60話「義姉妹」
4:義姉妹
・放課後。
やけに疲れた表情のケーラがいつもどおり
これからの部活動についての説明をしている。
当然やつれてる理由は何となく理解出来る。
高校生じゃない姉が自分のクラスに転校してくるなど拷問だ。
きっとライラもキリエが自分のクラスに来たら気が気じゃないだろう。
・・・あの人普通に高校生だけど。
「では、練習を・・・」
「ちょいと待ってくれ。」
と、そこへケーラの心労の根源たるミネルヴァがやってきた。
「・・・姉様どうしてここへ・・・?」
「そう釣れないこと言うなって。あたしもこの部に入りたいんだけど。」
「・・・それはあの人の命令ですか?」
「条件だそうだ。あんたら若い連中の邪魔をするつもりはないから。
ただ団体戦のメンバーに入れてもらえればいい。どうかな部長?」
「・・・私の一存では・・・。
しかしあなたがここへ入学してきた時点で
もう上からの許可はすべて降りているようなもの。
なら私程度では反対できないということなのでしょうね。」
「さすが我が妹。理解が早くて助かるよ。
ってわけで新しく部員になるミネルヴァ・M・Hル卍だ。
みんな気にせず構ってくれ。」
ミネルヴァが気さくに手を振る。
当然ケーラはもちろんのこと全員が呆然としていた。
と言うかミネルヴァも若干勢いで誤魔化そうとしているようにも見える。
「・・・で、では、練習を始めてください。」
若干きょどりながらもMMが声をかけて練習が始まった。
とは言え新しく入ったミネルヴァはレベルが違った。
中等部&ティラ、ラモン用の通常メニューではもちろん
ライラ、ケーラ、シュトラ用の
上級メニューでも余裕でレベルの違いを見せつけてくる。
本当にどうしてこんなところにいるのか疑問が尽きない。
「っと、ちょっとペースが早すぎたかい?」
「あ、いえ、お気になさらず・・・。」
「・・・あんた、ユイム・M・X是無ハルトだろ?
7回もタイトル防衛を果たしたって言う。
それがどうして高校の部活なんかでパラレルやっているのさ。
あたしみたいに実業団に入ろうと思えば入れるんじゃないのか?」
「・・・いえ、僕はそんな立派なものじゃありませんから・・・。
それに僕はみんなで戦っていきたいんです。みんなで笑い合って・・・」
「・・・それは自分への言い訳かい?」
「え?」
「独りで問題なく戦えてしかも世界にその名を轟かせているような奴が
そう言う言葉を口にするということは自分の限界に怯えて
前に進めなくなった現状への言い訳にしか聞こえないんだよ。
自分より格下の仲間達に上から目線でチームプレイごっこを
しておいて満足してちゃあんたが
担っている看板が痩せ細って泣いちまうよ。」
「・・・僕は・・・」
「ミネルヴァ姉様、ユイムさんは一度たりとも上から目線で
私達に接したことはありません。
あなたとは違うのですから言葉を選んでください。」
「・・・まあ、部長のあんたが言うのなら文句はないさ。
あたしはただ自分の意見を言っただけ。
それで嫌われちまうのならまあそれは仕方ないことだね。
けど、団体戦には出して欲しい。」
「個人の感情でそれは決められるものではありません。
私達はチームなのですからチームで話し合った結果に従うまでです。」
「言っちゃなんだがあたしが入れば間違いなく勝率は上がる。
全国に行くのだって十分視野に入れられる。
あたしを拒むる理由がどこにあるのさ。」
「そういう勝利しか目にないところが理由だと思われますが?」
「・・・・・」
「・・・・・」
交錯する姉妹の視線。
「ま、まあまあ。お二人共・・・」
「姉妹喧嘩なら他所でやって下さる?」
間に挟まれていた二人が苦言。
視線の交錯がそこで終わり練習メニューが再開された。
・練習メニューが終わりMMから連絡事項が伝えられた。
「次の交流試合の日程が決まったわ。
流石にもう遠藤峰とやるのは嫌なジンクスしか生まれないってことで
見送られて今度の相手は西シッピー事業団となったわ。」
「事業団!?」
「って事は大人と戦うってことですか?」
「そうなるわ。確かに相手は強いけど飽くまでも練習試合。
自分の実力がどこまで通用するのかを
十分に見定めるいい機会だと思うわ。」
「それだけでいいのかい?」
と、ミネルヴァが手を挙げた。
「なにかしら?」
「ここの連中は少し勝利に対する執念が欠けてるんじゃないかって思うよ。
一応公式試合及び非公式試合では無敗だとは言えそれはたまたまだ。」
「・・・たまたま相手が弱かっただけだとでも言いたいのですか?」
「そうだよ。公式試合での地区大会じゃ人数が少なかったからとは言え
4回戦までも行けなかった。他の非公式試合で戦ったチームは
全国区の選手が居るとは言えチーム自体は地区大会レベルに過ぎない。
ここまで練習をしておきながらそんな姿勢で試合をしてたんじゃ
時間の無駄になるんじゃないかな?」
「姉様は分かっていません。
どんな相手でも真剣にパラレルをしていました。
それは私達山TO氏パラレル部も同じです。
姉様の妄言はそれら全ての選手の努力を蔑ろにするも同じです!」
「・・・ならばその努力とやらの成果を見せてみなよ。
公式戦と同じメンバーであたしと戦い続けて勝ってみせな。」
「勝利だけに固執するなどあの男と同じ手法ですよ!?」
「ははっ、ケーラは馬鹿だなぁ。
負け惜しみっていうのは負けてからするものだ。」
「・・・ミネルヴァさん。」
「なんだい大将?」
「その勝負、乗りましょう。」
「へえ、話が分かるのがいるじゃないか。」
「・・・僕達が勝てたら先程の言葉を撤回してください。」
「ああ、いいよ。土下座だって裸踊りだってしてやる。
その代わりあたしが勝ったら
この部活は3年間あたしの言うことに従ってもらうよ。」
ライラとミネルヴァの視線が交わされる。




