40話「R!R!R!」
10:R!R!R!
・突然穴に吸い込まれたシュトラとユイム。
気付けば夜空が見えた。
「・・・ここは・・・?」
「・・・大丈夫?」
そしてすぐ隣に自分を見下ろす少女・・・あるいは少年。
とにかく10代前半程度で少年か少女かよく分からない容姿の子供がいた。
・・・そして何故か自分の手を股間に当てていた。
手には肌の感触があるがやはりそこは
男性のものでも女性のものでもなかった。
「・・・やっぱりダメなんだ。」
「あの、君は・・・?」
「僕はラウラ・ラリーネ・来音。14歳。
あなた達を助けたんだ。あの性悪連中からね。」
「もう1ついいかな?」
「・・・・何?」
「あなた女の子?男の子?」
「・・・どっちだと思う?」
「出来れば女の子がいいかな。」
「・・・じゃあ、それでいいよ。」
「じゃあって・・・」
「で、そっちの子いいの?」
「え?あ、ユイムさん!!」
こんなコントをやっている場合ではなかった。
隣では気絶しているのに表情に苦悶を浮かべて倒れるユイム。
無理に動かしたからかまた出血が始まってしまっている。
「・・・この姿を見てると殺したくなってくるけど
でも死なれちゃ困るんでしょ?」
「そ、そりゃ当然よ!」
何だか抑揚のない声で恐ろしいことを言ったような気がするが・・・。
しかし今はそれよりもユイムの手当が必要だ。
「あなた、治療用カードとか持ってない!?」
「・・・ううん。」
「そっか・・・。どうしよう、この国じゃスカイカー呼べないし・・・」
「・・・どのみちここは早く逃げないと。
さっきの二人が追ってくる。」
「そういえばあなたさっき何したの?」
「吸引のカード。
これであなた達をここへ吸い寄せた。」
「・・・それってナイトメアカード・・・!?」
「そう。僕も目的は性殺女神を見つけて倒すこと。
そして本来の性別を取り戻すこと。
でもあいつらのやり方は嫌い。」
「なら、じっと待ってれば治るとでも?」
と、そこへヒカリとシキルがテレポートでやってきた。
「あなたも私達も4年前に性別を殺されてからずっと男でも女でもない姿で
苦しく過ごしてきた。下の穴が埋まったからって上を屠られた事もあった。
そうして来た腑抜けた大人達を殺してここまで来たんじゃない。
どうして今更聖人君子を気取ろうとしているの。」
「・・・こんなやり方じゃきっと近付けないから。
あなた達も聞いたことはないの?
ナイトメアカードを使うと聴こえてくる声が。」
「ブランチでしょ?でもあの連中は関係ない。
人間が一歩先に進むことを許さないだけで
別に人類そのものをどうにかしようなんて思ってないわよ。」
「・・・どうしてそう言えるの?
相手は直接姿を見せようともしない人外の存在。
本当の狙いなんて分からないじゃない。」
「だからって手をこまねて見ていろって言うの!?」
言い争う二人。
その間に逃げようと思ったがシキルがまっすぐこちらを見ていた。
この討論の決着も気になるが今は一刻も早くユイムの治療が必要だ。
しかし自分一人なら体重がないからどこへまでとも逃げられるが
いくら小柄になったとは言え体重が0ではないユイムを運んで
遠くまで逃げるというのは難しい。
それにヒカリはテレポートが使える。
どんなに速く動けても逃げるのは難しい・・・。
その時だった。
「テンペスト・行使!」
詠唱とともにカードが発動され暴風雨が吹き荒れる。
「シュトラさん!」
そこへケーラがやってきた。
「ケーラさん!?」
「状況は分かりませんが今は撤退しましょう!」
「けどユイムさんが!」
「え・・・?」
「事情は後で説明するけどいまこの子はユイムさんなの!
傷が深いから速く手当しないと・・・!」
「・・・分かりました。なら出来るだけ速く国外へ行きましょう!
そうすればスカイカーを呼べます!」
「行かせると思ってる・・・!?」
と、暴風雨の中ヒカリがこちらに向かってきていた。
「こっちはこれでも男の体を使ってるんだよ?
これくらいの風圧なら・・・!」
「・・・急いで!シュトラさん!ここは私が引き受けます。」
「・・・分かったわ。」
シュトラがユイムを背負って走り出した。
背中のあたりに温かいものが染み込んでくる。
予想以上の出血だ。今すぐ治療したとしてもまずいかも知れない。
「・・・ユイムさん・・・お願いだから死なないで・・・!」
・残された4人。
「一応お聞きしますがあなたは味方ですか?」
「・・・あなたが敵対しなければ。」
ケーラとラウラが傍に寄る。
「足止めって本気?私テレポート使えるんだけど。」
「使う暇を与えると思っていますか?」
直後暴風雨が止まったと同時にケーラが眼前に迫っていた。
そして手にしていたレンゲルで鳩尾を正確に穿たれる。
「がはっ!!」
手に握っていたテレポートのカードを取って発動を念じる。
だが、発動しなかった。
「え・・・!?」
「抜かったわね!チェーン・行使!!」
直後にヒカリが鎖を伸ばしてケーラの上半身を縛る。
「くっ・・・!」
「ナイトメアカードは契約者でしか使えないの。
どれだけ魔力を込めようとも発動はしない。
私の目的はライラ先輩が持っている2枚のナイトメアカード。
あなたにはそれを引き渡すための人質になってもらうわ。」
「ナイトメアカードは本人でなければ使えないのでは・・・?」
「だから本人に使ってもらうの。
どういう訳か知らないけどライラ先輩は今消沈している。
それが解決するとなればナイトメアカードくらい喜んで使ってくれるわ。
特にあの概念なら何でも破壊できるカード。
あの能力を確かめるためにあの体育祭の日私はわざと
超銀河ノックフライヤーで魔力球をテレポートで飛ばして
スカイカーを破壊して無理矢理使わせたのよ。
あの能力なら性殺女神でも倒せるわ。」
「・・・あの方は今迷っていますわ。
それが一番大事な時期。それを惑わせるのは許しません・・・!」
レンゲルを発動してチェーンを払い除けヒカリの足を払って転倒させた。
「くっ・・・!シキル!見てないで手伝って!」
「・・・私は・・・」
「何今更迷ってるの!?あなたが一番ひどいことをされたんじゃない!
精神を壊された旅館のスタッフ全員から陵辱されて滅茶苦茶にされて・・・!
あなたまで心を壊される一歩手前だったじゃない!
あの日一緒に性殺女神に復讐するって誓ったじゃない!」
「・・・だって、あなたは知らないんだもの・・・。」
「何を!?」
「そこまで。」
ラウラが制止した。その手には1枚のカードが握られていた。
「あれはまさかクウェイクのカード・・・!?」
「これを使えばここは震源地となる。
そしてこの場所は泉湯王国の中心部。
この水路だらけの国のど真ん中で
突然震度5の地震が起きたらどうなるか。」
「あなた、この国を潰すつもり!?」
「そうすれば警察に権限のないこの国で出来ていたことを
あなたは出来なくなる。
いや、それどころかすぐに他国の警察によって逮捕される。
僕もシキルもあなたもナイトメアカードを所持しているから
もしかしたらもう日の目は見られなくなるかもね。」
「・・・あなたという人は・・・!!」
「・・・!」
再びケーラがレンゲルを振り回してヒカリの後頭部を穿った。
「あ・・・・」
脳に直接衝撃が伝わりヒカリは倒れて気絶した。
「・・・さて、詳しくお話聞かせられるかしら?」
・旅館。
既に夜中0時を回っている。
「・・・・・・ん、」
ライラが目を覚ます。
ティラとラモンに無理にでも
寝かしつけられたのだが眠りが浅かったようだ。
「・・・!」
そこでシュトラとケーラがいないことに気付いた。
二人のP3に連絡しても応答はない。
「まさか二人で・・・!?・・・探さないとまた僕のせいで誰かが・・・」
もっとよく部屋の中を見る。
5人でもしもの時のために用意しておいた
たくさんカードの入ったバッグがなくなっている。
「・・・無事でいてください・・・!」
二人を起こさないように静かに窓から飛び降りた。




