31話「こちら山TO氏放送クラブ」
1:こちら山TO氏高校放送クラブ
・昼時。
「あーあーマイテスマイテス」
スピーカーを通してでる声は少女のもの。
そしてそれはテレパシーのようにエリア内全てに響き渡った。
「今日も始まりました!山TO氏高校放送部のお昼の放送!
パーソナリティは私!マイカ・Goo部・D活!
そして今日のお相手は・・・!」
「ど、どうも・・・。」
別の声。
今度もやはり少女の声だった。
しかし声の主は正確には少女ではなかった。
「ゆ、ユイム・M・X是無ハルトで、です・・・。」
「そう!皆さんご存知我ら山TO氏高校のパラレルの星!
今までに7回タイトルを防衛し、公式試合では無敗の女王!
ユイム・M・X是無ハルトさんだぁぁぁぁぁぁっ!!」
ユイム・M・X是無ハルト。
この少女はそう呼ばれていた。
実際それに何ら間違いはない。
間違いなくこの少女のこの姿はパラレルカードと言う
全世界で熱狂されている魔法格闘技の選手であり
その世界タイトルを6回連続、1回空きがあった後に
7回目のタイトル防衛を果たしたスーパープレイヤーだ。
が、中身は違う。
中身はそのユイムに憧れている少年ライランド・円cryンである。
今から4か月前の3月に船で行われた
X是無ハルト主催会場エキシビジョンで本物のユイムと戦った際に
事故で船が沈み交換のカードの効果で
互いの肉体が入れ替わってしまった。
それからライラはユイムに成り代わって本物のユイムを探すために
この学校に入りパラレル部を設立。
同じようにユイムを探す彼女の姉キリエに隠れて独自で行動をしていた。
そう続けていく内に迎えた先週の602回目のタイトル防衛戦で
本物のユイムを見つけて彼女を縛るナイトメアカードを討ち滅ぼした。
残念ながらチェンジのカードも一緒に消してしまったため
元の姿に戻ることはなかったが無事一件落着している。
「いやあ、ついこないだもタイトル防衛おめでとうございまーす!」
「あ、ありがとうございます・・・。」
なおそのタイトルの際には最後の決着以外は一時的に戻れたので
お互い元の姿に戻れていた。
つまりその際に大暴れしていたユイムは本物のユイムである。
脚力だけを強化して爆弾の雨の中走り抜けたと思ったら
ゼロ距離で爆撃されたりしまいにはトルネイドのカードで
竜巻を乗せたスクリューパイルドライバーをされたり。
まあ、そのスクリューパイルドライバーは命中の寸前に
チェンジの効果が切れてしまったため
ユイムは自分で自分の攻撃を受けることになったのだが。
「そろそろ一学期も終わりですね!
振り返ってみてどうですか?」
「・・・えっと、3月に僕記憶喪失になっちゃったから
今までとの比較はできないんですが、
そんな僕に初めて声をかけてくれたのは同じクラスの
ティライム・KYMさんと赤羅門・ミドリュエスカラナイトさんでした。
この二人は公式試合でのタッグ戦の1戦目も担当しています。
とても息の合ったコンビネーションでたとえ僕が二人いても
勝てないと思います。
ティラさんはいつも笑顔で記憶喪失の僕をいつも気にかけてくれました。
ラモンさんはいつも落ち着いていて、たまにからかわれますがやはりいい人で・・。
最初の内はこの二人と一緒にいました。
でも食堂でケーラ・ナッ津ミLクさんがパラレル部の部員募集を
しているのを見てもう一度パラレルをやろうと思ったんです。
ケーラさんは2年前、一度昔の僕が魔力暴走事故を起こしてしまい
部員のほとんどを病院送りにしてしまった事故から
たった一人になっても決して諦めずに一人で部活の復興に向かって頑張っていました。
部員も顧問もいない中一人でもずっと練習し続けてきましたので
実力はかなりのものです。僕でも一度も勝てていません。
誰に対しても敬語で優しくて、部活のお姉さんって感じがします。
僕もみんなも頼れるパラレル部の部長さんでもあります。
その部活を復活させるための条件として僕は小さな町の大会に参加しました。
久しぶりの試合で戸惑いもありました。
その試合の際には同じクラスのシュトライクス@・イグレットワールドさんが参加していました。
彼女は記憶を失う前に僕と一番仲が良かったそうなのですが
僕はその記憶がなかったので・・・。
でも試合を通じて昔とは違う物かもしれませんが無事彼女ともまた友達になれました。
この5人で復活したパラレル部で地区大会に参加しました。
初めての団体戦で緊張しました。まだ5人しかいなかった時期なので
アンカーが複数人必要で・・・。
最終的に3回戦を突破したところで棄権してしまいましたが
それまでは皆さん頑張りましたので一度も負けていません。
その後は顧問のMM先生も本格的に参加して、中等部の新入部員が20人も
参入して一気に人数は5倍になったんです。
試合以外でもみんなでプール掃除をしたりアルバイトをしたり、
まだ4ヶ月しか経っていない今の僕のこの生活はものすごく充実しています。
全部みなさんのおかげです。本当にありがとうございます。
そして、これからもよろしくお願いします。」
「う、うううっ!感動!圧倒的感動です!
この子すごくいい人です!強いし可愛いし優しいしでああもう!結婚したいですよ!!
あ、以上!お昼の放送でした!!」
・教室。
昼休みなのでほとんどの生徒が食事をしていた。
「ふう、」
ライラが教室に戻ってくると、
「おかえりー!」
「いい放送だったよ。」
自分の机の周りでティラとラモンが食事もせずに待っててくれていた。
「二人共食べてなかったんですか?」
「えへへへ、あそこまで放送で褒められてるのに
のんきにお弁当なんて食べていられないよ~。」
「それにみんなで食べたほうが美味しいでしょう?」
「ティラさん・・・ラモンさん・・・」
「もちろん私達もいるわよ。」
肩に手が置かれた。
「シュトラさん、ケーラさん。」
後方からシュトラとケーラが来た。
ケーラだけはクラスが違うためどうやらシュトラが呼びに行っていたようだ。
「それと、ライラくん?私と君の関係は私とユイムさんに比べたら全然なんだからねッ?」
「は、はい・・・。流石にあそこまでは・・・その・・・・」
シュトラは自分の素性を知っている。
あの試合の後にライラが自ら話したのだ。
信頼できる仲間だから。
なお後で判明したことだが本物のユイムとはレズ同士の関係だったらしい。
当然ライラがユイムの姿になってからはその関係も自然消滅していて
そこへ記憶喪失を装う自分が来たのだから心中穏やかではなかっただろう。
ちなみに本物のユイムを発見した今現在においても
運命が邪魔をしているのかまだ会えても話せてもいないらしい。
そんなんだから向こうでユイムが自分の体を使っているとは言え
他の少女を相手に性的に遊んでいたと言う事は恐ろしくて話せない。
以前メールで聞いたが
「え?嫌だなぁ。僕は今でもシュトラが本命だよ?
ただ元の姿に戻るまではつまみ食いしてるだけだよ。
あ、でも男の子の一番はライラくんだからね。
結婚とかはまだ分からないけど。」
と返ってきた。とりあえずユイムの本命が今でもシュトラであるということだけを
本人に伝えたところ、
「・・・ひゃうう・・・///////////」
今まで見たこともないような乙女な顔をして悶え始めた。
お隣のケーラには自分の素性を話していない。
だけどどこか気付いているような節があったりする。
流石に自分がライラだという事まではわからないと思うが。
自分とほぼ同等以上の実力を持ち優秀で
自分が本物のユイムではないということにも気付きかけているなど
敵ではないにせよ恐ろしい相手ではある。
・X是無ハルト邸。
「ところであなた、」
「はい、なんですか?」
ユイムの姉であるキリエ・R・X是無ハルトが紅茶を飲みながら口を開いた。
「今日の昼間の放送、ケーラさんから録音テープを貰いましたが
私のことは全く話してませんでしたよね?」
「え、えっと、部活の話でしたし・・・」
「そうですわね。あの部活はあなたにとってはハーレム同然。
そこに私にような卑しい年上の女など含みたくありませんものね。」
「え、いや、あの、キリエさん?」
「ふんですわ。それよりユイムの方はちゃんとやれているんですの?
私から連絡しても全然返事が来なくて。」
「あ、はい。ユイムさんの方からは一度しかありませんでしたが
僕の方からは何度かメールしてその返事もくれています。」
「・・・あの子も私よりあなたですか。
全くみんなして私を蔑ろにするんですから。」
完全にすねてしまった。
とは言え自分はともかくユイムはナイトメアカードの力に操られていたとは言え
その手で彼女の両親とそしてキリエを襲ってしまった。
その結果両親は死に、キリエは両腕を失った。
少なからず後ろめたい気持ちはあるだろう。
だから気楽な会話が出来ないのではないだろうか。
まあ、だからと言ってあまり自分の体で女遊びはほどほどにして欲しいものだが。
一度旧帝都都知事まで動くほどの色事を起こしたらしいし。
それで2億円もの賠償金が請求されたこともあった。
今はライラの義妹であるリイラと一緒に暮らしていて
しっかり行動を見張られているようだからそこまでの大事にはならない・・・はず。
けど、確かあの請求書もそのリイラが八つ当たりで
X是無ハルトに着せたような気がする。
「・・・けどいろんなことがありましたね。」
「全くですわ。これでまだあなたは高校生活の
1年の1学期しか終えていないんですのよ。
あと8学期一体何が起きるのか想像もできませんわ。
せめて夏休みの間くらいはゆっくりしたい気分ですわ。」
「・・・夏休み、か。」
カレンダーを見る。
自分がこの姿でこの家に拾われてそろそろ4か月。
季節はそろそろ夏真っ盛りだ。




