
ナイトメアカードにはなるべく民間人を巻き込むわけには
行かなかったため議会からの命令で彼は事情を話すことを禁じられていた。」
「私はそれよりもっと前に直接聞いたわ。」
「私は命令後でしたが自分で気付いたので命令違反ではありませんわ。」
「すみませんでした!女性じゃない僕が女性のふりをして、
ユイムさんの真似をして皆さんを記憶喪失だと騙していて・・・!」
「・・・・」
「・・・・」
ただ頭を下げ続けるライラの前でティラとラモンが顔を見合わせた。
「だいじょーぶだよ。」
「え?」
「今更私達がその程度であんたをどうかすると思ったの?」
「確かに男の子だったって事は驚いたし予想できなかったけど
それでもあたし達とは友達だって事は変わらないよ?」
「で、でもお風呂とか一緒でしたし・・・その・・・
ティラさんにはあんなことまでしてしまいましたし・・・」
「あ、あれはその・・・あたしも気持ちよかったし合意の上だし・・・」
「ティラさん・・・」
「ちょっと待って。あなた一体何したの!?」
「ライランドさん・・・。
その姿になっても決してやましいことはしないと思っていましたのに。」
「え、いや、あれは、その・・・」
「あなたユイム一筋ではなかったので?」
「そ、それはそうですが・・・」
「おやおや。ならティラは現地妻ってところかな?」
「え!?あたし愛人なの!?」
「み、皆さん?お、落ち着いてくださいよ!?
と言うかどうしてシュトラさんとキリエさんが一番慌ててるんですか?」
「そりゃそうよ!まさかライラくんが私のより先に女の子の体を知っていたとは・・・」
「あ、やっぱり結局シュトラちゃんとはヤってたんだ。」
「・・・ライランドくん?私そんな報告受けていないのですが?」
「う、二人が滅茶苦茶怖い・・・!」
「・・・そろそろいいかな?」
と、そこでやっとアルナカタタが咳払いをして止めた。
「ティライム・KYMさんと赤羅門・ミドリュエスカラナイトさんの為にも
一度情報を確認しておこう。」
「あ、はい。」
「ライラくん、後でお話しね。・・・ユイムさんも交えて。」
「そ、それは勘弁して欲しいです、はい。」
「おっほん。」
「あ、はい。まず僕が知ってる限り最初の関連事項は
4年前に泉湯王国を襲った大寒波と性殺女神。
あれを引き起こしてしまったのがシキルさんが裏山で見つけてしまった
生贄のカードです。
あのカードによってシキルさん、ヒカリさん、アルクスさんは
性殺女神に統合されてしまった。
でもアルクスさんが他の二人を庇って一人でその力を引き受けてしまった。
だから力を制御できなくなって
泉湯王国中の性別を殺して
結果的に国交が断絶して・・・」
「その件はステメラが画策していた。」
「次に2年前にユイムさんが起こした魔力暴走事故、
皆さんは知ってると思いますが。
あれはブランチが誘導したものだということです。
ブランチはごく少数の人間にのみナイトメアカードと言う大きな力を与えて
人類全体を自滅させるのが目的の怪異的存在です。
ブランチが直接関わってユイムさんにナイトメアカードを与えたのは
7、8ヶ月ほど前かと思われます。
・・・そのあたりはあまり詳しい情報はないのですが。
で、半年前の3月にあのX是無ハルト主催海上試合で僕はユイムさんと
戦ってその試合の後にユイムさんがブランチに操られ
ナイトメアカードを使ってしまい船を沈めて僕はチェンジの効果で
ユイムさんと体が入れ替わってしまったんです。
それからキリエさんに拾われて記憶を失ったユイムさんを装って
みなさんの前に現れたんです。それからしばらくしてユイムさんのP3に
残っていた添付画像式のカード送信装置によって
野獣のカードを手に入れたんです。
直接ビーストを使ったのは2回だけですが。
で、7月のタイトル戦で僕は僕の体を使っていて
ブランチに操られたユイムさんと試合を行い、
その日の内にユイムさんを解放しました。
その時に聖騎士戦争から生きているとされる風行剣人さんに会ったんです。
彼から与えられた生粋のナイトメアカード破滅によって
僕はブランチへの対抗手段を確立しました。
でも、チェンジのカードも消してしまって
僕達は元の姿に戻れなくなってしまいました。
それから泉湯王国で性殺女神との事件。
ヒカリさんが4年間も必死に性殺女神を倒す手段を探してました。
その中でナイトメアカードを集めていて、
ナイトメアカードを持っている僕の力を借りようとしたんです。
結局その事件で
何故か泉湯王国に来ていたユイムさんが巻き込まれて死んでしまって・・・」
「私がアルナカタタさんから事情を聞いた後にリイラさんを通じて
ユイムに様子を見に行くよう伝えたのです。」
「死んでしまったユイムさんは救済のカードを使ったヒカリさんが
自分の命と引き換えに蘇らせてくれました。
・・・臨海学校の後半では僕は眠っていて本物のユイムさんが
パラレルのチェンジで本来の姿に戻って
皆さんと会っていたと思うんですが。」
「ええ、それは私も確認しています。直接話しましたから。」
「性殺女神を駆けつけたキリエさんが
ブルーで倒したと思っていましたが
実際はシキルさんに力が移っていたんです。
そしてそのシキルさんと一番関わっていた
ティラさんが性殺女神の
力を半分ほど引き受けてしまい暴走したのが先月のアレです。」
「あたしはあまりその時のこと覚えてないんだけどね。」
「その後ティラさんと一緒に性殺女神を止めて
シキルさんを救ったのですが
性殺女神を生んでいた生贄の
カードはブランチに奪われてしまいました。
それから僕はナイトメアカードに関わっていないのですが・・・。」
「後はラットン・MK・Hル卍と民子・J・ミドリュエスカラナイト、
ミネルヴァ・M・Hル卍が見たという過去の話か。」
「あの、アルナカタタさん。
風行剣人さんっていうのはどういう方なんですか?」
「・・・私も直接会ったことはないよ。
ただ議会のトップシークレットデータにはその存在が記されていた。
今から800年前に活躍していた最初の聖騎士とされる少年。
だが、彼が聖騎士と言うのはたまたま現代の聖騎士と言われる所以の
条件を満たしていた最初の人物というだけで
彼自身は自分を聖騎士とは思っていないようだ。
当時はまだ聖騎士という制度もなかったようだしね。
彼がどうして不老不死となったのか、
どういう形で聖騎士戦争を始め終えたのかは
どんな文献にも書かれていない。
ただ、いくつかの文献にはこのような名前が記載されていた。
悪夢を滅ぼすもの・オメガ。」
「オメガって・・・」
「そう。ステメラが過去から手に入れたとされる幻の存在だ。
我々にもそれがどういうものかは把握していない。
ただ数百年にもわたって風行剣人を苦しめた兵器と言うことしか知らされていない。
聖騎士戦争で人類を苦しめていたとされるブランチとの関連も不明だ。」
アルナカタタが水を飲む。
これ以上その話が進まることはなく今日における事情聴取が
行われた後ライラ以外は帰宅、ライラは病院へと戻った。
・一方。
「・・・ついにやりやがったな。」
剣人が剣を構えて夜の闇を走っていた。
「・・・お久しぶりですね、剣人くん。」
正面。大木の頂に白い男が立っていた。
その傍ら。10メートル以上はあろう巨体が佇んでいた。
「貴様、あの戦いを蘇らせようとしているのか!?」
「・・・ふふふ、」
「答えろ!パラディン!!!」
剣人がその男・パラディンを睨み上げた。




