37話「泉湯王国(アク・サスファンテ)へ!」
7:泉湯王国へ!
・週末。
いよいよ臨海学校へ行く時が来た。
「いいですか?
くれぐれも破廉恥な真似だけはしないこと。いいですわね?」
「はい、分かってます。ユイムさんの体ですからね。」
恐らく先日ティラにしたことは口が裂けても言えないだろう。
「でも、臨海学校先の泉湯王国ってどんなところなんですか?」
「名前のとおり国土の半分以上が泉湯になっている国ですわ。
温暖な気候で平穏は26度前後。
湿度は20%程度。人口は400万人ほど。
ですが去年までは寒波の影響で国全体が
氷河と化していて入国は出来ませんでしたの。
だから私も行ったことはありませんわ。」
「へえ・・・ラッキーですね。
そんないいところに僕が最初に行けるなんて・・・。」
「・・・向こうには可愛い子もいるでしょうが手は出さないように。」
「・・・それはユイムさんに言ってくださいよ。
僕の体でそういうことしたらどうなるか、
生命の神秘が発動するじゃないですか。」
「言って聞くような子だとお思いですか!?」
流石に憧れで恋患っている少女といえどもそこは否定できなかった。
「では、そろそろ行ってきます。」
「ええ。お土産を期待していますわ。」
・スカイカーで学校まで向かい、そこで集合する。
「あ、シュトラさん。」
「・・・あ、ライラくんか。」
「いやいや忘れないでください。
まだ前に会って一週間経っていませんよ?」
「だって毎晩ユイムさんがその姿になってるから・・・。」
「・・・念のため聞きますがどれだけしたんですか?」
「もうライラくん。女の子にそんなこと聞いてどうするのよ。」
「僕の体を使われているから気になるんですってば!
だって、う、生まれたらどうするんですか!?」
「私が育てます。そしてユイムさんと結婚するの!
泉湯王国は同性婚が認められてるのよ!
既成事実も出来たことだしもう誰も私を止められないわ!!」
「・・・その前に僕の体・・・」
「あ、ユイムちゃーん、シュトラちゃーん。」
声。2時の方向からティラとラモン、ケーラが来た。
「あ、社長。」
「もう、その呼び方はやめてよ~。あ、シュトラちゃん久しぶり~。」
「社長ってどういうこと?」
「一昨日ティラが正式にKYMグループの後継者に選ばれたんだ。
私とティラとユイムの3人でパラレルをやった結果でね。」
「へえ・・・」
と、そこでライラとティラの目が合った。
「え、えっと、まさかまたやるの・・・?」
目をうるうるさせて胸を隠す仕草。
同時に左右から突き刺さるケーラとシュトラの視線。
「ユイムさん?あなた何やったの?」
「不純いs・・・不純同性交遊は感心しませんよ?」
「え、いや、そういうわけでは
・・・ない・・・と・・・・信じたい・・・のですが・・・」
夏の暑さに負けるつもりはないのだが冷や汗が止まらない。
あれはどう見ても不純同性交遊であり不純異性交遊だろう。
少なくとも元の姿だったら間違いなく最後までやっていた。
そういう意味ではユイムに感謝しなくては。
「じゃ、そろそろ出席とるわよー。」
MMが名簿を持ってやってきた。全員出席番号順に並ぶ。
高等部1年生全360人が出席を終えると
巨大なスカイバスに乗っていざ出発だ。
・スカイバス車内。
全長200メートルでもはや列車という規模のバスだ。
360人全員が同じ車両に乗り込めている。
このバスで大体3時間ほどで泉湯王国には到着する。
もちろんこのバスもKYM社製だ。
「じゃあ、まだ二人共体重は戻ってないんだ。」
「はい・・・。」
「服に重りをつけてるから勝手に浮いたりはしないけどね。」
5人が一列に座りお菓子などを食べながら談話する。
思えばこの5人だけで揃うのは久しぶりな気がする。
「そうだ、シュトラさん。これを。
再来週に行われる交流試合の内容です。」
「あ、もうやるんだ。って、前の試合から2ヶ月近く経つわね。」
シュトラが内容を見る。大体は前回と同じだ。
「そう言えばあの子達どうなったの?
マリアとマリナ。空間支配系カード制御してから姿見ないけど。」
「はい、最近は普段通りの生活を送っていますよ。
ただまだエアリアルは制御できないみたいで使用を禁じられています。
それでも地力を上げつつあるので何もなければ
タッグ戦2で再び参加する予定です。」
「へえ、・・・そろそろ私も一勝くらいはしたいなぁ・・・。」
シュトラが深いため息をつく。流石に言及できなかった。
「・・・そう言えば景色がだいぶ変わってきましたね。」
「そうだね。海が見えてきたよ。」
「けど泉湯王国は泉だろう?
海とはまた違うみたいじゃない。」
「全体的に温水が多いそうです。」
「へえ、じゃあ温泉街が国になったって感じかな。」
「プールもあるそうですからまさに水の王国というらしいですよ。
・・・それ故に4年前に大寒波に襲われた時は大変だったそうですが。」
「国交断絶するほど危険な状態だったって聞きましたけど
今は大丈夫なんでしょうか?」
「まあ、大丈夫じゃなければ臨海学校で来たりなんてしないでしょ。」
「それもそうですね。」
・一方。
X是無ハルト邸。
「・・・まさか、そんなことが・・・」
キリエがP3を握る手を震わせていた。
「それは事実ですの?・・・・・・そうですか・・・。」
P3を切って椅子に座る。
「・・・あの子達あらゆる意味で無事に帰って来れるかしら・・・?」
・車内。
「ところでユイムちゃん。あれ誰?」
「え?」
ティラに言われて後ろを見るとそこには両手にビデオカメラを持って
こちらを撮影する少女がいた。
「あれってヒカリさんでは・・・!?」
「あちゃー、バレちゃいましたぁ?」
カメラを置いてヒカリが顔を見せた。
「どうしてここに・・・?と言うかあなた中等部では・・・?」
「先輩こそ忘れたんですか?先輩は私のものなんですから。
どこに行こうとも私が後ろから見ているに決まってるじゃないですか。」
「・・・・・・・・・」
「にゃ、にゃははは・・・。
随分と物騒で可愛らしいストーカーさんだね。」
「それに実は泉湯王国って私の母国なんですよ。
夏休みを利用して一度帰ろうと思っていたんですが
私のスカイカーこの間壊れちゃって。」
「そりゃあんなことすればそうなりますよ・・・結局壊れたんですね。」
「そ。だからテレポートで先輩追いかけたら
偶然に泉湯王国行きの
バスに乗れてラッキーだったってわけです。」
「て、テレポート・・・!?」
「そ。このカードですよ。」
ヒカリが転移のカードを見せた。
「そのカードは・・・!?」
「あれ?私達のカードとちょっと違うような・・・」
「どうして2文字なんだ・・・?」
「・・・あんた、何者なの・・・?」
流石にシュトラが身構えた。
「山TO氏学園中等部1年2組ヒカリ・軽井沢・SKA。
そこの先輩の公認ストーカー後輩です。」
「公認した覚えはないんだけど・・・」
「それよりもあんた、どうやってそのカードを・・・!?」
「多分あなたの大好きな人と同じ方法だと思いますよ?」
「・・・あなた・・・」
「ま、私は先輩方と事を構えるつもりはありませんので。
今は仲良く泉湯王国を待ちましょう。
あそこはいいところですよ?私も4年ぶりに里帰りできます。」
ヒカリがさも当然のように5人と同じ列の席に座る。
当然ナイトメアカードの事を知っている
ライラ、ケーラ、シュトラは警戒する。
しかし、泉湯王国に到着するまで
何か行動するまでもなくティラやラモンとお菓子を食べたり
談笑したりしているだけで終わった。




