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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
1章:交差する拳
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3話「嵐の転入先」

3:嵐の転入先


・X是無ハルトの家に拾われて一週間。

 ライラはついにユイムとして学校に行くことになった。

逸早く学校には事故で記憶喪失になったと伝えてあるため

問題にはならなかった。

「……改めてあまり慣れないなぁ、こう言うの」

姿見にはフリフリの制服を着た自分ユイムがいる。

「念のため言っておきますが外ではあまり吹聴しないように」

「あまりどころかちゃんと誰にも言いませんよ。

それにユイムさんが通っていた学校って女子高ですよね?

バレたら大変なことになるのでは……?」

「まあ、男が女に化けて入学していたらそりゃそうでしょうね。

でもあなたなら大丈夫でしょう。

いくらカードが魔法みたいといえどチェンジのカードは

半ばナイトメアカードに突っ込んだ珍しいカード。

どうしてあの子が持っていたかは分かりませんが

多くの人間は空想上の存在としか見ていませんわ。

だから話そうともそう易易と信じてしまう人はいないでしょう」

「確かに。それもそうですね」

「さあ、送り迎えのスカイカーが既に来ていますわ。

あなたがコールのカードを使えばどこへでも飛んできますわ。行ってらっしゃい」

「えっとキリエさんは?」

「私はまだ義手が完成するまでは休学ですわ。

一応同じ学校ですのでちゃんと妹を振る舞いなさい」

「はい。では行ってきます」

フリフリの制服を着てスカートを翻しスカイカーに乗り込む。

鞄には申告書と念のため数枚のカード。

キリエからは無理にユイムとして振舞う必要がなく、

自分の好きにやればいいとのお墨付きがある。

つまりユイムの過去をなぞる必要がないそうだ。

尤も記憶喪失なのだからなぞれるほうがおかしいというものだが。

「あ、もう着いた」

家を出てわずか5分。

数十キロの道程をたった5分で移動した。

自分がかつて使っていたスカイカーでは1時間はかかるだろう。

「お嬢様ってすごいんだな。」

スカイカーから降りるとスカイカーは空高く去って行き、

それを見送ってからいざ正面に向き直る。

「……で、でっかい」

街1つ分の面積を誇る名門女子校・山TO氏やまとうじ

小中高一貫校であり所属生徒は1万人を超える。

ユイムは高等部1年8組所属だそうだ。

だから自分もそこに行かなかればならない。

しかし当然場所なんて分からない。

キリエからは最初に正面玄関入ってすぐの事務室に行くように言われている。

だから指示に従って正面玄関へ向かうのだが。

「……えっと、」

いつの間にか両手を二人の少女に掴まれていた。

「こんにちはユイムちゃん」

「久しぶりだね」

「えっと、あの……」

「なんてね。知ってるよ、記憶喪失だって」

「事務室に行くんでしょう?案内するよ」

「ご、ごめん」

「あ、あたしの名前分かる……かな?」

「……ごめんなさい」

「だよね、あはは。あたしはティライム・KYM。ティラって呼んでね」

「私は赤羅門・ミドリュエスカラナイト。ラモンって呼んでよ」

さすが名門校。名前が国際的だ。

現代においては

漢字・平仮名・カタカナ・アルファベットが混ざった名前は当たり前だ。

しかしまだ田舎の方ではどれか1つに統一された名前の人間は多い。

300年前に起きたナイトメアカードによる2回目の戦争で

国と言う仕切りはほぼなくなったも同然だった。

100年前に起きた聖騎士戦争では中心地である旧イギリスを

中心に地球の大地は縮退されほぼ全ての国土は旧EUに集中した。

ほぼ全ての人種のDNAが1つになった新人類が誕生して90年弱。

全人口の9割は新人類となっていて名前が国際的になっている。

だが残り1割はまだかつての○国人と言う仕組みの中にいる。

「さ、ここが事務室だよ」

「ありがとうございます。ティラさん、ラモンさん」

「ううん」

「クラス同じだからまた後で」

二人は先に教室へ向かった。

それを見届けてから事務室に入った。

「失礼します」

「どうぞ」

「・・・あれ?」

正面。机でパソコンをいじる女教師。

どこかで見覚えがあった。

「久しぶり……それともはじめましてがいいかしら? ユイム・M・X是無ハルトさん」

「……MMさん……」

「あら? 私のことは覚えてるの?」

「い、いえ、その、名前が出てきただけで……」

その女性・MMはライラの従姉だった。

13年上で姉のような存在だった。

しかし2年前に遠くへ引っ越してしまった。

まさかそのMMとここで会えるとは思っていなかった。

しかしまだ再会はしていない。

「まず色々と不幸だったわね。

詳しくは知らないけれどご両親の事とかお姉さまの事とか」

「は、はい……。僕は全然分からないんですけれど……」

「そうだったわね。…………本当に何も覚えてないの?と言うかどこまで記憶がないの?」

「えっと、ユイム・M・X是無ハルトとしての記憶は一切……」

嘘は言っていない。断じてこの言は正しいはずだ。

「…………そっか。それでこんなしおらしくなっちゃったのね」

「あの、昔の僕って……」

「そりゃもういい意味でも悪い意味でも手がつけられなかったわ。

成績はあなたのお姉さまの次に高くて1万人中2位。

でも可愛げがなかったわ。無愛想で友達なんて一人もいない。

唯一の趣味はパラレルカード。

それも中等部に入部した際には部員全員を半殺しにしちゃって大変だったわ」

「は、はぁ……」

一体どれだけ凄まじかったんだろうか。

「でもティラさんやラモンさんは?ここまで案内してくれたんですが」

「……あの子達はね。色々あったのよ。

詳しくは私から言うのはまずいから打ち解けてから本人達に聞いてね」

「……分かりました」

「くす、」

「どうしました?」

「いやいや、最初は唖然としていたから分からなかったけど

今のあなたやけに親戚の子に似ているなぁって」

「え?」

「2年前まで一緒だったんだけどね。

……おっと、いきなり失礼か。ごめんね。

これこの学校の地図データ。P3にデータを入れておきたいんだけど……」

「あ、その、実は……」

P3とは携帯端末の事だが当然パスワードが設定されていて

そのパスワードをライラはもちろんキリエも知らないため

起動が出来ないのだ。

「パスワード、わからなくて」

「……そっか。そういうのも忘れちゃうんだ。じゃ、少し古いけど紙の地図を渡すわね」

「はい、ありがとうございます」

それからMMの案内で教室へと向かう。

「し、失礼しまーす……」

こそこそしながら中に入る。

色々な視線があって胃が痛い。

「ユイムちゃん、こっちこっちー」

ティラ、ラモンが手を振る。

鞄を抱いてそちらに向かう。

「迷わず来れたんだね」

「うん、MMさんが教えてくれたから……」

「MM先生? へ、へえ、そりゃこのざわめきも分かるや」

「え、どういうこと?」

「ユイムちゃん覚えてないだろうかもだけど

前まではMM先生と一触即発って関係だったんだよ?」

「え、そんなに僕ひどい子だったの……?」

「不良というわけではないんだけれどね。

むしろその不良を脅すために校庭に直径5メートルの穴をいくつも開けちゃったり。

その子を掴んで全力で投げ飛ばした先が校長室だったりで」

「うわあ……」

憧れの少女の尋常じゃないアグレッシブさに開いた口が塞がらなかった。

「って言うかパラレルカードって政府から指定されたTPO以外じゃ

使っちゃいけないんじゃなかったっけ?特にそう言う攻撃力のあるカードって……」

「そうなの。だから余計にMM先生と対立が激しくて。

ユイムちゃんて結構短気でさ。

あ、もしかしてこういうこと言っちゃったら今のユイムちゃんでも……」

「いやいやいやいや! そんなこと僕しないよ!」

「そ、そう? よかった~」

「はーい、そろそろ授業よ。みんな、席について」

そこで噂のMMがやってきた。

……本当は廊下で様子を見ていたのだが。

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