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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
2章:泉湯王国(アク・サスファンテ)と性殺女神(セキシキルアルクス)
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49話「再びの泉湯王国(アク・サスファンテ)」

19:再びの泉湯王国


・スカイカーで飛ばすこと2時間。

3人はあの国境沿いの高台にやってきた。

そこでどうしようもなく異変に気付かされてしまった。

「・・・水路がない・・・!?」

「ど、どういうこと・・・!?性殺女神が復活したとか

それだけじゃないってことなの!?」

「・・・私達が来たというのに全く反応がありませんわね。

あの男女ならすぐに飛んでくるはずですのに。」

「・・・まさか、」

そこでライラの脳裏にシキルの話が反芻された。

かつて性殺女神はシキル、ヒカリ、アルクスの3人の

体を1つにした結果誕生した謎の存在だった。

まだ幼かった二人を守るためにアルクスが一人ですべてを抱えて

自らをそういう現象へと変えることで二人を解放した。

しかしあれからアルクスはキリエによって倒されてしまい、

ヒカリはユイムを救うために自らの命を消費した。

だとしたら、

「もしかして性殺女神はシキルさんに宿っているかもしれません・・・!」

「シキルに・・・!?」

「はい。シキルさん、ヒカリさん、アルクスさんの3人が

最初は性殺女神でした。

アルクスさんが他二人を守るために自ら性殺女神を引き受けたのですが

そのアルクスさんが消えてしまった上にヒカリさんももういない。

だからシキルさんに宿るしかなかったんです。

それに性殺女神は元々シキルさんが

生贄のカードで作り出した存在。

むしろ発動者以外に使役されていることが今までおかしかったんです。

そして、本来の使役者にその力の全てが戻ったのだとしたら・・・」

「・・・ただ性別を奪うだけの能力じゃない、

性殺女神本来の能力が発動したということですか。」

「で、でもそしたらティラの件はどうなるの?」

「・・・泉湯王国でティラさんは一番シキルさんに関わっていました。

だからその内に性殺女神の力が移ってしまったのかもしれません。

だからティラさんの性別はかなり遅々に死んでいっていたんです。

そしてティラさんがあれだけの水を使ったのは、

シキルさんが泉湯王国中の水を吸い尽くしたからじゃないでしょうか・・・?」

「・・・つまり解決するにはシキルさんがサクリファイスのカードを

解除するしかない・・・ってわけですわね。」

「はい。今までシキルさんだけが一度もカードを使ったことがなかったのは

生贄を4年前初めて使った時から

ずっと発動しっぱなしだったから・・・。

そしてそれまでカードの知識がほとんどなかったシキルさんの事ですから

もしかしたらカードを止める方法を知らないのかもしれません。」

「もしくは穹を使っていたあのチーム風の子みたいに

制御出来るまでは発動を止められないタイプ・・・か。」

「どちらにせよ早くシキルさんを見つけないといけません。」

「・・・だが、それはさせない。」

と、干からびた水路からブランチが出現した。

それも今まで見たことのないタイプだ。

まるでゴーレムと形容できそうな全長10メートルほどの巨体。

また無数の触手が集まったような尻尾が生えていた。

「今更来たところでどうにかなると思えないがしかし止めさせてもらう。」

「どいてください。今あなたなんかに構っていられませんので。」

「グリップ・行使!!」

シュトラが握力を強化してカヌーを持ち上げて投げ飛ばす。

が、その直撃を受けてカヌーが粉々になっても

ブランチは全くびくともしない。

今まで弱かった物理攻撃に対して耐性を持っているのだろう。

これでブランチには物理攻撃もエネルギー攻撃も通用しなくなっている。

「なら、破滅・行使!」

ライラがカードを発動し破滅の鎧とライフルを装備した。

「僕はブランチに破滅を与える!」

発砲。破滅を込めた弾丸がブランチに命中し、

その巨体がボロボロと砕け散っていく。

が、すぐ横に全く同じタイプのブランチが出現した。

「我々は一にして全、全にして一。概念が存在でありその存在は無限。

時空に不連続で思考というものがある限り消えることはない。

たった一度の破滅程度では欠片ほどの損失もない。」

やがてどんどん数が増えていく。

「そんな・・・これじゃキリがない・・・」

「こうなれば私も・・・」

「いえ、僕一人で十分です。」

今度は空に発砲。弾丸が空で無数に弾けて雨のように降り注ぎ

顕現していた全てのブランチを消し去っていく。

「たとえお前が外なる神であろうとも僕は必ず破滅し尽くす。

ユイムさんを利用しティラさんもシキルさんも破滅に導こうとするお前を

決して許しはしない。この感情がある限りお前には絶対に負けない。」

「・・・・・ぬおおおおお・・・・」

再び姿を見せたブランチを撃ち抜き、

それ以来ブランチは出てこなくなった。

「・・・色々とぶっ飛んでるよね、その力。」

「・・・ええ、まあ。ナイトメアカードですし。

それにあの人が言うには僕だけの力みたいですから。

それより先に行きましょう。」

スライトを解除したライラが先行して3人が国の中心まで走る。


・それは今から2週間ほど前。

ライラ達が泉湯王国を去ってから

シキルは性別が戻らない事を切り出せなかった。

あの時の言葉通りに次第に戻ると思っていた。

だが多くの人は遅くとも2,3日で治ったものの

シキルは一週間過ぎてもその気配がなかった。

ラウラに相談してみた。ラウラもやはりとっくに戻っていた。

「・・・分からない。性殺女神が初めて

発動した際に近くにいたから・・・というか発動したのがシキル本人だから

完璧に回復するまでに時間がかかるんじゃないかな?」

「・・・だといいんだけど。」

その夜から異変は始まった。

旅館の水道が枯れてしまい全く水が出なくなった。

最初は故障かと思った。この旅館は聖騎士戦争よりも前に

建てられたと聞くから当然内部システムも古いはず。

明日にでも業者を呼んで修理してもらおうと思っていた。

しかし翌日。朝起きたら近くの水路が枯れていた。

それに日照りがとても強い。だが当然日照りがどんなに強くとも

海から直結しているこの国の水路が枯れ果てることなど考えられない。

それはつまり海の方が枯れ果てたということになってしまうから。

なら、海から通じているパイプが何かで詰まったのかもしれない。

様子を探りに行くと既に人だかりが出来ていた。

そしてその人々も生気のない顔をしていた。

まるで何日も最低限の水しか飲まずに砂漠を歩いてきたような・・・。

そこで思い至った。

泉湯王国中の水がなくなっているのではないか。

実際パイプを見ると確かに海から水は給水されている。

しかし泉湯王国に入った途端に蒸発していた。

性別の次は水が消えていく。

やはりあの時に自分が起こしてしまった奇跡が原因なのか。

その日から泉湯王国は再び地獄の最中に放り込まれた。

水路は枯れ果て人々の体からも水分が奪われていき

次々と地面も人間も干魃していった。

草木も枯れ、泉の王国と謳われたそこは砂漠と化してしまった。

たとえ性別を奪われようとも気力がなかったとは言え

国を捨てることをしなかった民もこの事態には耐え切れなくなり

ついに国を捨てて亡命を決意した。

しかし一人も国の外へ出ることは叶わなかった。

「・・・・・・・・・」

シキルが今のような姿になってからはかなり広範囲で

生物がその活動をするために必要な

最低限の水分さえも吸い取ってしまったからだ。

ラウラは止めようとした。

シキルの心の中にまだラウラに対する感情があったからか

ラウラまで水分を吸い尽くされることはなかったがそれでも性別は奪われ

魔力を動かす血液も生命活動に

必要最低限な量以外は吸い取られてしまった。

「・・・どうしてこんなことに・・・」

倒れ伏すラウラ。その手には吸引のカードが握られていた。

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