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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
3章:鋼鉄の謀略
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68話「白き遺産」

12:白き遺産


・病室。

すぐさま運ばれてきたライラの、ユイムの体は

著しくストレスによって神経を潰されていた。

そして元来の魔力暴走体質も合わさって

血圧が弾けそうなほど高くなっていた。

「・・・まさかこんなに早く悪い結果が出てしまうとは。」

キリエが見舞いに来た。

「・・・すみません。ユイムさんの体を・・・」

「そういうのはおよしなさい。今はあなたの体です。

昨夜申し上げたようにもう少しご自愛なさい。

そうすることがその体を傷つけない方法でもありますのよ。」

「・・・はい。

でもまさか血を吐くほどストレスが溜まっているとは・・・。」

「・・・あなたの場合ナイトメアカードを

使用しているというのもあるでしょう。

いくら負担の少ない破滅とは言え

この2ヶ月で4回も使用すれば

どんな影響が出るかは分かりませんわ。

それ以外にビーストを2回使用しているのですからね。」

「・・・はい。」

「しばらくゆっくりなさい。」

それから時間いっぱいまでキリエはいてくれて

授業が終わった時間から少しするとティラ達も来てくれた。

「大丈夫?ユイムちゃん。」

「ここしばらく事件ばっかりだったからね。うんと休むといいよ。」

「すぐにお見舞いに来れなくて申し訳ありませんでした。」

「また何か考え込んでたりするのかな。」

それぞれがそれぞれに言葉を走らせて来る。

「いえ、僕は大丈夫です。

ここしばらくはゆっくりさせてもらえれば・・・」

「その間のことは私にお任せ下さい。」

「そうだよ。まだ記憶喪失になってから半年しか経ってないんだから。」

「血を吐くほど気を病んでしまうのも仕方ないよ。」

「・・・それは・・・」

記憶喪失。そう言えば自分は記憶を失ったユイムを装っていたんだ。

そう誤魔化してこんなにも

自分に優しくしてくれている少女達を騙して・・・。

「あの、実は僕は・・・・かはっ!!」

「ユイムちゃん!?」

4人を見上げた時またこの口から鮮血が迸ってしまった。

「すぐ精神安定剤を!」

ケーラが声を上げ近くにいた看護師が準備に取り掛かった。

「僕は・・・・僕は・・・・・」

「・・・まさか、」

もはやうわごと程度しかその口から

漏らすものがなく意識が落ちかかっていたライラの

様子を見てシュトラが表情を変える。

そしてキリエの方を振り向く。

「・・・・・・」

キリエは黙ったまま首肯した。

「・・・私から言おうか?」

小声をライラの耳に放る。きっとこの少年はついに告げようというのだ。

自分の正体がライランド・円cryンであると。

そして比較的最初の方に正体を知った自分とは違い、

これだけ長い間黙り続けていて今更明かすというのは

この少年にとってはきついことだろう。

なら不純であれある程度の事情を

知っている自分が言うのが助け舟になるかもしれない。

少なくともこの少年は今一人で言おうとして

それを心労が邪魔をして血を吐かせたのだから。

「・・・・・・、」

しかし彼は首を横に振った。

(・・・不器用なんだから。)

それからすぐに担当医が駆けつけてシュトラ達は病室を離れた。

「・・・心配ですね。」

「・・・ええ。」

「ケーラちゃん、確かミネルヴァさんも調子が悪いんだよね?」

「ええ、民子さんが言うには意識が戻らないとのことです。」

「・・・なんですって?」

そこで初めてキリエが話題に口を挟んだ。

ライラの話では昨夜ミネルヴァも

機械人形の起こした事件を追っていたという。

マサムネの警官隊がすぐに駆けつけたがそこには既に誰もいなかった。

ミネルヴァの強さは本物だ。

少なくともラットン程度があの数分で

意識不明な状態にまで追い込められるとは思えない。

むしろラットンの方が数分もあればスクラップにされてしまうだろう。

ならば、あの場にラットン以外にも

ミネルヴァを襲ったものがいる可能性が高い。

マサムネはステメラの配下とは言え信用における人物だから

虚偽の報告をするとは思えない。

つまり、警官隊が突入するまでの数分でミネルヴァを倒してしまえる人物が

あのラットン、引いてはステメラの傘下にいるということだ。

(・・・益々胡散臭いですわね。

これは早めに手を打たないと危険かもしれませんわ。)


・一方。そのステメラの居住。

「ほう、これはまた面白いものが手に入ったな。」

ステメラが酒瓶を片手にそれを見下ろしていた。

「私も驚きでした。まさか聖遺物を現代に持ってこれるとは・・・」

「・・・くく、本来はラットンに逆光を使わせて聖騎士戦争時代の

技術力やその知識を得ようとしていたのだが

まさか全ての始まりの具現化を

運んでこれようとは、嬉しい誤算だよ。」

ステメラは笑いながら酒瓶を封も開けぬまま

窓の外へ放り投げそれを抱きしめた。

「聖騎士戦争どころかナイトメアカードが世界に漏れ出したあの夜の主役、

最初の聖騎士”パラディン”の相棒であり

風行剣人を苦しめ続けた不滅の鎧。

禁じられた書物にもその名前のみが僅かに記載された存在・オメガ。

これさえあれば私はあの怪物どもを出し抜き、

世界を手にすることが出来る・・・!!

・・・あははははは!!!あーっはっはっはっはっは!!!!」

狂ったように笑いだしたステメラ。

その胸に抱かれた白き鎧は禍々しく光を反射していた。


・一方。

ミネルヴァの家。

未だに意識の戻らないミネルヴァの前にラットンがいた。

「・・・まさか、あんなことがあったとは・・・。」

今までにないまるで憑き物が落ちたような表情で空を見やる。

「・・・せめて今は眠り続けるといい。

きっと次に目覚めた時は今までのあなたではなくなっている。

だから夢の中で最後の時間を過ごすといい。」

それから部屋を出ようとして机の上に

放置されていた漫画を見つけて読みあさる。

「・・・キマイラ伝説記か。

本物がああだとも知らずに空前の大ヒットした漫画か。

知らぬが仏というのはこのことだな。」

と言いながらも全25巻をその場で読み続けて

帰ってきた民子に白い目で見られるのであった。

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