72話「崩壊そして白夜」
16:崩壊そして白夜
・部活が終わりティラ達4人は民子の案内で
今の住居へミネルヴァのお見舞いへと向かう。
「いいのですか?そんな手荷物を持って頂いて。」
「構わないわよ。必要なんでしょ、これ。」
「それにしても意外でしたね。・・・あ、ここですか。」
「はい。では、お入りください。・・・すぐに用意は出来ますので。」
5人が部屋へと入る。
・Hル卍邸。
無数の機械人形が迫り来るラットンを迎撃する。
「はあああああああああああっ!!!」
ラットンがその攻撃を受け流しつつ逆に殴り倒していく。
そして吹っ飛ばされた機械人形は
全てライラが乗るスカイカーに向かっていき、
スカイカーに搭載された緊急バリアに激突して機能停止していく。
「くううううううう!!す、すごい衝撃だ・・・!
予めバリアを最大出力でセットしてなかったら
間違いなく落ちてた・・・。」
ライラが口から血を滲ませながら衝撃に耐えるため椅子にしっかりと座る。
「さあ、そろそろ見せてやろう。振・行使!!」
ラットンがカードを発動し強大な振動波の塊を
まるでダンクスマッシュのように直下にいる
ライラのスカイカーへ投げつける。
「くっ!」
急いでアクセルを踏み入れスカイカーが前進するとその直後に
先程までいた空を振動波の塊が通過して
そのまま真下にあったHル卍邸に直撃した。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
家全体に衝撃が広がり、ステメラが椅子から転げ落ちた。
「おのれラットンめ・・・!少しは周囲への被害も考えろよ・・・!
やはり無理にバグらせたのは失敗だったのか・・・!」
立ち上がりモニターを見やる。
ラットンが片っ端から機械人形を倒しつつ威力の高いカードで攻撃。
それをライラが紙一重で回避してしまうことで攻撃がHル卍邸にまで及ぶ。
「ええい!ラットンめ!生前からカードの使い方に長けてはいたが
どうしてそんなに威力の高いカードを・・・待てよ。」
ステメラがラットンの座標を確認する。
「・・・あいつ、ここの敷地に入ってから
どうして移動していないんだ・・・?
あいつの機動性ならば威力の高いカードで
機械人形の陣形を突破出来るはずだ。
そうすればライランド・円cryンを
機械人形どもに当てさせることになるはず。
・・・まさか、あいつ結託したとでも言うのか!?
ユイム・M・X是無ハルトを追撃するフリをして
わざとここで大暴れして私を攻撃しているのか!?
逆光のカードで過去に遡ればバグは余計深まると思っていた・・・!
だが、もし逆に奴を正常化させてしまえば・・・本当の記憶を蘇らせてしまったら・・・!」
直後、屋根がぶち抜いて数体の機械人形がまとめて落下してきた。
「ひいいいっ!!」
「油断したようね。」
そしてラットンとライラが飛来した。
「貴様、まさか本当に記憶を取り戻していたのか!?」
「あんたの目論見通り最初は過去に戻ったことで機能にバグが生じて
機能停止寸前まで陥った。だけど遡った過去で直してくれたのよ。」
「馬鹿な!?お前を直せる奴などこの世界にそう何人もいるはずがない!」
「そう。あんたは天才だった。
だからこそ2年前のあんたに直してもらったのさ。
当時ユイム・M・X是無ハルトがやったように見せて生身の私を
あんたの指示した機械人形のスカイカーで
轢き殺して改造したその時に潜り込んだ。
まだその時のあんたは奴らから逆光のカードを受け取っていなかったから
未来から機能停止寸前の私が来るなんて夢にも思っちゃいない。
ミネルヴァ姉さんとの組手に失敗して損傷したと民子さんが
2年前のあんたに告げてくれたおかげで無事修復できたってわけ。」
「馬鹿な・・・!?では民子まで私を裏切っていたとでも言うのか!?
私は民子にお前を過去に破棄するよう命令したというのに・・・・」
「お忘れですか?」
と、ドアの向こうから民子がやってきた。
さらに、
「民子はとっくにあたしのモノだってことをさ。」
シュトラとケーラに肩を貸されながらミネルヴァが入ってきた。
「ミネルヴァだと!?お前は逆光の生贄になったのではないのか!?」
「確かに離散の効果であたしの魔力は使われた。
だが、使われたのはあたしだけじゃない。
半分はラットンが魔力を提供してくれたのさ。
そして逆光の効果で3人で過去に飛んだ。
まず最初にラットンを直すために2年前に行ってあんたに直してもらった。
そこでラットンは自分と母親の敵を知った。
あんたが犯し邪魔となったあの子の母親を
あんたが放った刺客がやったことをね。
次に900年前のナイトメアカードの始まりを見てきた。
そこで見つけた民子があんたにオメガを渡したのさ。
・・・無数にあったたった1つだけのオメガをね。」
「無数に!?あれが無数にあったというのか!?」
「伝説の聖騎士である風行剣人は確かにオメガに苦しめられていたが
それはたった1体のオメガにだけじゃない。
彼の800年の人生で倒されたオメガの数は2億を超える。
あんたはその内の1体を見つけては大喜びしていたってわけさ。
それにオメガならあたしも過去戦ってきたさ。
流石に無傷とまでは行かなかったがラットンとタッグを組めば
決して無謀とまで言える差ではなかった。それが今じゃこの数さ。
喩え今ここであんたが持っているオメガが復活したとしても1体だけならば
時間稼ぎにしかならない。・・・もうあんたの負けだ。」
「ぬ、ぐぬううううううううう!!!!
だ、だが!まだ私は死ねない!諦められない!
そ、そうだ!私にはまだ切札がある!」
「切札というのはブランチのことですかな?」
と、今度は窓をぶち破って
マサムネ率いる武装警官隊合計1200人が顔を見せた。
彼らの足元にはブランチの残骸が転がっていた。
「な・・・馬鹿な!?
奴らはナイトメアカードだけでしか倒せないのではなかったのか!?」
「ブランチは純粋な魔力に耐性があるというだけで物理攻撃に耐性はない。
それにお忘れですかな?我々、聖騎士には
ブランチを経由していない純粋なナイトメアカードがあるということを。」
「くっ・・・・!!」
「ステメラ・I・Hル卍。
ブランチと手を組み数々の悪行を積み重ねたその罪、
封印の力で永遠の生き地獄の中で贖うがいい!
封印・行使!!」
マサムネがカードを発動し、ステメラの体がカードに吸い込まれていく。
「ぬあああああああああああ!!!!???」
「いつでも権力でどうにか出来ると思って配下の戦力を
禄に確認しなかったのが貴様の敗因だ!」
ステメラの叫びがこだまする中
ついにその体が完全にカードの中に封印された。
「・・・いい演技だったよ、ラットン。」
「ミネルヴァ姉さん・・・。」
「ライラくん、無茶しちゃダメでしょうが!!」
シュトラがライラの頬をつねる。
「後でたぁぁぁ~~~っぷりキリエさんに怒られるといいわ!」
「す、すみません・・・。」
「今回ばかりは私も賛成です。
いくら一切戦っていないとは言えその体では無茶ですよ、
ライランドさん。」
ケーラが軽くライラの頬をつねた。
「すみません、ケーラさん。」
「・・・・・・・・あれ?ケーラさん今なんて・・・」
「ごめんなさいシュトラさん。
私もライランドさんの事知っていたんです。」
「・・・え、えぇぇぇぇ!?い、いつ!?いつバレちゃったの!?」
「夏休みに入ってすぐです。」
「2ヶ月近く前じゃない!って言うか泉湯王国の時には知ってたの!?」
「ええ。本当はもう少し黙っていようと思っていたのですが
先程シュトラさんが大声でライランドさんの名前を呼んでしまったので。」
「あ、そういえば・・・・」
「あ、あのお二人共・・・。
出来ればそろそろ手を離して欲しいんですが。」
見れば二人に頬をつねられてすっかり顔の形が変わってしまっていた。
「きゃ!ユイムさんのお顔が!!」
「ごめんなさいライランドさん。」
「お取り込み中のところ悪いけど君達には事情聴取をしたいんだが。」
そこへマサムネが来た。
「あなたがマサムネさんですね。」
「こうして会話するのは初めてだねライランド・円cryンくん。
春の間は済まなかったね。
実は5月には既に君の体を借りたユイム・M・X是無ハルトさんの事を
掴んでいたんだがあの男の命令で行動を制限されていたんだ。
もしかしたら君がナイトメアカードを手に入れるよりも前に
あの事件を解決できたかもしれない。・・・申し訳なかった。」
「いえ、そんな・・・!もう済んだことですし。
・・・って済んでないんでしたっけまだ。」
「はははは。すっかりその体に馴染んじゃったかい?
羨ましいな、好きな女の子の体と入れ替えっこなんて。」
「は、はぁ・・・。」
今までの鬱憤が晴れてか妙に爆笑するマサムネ。
と、そこへ部下らしき一人の警官がやってきた。
「失礼します!マサムネ様!」
「おう、オメガは見つかったか?」
「いえ!それがこの屋敷のどこにも見当たりませんでした!」
「何!?まさか先程の戦いで消失したのか・・・!?
もう一度探し直せ!あれはナイトメアカード以上に危険なものだ!」
「はっ!!」
「そういうわけだ。すまないが君達は部下に一度署まで送らせてもらう。
そこでアルナカタタが待っているから彼の指示に従ってくれ。」
「分かりました。」
「・・・・・・・。」
檄を飛ばすマサムネの背後。
先程報告をした警察官がふと姿を消した。
「ここが30世紀。あれから800年か。」
高層ビルの屋上で満月を背に白い男が立っていた。
「まさか私がオメガを手にする事になるとは思ってもいなかったよ。
さてさて、剣人くん。これで君はどう出るつもりかな?」
その男が懐から携帯サイズに小さくなったオメガを出す。
そして次の瞬間にはその姿は夜の闇に消えていた。




