65話「逆光を求めて」
9:逆光を求めて
・ある日、中等部1年生の生徒が一人行方不明になった。
保護者の話によれば昨日の夜に風呂から上がったところを最後に
姿が見えなくなったらしい。P3にも反応がないそうだ。
部室で中等部のメンバー達の間でも不安と恐怖の感情が蔓延っていた。
「人攫いなんて今の時代珍しいですね。」
「ええ。セキュリティも万全ですしカードを使えば
すぐに分かるようになっていますから。
特に家には押し入ってまでの誘拐はかなり難しいはずです。」
「スカイカーだって家を避けて走るから難しいよね。」
ライラ、ケーラ、ティラが話す。
「特別に稽古をつけてください!」
「・・・厳しいけどその上で言ってるんだろうね?」
「はい!」
シュトラはミネルヴァに弟子入りしているようだ。
「何か用だったかな?」
「いえ、ただKYMにはお世話になってるようなのでお土産を・・」
ラモンが民子から包みものを貰う。
「あの二人もここに馴染んできたようですね。」
「・・・・・そうですね。」
「・・・確かに僕もまだミネルヴァさんの
あの行動を許せるわけではありません。
でも、今は一緒に練習している仲間じゃありませんか。」
「分かっています。・・・分かってるつもりです。
けど、私の身内が迷惑をかけてしまって申し訳なくて・・・。」
「ケーラ!ちょっと来な!!」
「姉様?どうかなさったんですか?」
「いや、この子が組手をしたいって言うんだけどさ。
流石にあたしじゃ相手にならないだろうから実力的にも近いだろう
あんたに手を貸してもらいたくてね。いいかな?」
「・・・は、はぁ・・・。それはまあ構いませんけど。」
「御免ね、ケーラさん。」
「いいえ。それよりどうして急に・・・」
「私ね、やっぱりみんなに迷惑かけたくないの。
だから世界の座を掴んでるミネルヴァさんやライ・・・ユイムさんや
ケーラさんと一緒にトレーニングして的確な指示とかあったら
絶対もっと強くなれると思うんだ。」
「・・・シュトラさん・・・。」
「じゃ、一手お願いします!」
「・・・はい、こちらこそ!」
シュトラとケーラがカードを切り、実戦形式で組手が行われた。
「あんたはあたしとやってみるかい?」
「え?僕ですか?」
「ああ。軽い組手程度だから前回のあれは勘弁だが。」
「あ、はい。と言うかあれはもう可能な限り使う予定ないので・・・。」
「ならいいや。来な!ユイム・M・X是無ハルト!!」
・数時間後。
こっぴどくしごかれたライラとシュトラはシャワーで
お互いを慰め合ってから帰宅の準備を整える。
「・・・と言いますかシュトラさん。
もう僕に普通に裸見せてますよね?」
「え?まあ、それ以上のことだってしてるし。
ライラくんの本来の体の方とは最後までやったんだよ?
もう今更だと思うんだけど。」
「・・・そこまで慣れられるのもちょっと・・・。」
「ライラくんこそもうユイムさんの裸見慣れてるんじゃないの?」
「・・・それは割と本気で深刻な問題なので改善策を求めたいのですが。」
「・・・ライラくんさ、
もし元の姿に戻れたらユイムさんとも・・・したいの?」
「え?僕が・・・ですか?」
「そう。だってライラくんユイムさんのこと好きなんでしょ?
多分ユイムさんもライラくんのことは
間違いなく好きな部類に入ってると思う。
・・・私は二人とだったらいいよ?二股でも。愛人でも。」
「・・・シュトラさん・・・」
「ま、今ここで決めるようなことじゃないよね。
湯冷めしないうちに早く帰る準備しよ。」
「はい。」
制服に着替え、脱衣室を出ようとした瞬間。
「ェェェェェェェェェェェェェァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
窓をぶち破って機械人形が飛来した。
「機械人形!?」
「きゃあああっ!!」
一瞬で機械人形にシュトラがさらわれてしまった。
「シュトラさん!!」
「ちっ!!遅かったか!!」
ミネルヴァが走り込んできたが既に機械人形はシュトラを抱えたまま
破ってきた窓から出て空の彼方だった。
「まさか、例の誘拐事件の犯人は・・・」
「機械人形、それも今のはラットンだ。
・・・今のあいつはバグってる。何をするか分からない。
・・・どうする大将?」
鼻を鳴らしミネルヴァがライラを見やる。
「当然追いかけます・・・!」
「よしきた。ここはウチラ二人でやってやろうじゃないのさ。」
・町外れにある休火山。
休火山といえど火口の中にはまだ溶岩がたくさん漂っている。
「はあ・・・はあ・・・」
そこにラットンがいた。
スカイカーでは行けないここへも自分で飛行出来るラットンなら問題ない。
そして彼女の前には培養基に詰められた一人の少女とシュトラ。
「・・・私一人の魔力じゃ足りない。
もっともっと強い魔力を溜めなければ・・・!」
ラットンがブースターを発動して火口から外に出る。
と、そこへまっすぐ向かってくる一台のスカイカーが見えた。
「本当にいた・・・!」
「だろ?あたしの言った通りにことは成る!」
ライラとミネルヴァはラットンを発見した。
「・・・またあの二人・・・!
諦めるわけにはいかない・・・。私の過去を見つけるためにも・・・!
ここで怯むわけには行かない!アックス・行使!」
ラットンがカードを発動して巨大な斧を取り出した。
「!?馬鹿な!?機械人形がカードを使っただって!?」
「どういうことですか?」
「あんたも知ってるだろう?
カードは血管を血液と一緒に通る魔力を使うことで使用できるんだ!
機械人形は1から作り出された存在だ。生き物じゃないんだ。
・・・あたしはあいつが死んだラットンを
真似ただけの機械人形だと思っていたが・・・。
もしかすると・・・。いや、今はあいつを止めるほうが先だ!」
「はい!」
二人はスカイカーの上に上る。
と、アックスを構えながらブースターを起動して
こちらに猛スピードで向かってくるラットン。
「テンペスト・行使!!」
ライラのカードが発動して暴風雨が吹き荒れる。
それによりラットンは進行を阻まれてその場で耐える。
そこへ、
「スィープ・行使!!」
ミネルヴァが魔力の塊で薙ぎ払う。
「あんたは探しな!」
「はい!」
ミネルヴァがラットンに飛び乗り、ライラがスカイカーで火口まで向かう。
危険域設定されているためか火口の
傍までしか行けないスカイカーを降りて
「ステップ・行使!」
脚力を強化して飛び降りる。
「ライラくん!」
「シュトラさん!」
シュトラ達のいる足場に着地し、培養基を破壊する。
そして二人を抱えて一気に跳躍。
「ぎ、ギリギリだったかも・・・。」
火口から外に出てスカイカーに乗り込む。
「ミネルヴァさんは!?」
「あたしのことはいい!先に送ってこい!」
「分かりました!」
スカイカーを起動して火山を離れた。
「さて、聞かせてもらおうか。あんたは何者なんだ!?」
「そんなのは私が聞きたい!知りたい!
だから私は魔力を集めて・・・過去に飛ぶ!!」
「・・・・過去に飛ぶだと・・・・!?」
「そう、このカードで。」
ラットンが出したのは逆光のカードだった。




