62話「強さと力」
6:強さと力
・部室。
当然のようにまるで火山みたいに著しく真っ赤っかな顔をして
どんな絶望よりもブルーな背景を背負ってキリエが睨んでいた。
「えっと・・・お姉さま?」
「あなたはよりにもよってこんなところで
ナイトメアカードを使うなんて・・・!
また魔力が暴走したらどうするつもりですの!?」
「す、すみません・・・。でも、」
「でもじゃないよ!!」
空気を切る乾いた音が部室に響いた。
シュトラだ。髪を乱して鼻から血を流しながらライラの頬を叩いた。
「・・・シュトラ・・・さん・・・?」
「・・・・・・・・ありがと。でも知らないんだからっ!!」
そう言ってシュトラは踵を返してしまった。
・一方。
道着に着替え直したミネルヴァが学校を出る。
「・・・恐ろしいねぇ。あの力は。」
腹を抑える。きっとライフが掛かっていなかったら貫かれていただろう。
それに蹴られた足も千切り飛ばされていてもおかしくはなかった。
あの少女がこれだけの力を出したのは3か月前の地区大会の3回戦目。
あの時も先程のと似たような普通じゃない力を出していた。
父親から聞いたことがある。
あれはパラレルカードのモデルとなった
悪夢の力・ナイトメアカードであると。
現代の多くの人間にはDNAに細工がされていて
ナイトメアカードを使用すると
たとえライフの上からでも全身が悲鳴を上げて
最悪の場合後遺症をもたらすとまで言われている。
脱法を通り越した危険な代物であり
その存在は一部の議員にしか知らされていないという。
あの少女が何らかの理由でそのカードを手にしたのだろう。
それがあの少女が記憶を失ったという
半年前の事故と関わりがあるのかもしれない。
だが2か月前に行われたタイトル戦は少し勝手が違う。
あの試合ではユイム・M・X是無ハルトは
まるで記憶を失う前のような戦い方をしていた。
そして今までのユイムの戦い方は
対戦相手だったライランド・円cryンが引き継いでいた。
そしてその戦いの後はまたユイムは
今までと同じプロレスを混ぜたスタイルに戻っている。
「・・・一体何だってんだ・・・。まるで二人が入れ替わったみたいだ。
まさかナイトメアカードってのはただ
魔力が暴走するほどの肉体強化を行うだけのものじゃなくて
そんな魔法みたいな事まで出来るっていうのか・・・?
・・・魔法なんて空間支配系までで十分だろうに。」
未だ痛みの残る部分を抑えながらも足早に帰路へと付いた。
・シャワー。
なし崩し的に部活が終わりみんなで汗を流す。
「・・・・・・」
ライラが姿見の前に立って見つめていた。
半年前まで会えるとも思っていなかったユイム。
その彼女の裸体が目の前にある。
ただ、先程のビーストによって両腕に血走ったような跡が出来ていた。
使わないと決めたあのカードを使ってしまった。
あまつさえその力でユイムの体を傷つけてしまった。
果てしない後悔の念が唸りを上げるかのように両腕に鼓動が集中した。
「・・・・・・。」
いつもならこのタイミングで自分に何か耳打ちをしに来てくれる
シュトラとケーラも今日は表情が重く俯いたまま水に襲われていた。
「今日は色々あったからね・・・。」
ティラとラモンが代わりに来てくれた。
当然二人共一糸纏わぬ姿だったが流石に今はそそられない。
「そう言えばラモンさん。あの転校生は・・・」
「・・・ああ、民子だね。親戚だよ。
まさか生きているとは思わなかったけど。
あの事故でみんな死んだとばかり思っていた。
・・・まあ、あんな姿になっていたのは驚きだけど
生きてて良かったことに変わりはないよ。」
「・・・・そうですか。」
「あたしじゃうまく言えないけど、ユイムちゃんも元気出してね。」
「・・・はい。」
それから着替えて解散する。
校門前にはキリエが待っていた。
「・・・」
「・・・・・・・。」
キリエがスカイカーを呼び二人で乗る。
その機体が陸を離れ空を飛ぶまで互いに何も喋らなかった。
「話はMM先生から聞きましたわ。
あなたのその思いはおそらく間違っているものではありません。
ですが手段を弁えなさい。負担の少ない破滅ならまだしも
野獣は危険すぎるからとあなた自身が封印したはずです。
あれを使っていれば非道だったとは言え
ミネルヴァ・M・Hル卍でも命が危なかったかもしれません。
あなたは決してその体を穢せる様な人ではないでしょう?」
「・・・・キリエさん。」
「元気を出しなさい。後ろ向きではまた魔力が暴走しますわよ。」
「・・・はい、すみませんでした。」
今はただ頭を下げるだけであった。
・翌日。
登校してすぐにシュトラに手を掴まれ体育倉庫に連れられていった。
「しゅ、シュトラさん・・・!?」
「ライラくん、昨日はいきなり殴ってごめん。
でも、無茶しすぎだよ・・・。
私のためにナイトメアカードを使うなんて・・・。
これで2度目だよ・・・。ユイムさんの体を使わせてまで・・・。」
「・・・すみません。
これでもなるべく傷付けないように気をつけているんですが・・・」
「そうじゃないよ!ライラくん、
ユイムさんのこと本当に好きだって分かってるもん・・・。
それなのに私を守るためにユイムさんの体を傷つけさせちゃって・・・」
「・・・シュトラさん。
前にも言いましたけど僕にとって確かにユイムさんは大事です。
でもシュトラさんだって大事な仲間なんです。
シュトラさんが目の前であそこまで
侮辱されたら僕黙ってなんていられませんよ。」
その時だった。
「・・・・・!?」
一瞬だった。一瞬だったがシュトラの唇が自分のと重なった。
「・・・だからありがと。
私、今まで男の子にここまで大事に思われたことなかったから。
ライラくんが色々と初めてだよ。」
「・・・でも、僕は・・・」
「知ってるよ。私ユイムさんと一週間くらいだけど一緒にいたんだから。」
「・・・そうですか。」
「それでもいいの。私にとって初めての男の子はライラくんなんだから。
・・・じゃ、しよっか。」
そうして始業のベルが鳴るまでの間シュトラはライラの
足の付け根やらその源やらを舐め続けられた。




