28話「悪夢の始まり」
28:悪夢の始まり
・ライラの前に現れたのは風行剣人を名乗る青年だった。
「聖騎士・・・まさかユイムさんを・・・!」
「いや、俺は他の・・いまの聖騎士に知り合いは多くない。
それにいまの聖騎士とは少し違うんでな。
それよりそいつもお前もナイトメアカードを使っているな?
どうしてあのカードを使った?
今の時代パラレルカードというものがあるはずだ。」
「・・・僕はこの人を守るために。
そしてこの人は自分を守るために使ったんです。
この人はナイトメアカードに呑み込まれて
多くの犠牲者を出してしまった。
家族にまで手を出して死なせてしまった。
それをいつまでも後悔している。
僕は、喩え世界から悪と見なされようともこの人を救いたい!」
「・・・いいだろう。
世界にケンカを売る奴は嫌いじゃない。
だがお前達はまずナイトメアカードについて知る必要がある。
ナイトメアカードは確かにかつて凄惨なる戦争の道具として使われた。
だが、最初は違う。タロットカードのようなものだった。
世界中にばらまかれるようなこともない、
ただ個人で所有していた無数のカード。
だが、それを一人の男が盗み去り世界にばら蒔いた。
人類の歴史に魔法という概念を与えて進化させるために。」
「・・・本来平和的な存在だったということですか・・・?」
「そうだ。そしてそれはどんなものでもそうだ。
よく言うだろう?物に罪はないと。
所詮使う人間次第でどんなものでも色を変える。
ナイトメアカードも旧時代の殺戮兵器としての概念が強すぎる現在では
難しいかもしれないが、使うものの心次第では
何だって出来るだろう。」
そう言って剣人は1枚のカードを手渡す。
「これは・・・?」
「それは希望のカードだ。
お前が真に望むのであれば自分でカードを作ることが出来るカード。
本来ナイトメアカードはそのカードによって作られた。
かつては今のパラレルほどではないにせよ、
ナイトメアカードも人類の発展に間違いなく加担していたんだ。
・・・最近はそれを面白く見ない連中が居るようだがな。」
剣人が振り向く。
と、この廃墟を囲むように先程の怪物が無数にいた。
「さっきの・・・!」
「こいつらはブランチ。人間の進化を望まない存在だ。
例えば自動車はそりゃ事故も起こすが基本的に
人間の文明を文字通り前進させた存在だが、
その自動車がまだ人間が仏像だの青銅器だの作っていた時代に
持ち込まれたら間違いなく混乱や戦乱を呼び起こすのと同じように
普及させてこそ文明となる物を敢えて普及させず
少数だけばらまいて戦いを呼び人類を自滅させるのが目的らしい。
俺達はかつてこいつらと戦ったんだ。
それが真の聖騎士戦争なんだ!」
「ブランチ・・・!」
「お前の名前は!?」
「ライランド・円cryンです!」
「よし、ライランド!お前の可能性を見せてみろ!」
「可能性・・・。」
手に握るフューチャーのカードを見る。
「破滅を・・・」
「!?」
脳裏に何者かの声が響く。
「破滅・・・」
ライラが呟くとフューチャーのカードが輝く。
「お、おい!ライランド!?」
「破滅させる・・・僕は、全てを・・・、
全ての悲劇を破滅させる!!」
そしてフューチャーのカードは破滅のカードへと変貌した。
「破滅・行使!!」
そしてスライトのカードが輝くと
ライラの、ユイムの肉体に悪魔のような甲冑とライフルが装備された。
「・・・対象を傷つけるためだけの武器・銃。
俺の時代にすらタブーとされていた武器でお前は何をするつもりなんだ・・・?」
「はあっ!!」
引き金を引き、銃口から魔力の弾丸が発射される。
弾丸は空中で無数に拡散して前方広範囲のブランチに命中。
瞬く間にブランチが消滅していく。
全方位から迫り来るブランチも
その手が届く距離より遥か前の時点で撃ち抜かれて消滅していく。
「はああああああああああっ!!」
今度は頭上の空高くを撃つと上空で弾丸が拡散して
まるで雨のように銃弾が降り注ぎ全方位のブランチを一斉に消し飛ばした。
「・・・出来るはずだ。」
そしてライラはそれを今度は自らに向けて発砲した。
「!?」
当然銃弾がその胸を貫く。
だが、結果は正反対だった。
先程まで気力で持ちこたえていただけで
少しでも気を抜けば倒れてしまいそのまま永眠してしまえるほどの
重傷が瞬く間に治癒されていく。
「自分の怪我の破滅を願ったというのか・・・!?」
「・・・ユイムさんも・・・」
今度はユイムに銃口を向ける。
と、
「そうはさせぬぞ・・・」
ユイムの、ライラの体から4枚のナイトメアカードが浮き上がり
バレルロールしているように宙を舞い始めた。
「お前を破滅させてやるぞ!」
「無駄だ。」
ライラが4枚を撃ち抜く。
4枚のカードはそれで消滅した。
が、すぐに再生した。
「!?そんな・・・」
「ナイトメアカードは怨嗟の象徴。
貴様もこの娘も自分への憎しみ故に
ナイトメアカードを手に取った。
人間の憎しみは絶対に消えることはない・・・!」
「・・・それでも僕は、戦い続けるまでだ。
光あるから闇があり闇があるからこそ光があるように、
人に憎しみがあるならば慈しみの心もあるはずだ!」
発砲。再びカードが消滅する。
そして再生される。
が、再生されたカードは全てパラレルカードに戻っていた。
そしてユイムの、ライラの体に落ちた。
「ユイムさん!」
発砲し、ユイムの、ライラの体に命中すると
先程と同じように傷が治っていく。
「・・・その様子じゃ俺が何か言うまでもないようだな。」
「風行さん・・・。」
「剣人でいいよ。そこまで年違わないだろ?」
「・・・いやあなた確か数百年以上前の人ですよね?」
「細けぇことはいいの!心はまだ17歳のつもりなんだからよ!
それよりそろそろ来るぜ。」
「え?」
ライラがスライトのカードを解除して振り向くと
1台のスカイカーが飛来した。
「ライラくん!ユイムさん!」
「シュトラさん!?」
「・・・だけじゃありませんわよ。」
さらに車内にはキリエとリイラもいた。
「リイラちゃんの怪我が・・・!」
「え、リイラが!?」
「とにかく乗って!病院まで行くから!」
「は、はい!・・・ユイムさんも。」
ライラがユイムを背負ってスカイカーに乗った。
「・・・」
「いいのか?この800年一度も他人と干渉しなかったというのに。」
声。剣人の懐にある1枚のカードから。
「いいんだよキマイラ。あいつは風を持ってる。
きっと俺がしたように、いやそれ以上に世界に風を吹かせてくれるさ。」
剣人が去っていったスカイカーに笑みをこぼした。




