27話「真実」
27:真実
・ライラがひたすら先に進む。
少しでも力を抜けば全身を激痛が襲い、
しばらくは立てなくなってしまうだろう。
しかし今はそんなことはどうでもいい。
絶対に救いたい人がこの先で自分を待ち続けている。
そのために自分の姉も妹も身を呈してこの道をこじ開けてくれた。
「・・・ここは・・・?」
そしてたどり着いた場所はどこかの宮殿跡。
既に崩壊してから数百年以上は経過しているであろう古い廃墟であった。
「・・・これは、」
床にはかなり古い魔法陣のようなものがあった。
そこにユイムが、ライラの体が置かれていた。
「ユイムさん!」
慌てて駆け寄り魔法陣の中に入ってしまった。
直後。
・それは今から4ヶ月近く前。
ユイムはシュトラと付き合っていた。
周りには親友のように見えていただろうし
人前ではそう演じていた。
だが実際は完全に恋人同士だった。
スカイカーセックスなど毎日のように。
しかしある日同じスカイカーをキリエが利用して
その跡を目撃してしまった。
試しにカメラを置いてみた。
そしたらその場面を録画してしまった。
X是無ハルトの次女とあるものが何たることかと
両親はユイムをきつく叱った。
さらにこれ以上間違った道に行かないように
許嫁を用意した。
16歳の誕生日にはその許嫁と婚約をするように言われた。
「・・・もう時間がないじゃない。」
焦燥を超えて絶望。絶望を超えて諦観。
涙も笑いも出ずただ佇んだ。
そんな時だった。
P3にメールが届いた。
「・・・ナイトメアカードのつくり方・・・?」
パラレルカードを殺傷設定にして何度も使用すれば
パラレルカードのセキュリティが歪み本来の姿である
ナイトメアカードになる。
そう書かれてあった。
その上添付画像には3枚のナイトメアカードが付いていた。
飛鷹、転移、収納の3枚。
それぞれパラレルならば鷲、扉、箱と表記される。
「・・・そうだ。全部壊れればいいんだ。
全部壊してしまえばいい・・・!
僕を認めないものは誰であろうと・・・!!」
そしてあの日。
X是無ハルト主催海上エキシビジョン。
「・・・壊せ・・・殺せ・・・お前の悪夢を解き放つのだ・・・・」
「・・・・ぐっ・・・!!」
ナイトメアカードを使って以来頭の中に響くようになってしまった声。
その声に誘われるようにまた凶刃を振るってしまう。
と、また例のメールが届いた。
今度もまた添付画像のカードが3枚。
交換、撃破、野獣の3枚。
「・・・・・」
すべてをダウンロードしようとしたが試合のために
キリエが自分を呼びに来たため最後の1枚はダウンロードできなかった。
「は、初めまして!僕ライランド・円cryンって言います!
今日はお手合わせ願えて光栄です!あなたのファンです!」
「・・・そう。ならいい時間にしましょう。」
男に興味はなかった。
けど、この少年は使えるかもしれない。
この少年相手にわざと劣勢になって油断を誘ってから
ナイトメアカードで一気にこの船を沈める。
そしてチェンジのカードでこの少年と体を入れ替われば・・・!
しかし、結果は思いもよらないものになった。
試合開始すぐに嵐のカードで注意を引かれ
一瞬の隙を突かれて背後に回りこまれコブラツイストで撃破されてしまった。
寝不足だということもあって17秒しか持たなかった。
「・・・・はっ!」
意識が戻ると自分を心配そうに眺める少年。
「が、ガイザレス・行使!!」
そして海をも引き裂く一撃で船を真っ二つにした。
そしてボックスのカードで少年を一時的にカードの中に収納。
再びクラッシュのカードで船に致命の一撃を叩き込んだ。
そのクラッシュの一撃が直撃して両親は消し飛んだ。
「ユイム!待ちなさい!!」
流石に現役パラレル選手であったキリエはこの2度の攻撃を
回避してユイムを追いかけてきた。
「お姉ちゃん・・・・ぐっ!!」
頭痛がひどくなる。
気付いたら空を飛んでいた。
そのまま沈みゆく船から脱出する。
「待ちなさい!!」
それをキリエがスカイカーで追いかけてきた。
「・・・・・」
ゆっくりと振り返る。
その目は生きた人間のものではなかった。
そして詠唱なしにガイザレスとクラッシュのカードを同時に発動。
「!?」
回避しきれずにスカイカーは大爆発。
キリエ本人は何とか助かったが両腕が消し飛び、
そのまま海に落下した。
「・・・今、僕何をしたんだ・・・?」
頭痛。
記憶がどうにも怪しい。
とにかくボックスから少年を出す。
収納している間に少年は気絶していて
その上彼の記憶が記録として彼のP3に記載された。
「・・・もう戻れない。」
チェンジを発動し、少年と体を入れ替えた。
チェンジ以外のカードは持ち主の精神が変わったことで
少年の体になったユイムの所有権が移ったが
チェンジそのものは少年の意識が宿った自分の体が握ったままだった。
「・・・逃げなきゃ・・・」
チェンジを元のパラレルカードに戻して急いでその場を去った。
P3に記載された彼の記憶から名前や住所などを記憶していく。
「・・・一応確認。」
ズボンとパンツをめくり中身を確認する。
今まで見たことないが生えているのだから
きっとこの少年は男だろう。
これからは女遊びをし放題だ。
この少年の地元に行き、成り代わって生活を送る。
しかし勘のいい友人達や常日頃から一緒にいた義妹からは
怪しまれることが多くなった。
特に佐野升子と言う少女には直ぐに見破られた。
脅そうと思ったら逆に脅された。
「私ね、ライラが好きだったの。
でもあいつはあなたの事しか目にない。
正直あなたなんて死ねばいいと思う。最低すぎるもの。
でも最低なあなたでも1つだけ条件を飲んでくれれば黙っててあげるわ。」
それから条件を飲み、交渉は成立した。
この3ヶ月。
一切パラレルとは無関係な日々を送ることにした。
記録から見た彼の戦術は余りにも自分とは慣れすぎていた。
これは真似できない。
それから部屋にあった録画ディスクやノートから
どれだけこの少年が自分のことを好きなのかも知ってしまった。
そして、恐らく誰にも言っていない彼の最大の秘密も。
「・・・」
流石に罪悪感が湧いてきた。
あれ以来ナイトメアカードは使っていないから
意識も正常通りに戻ってきている。
だからこの手で両親を殺し姉を襲ったと言う事実が胸を苦しめてきた。
「・・・戻ってみようかな。」
十分今の生活は満喫した。
もう罰を受けてもいい時間だろう。
しかし何故か体がそれを許さなかった。
「我が人形よ・・・その支配から逃れることは許さぬぞ・・・」
「・・・・・っっ!!!」
また、あの声だ。
あの声が脳に響くと何も考えられなくなる。
夜な夜な街に赴き魔力の高い人間を片っ端から
襲い込んでその魔力を命ごと吸っていく。
だが、まだ全然足りない。
そんな時だ。
義妹から今度のタイトルに出るよう言われたのは。
最初は断ろうと思った。
何せ姉がまだ生きていることは知っていた。
そしてタイトル戦である以上姉が出ることは明らかだ。
「ならばその姉を喰らうがいい・・・!」
ちょうどいいと思った。
何よりも自分勝手だが心中の相手に
これほどふさわしい相手もいないだろう。
「・・・出来ればあと一度だけでもシュトラに会いたかったなぁ・・・」
しかし対戦相手は姉ではなかった。
この体の本来の持ち主であるライランド・円cryンだった。
あの少年が自分の体を使ってまさかパラレルをやるとは思ってなかった。
けど好都合だった。
使っているのがあの少年でもその体は自分のもの。
これでどういう結果に転がろうとも自分の勝利となるし
魔力も手に入る。
だが、あの少年もナイトメアカードを使った。
あの時取り損なった最後のカードを。
「・・・ここでこの少年に殺されるなら本望だろう。」
まさかジャーマンスープレックスで仕留められるとは思わなかったが。
・「・・・・はっ!!!」
ライラが意識を取り戻した。
「・・・今のは、ユイムさんの記憶・・・!?」
P3を見る。時間は1秒も経っていない。
しかし記憶にあったのと同じように今見たユイムの記憶が
自分のP3に記録として残されていた。
「・・・やはり、ユイムさんを操っていた奴がいる・・・!」
「ああ、そうだ。そしてそいつはすぐ近くにいる。」
声。
振り向けばエントランスに一人の青年がいた。
「あなたは・・・まさか黒幕か!?」
「違う。お前の知る言葉で言えば聖騎士。
戦争よりも前からこの地に縛られている現代最古の聖騎士、
風行剣人だ。」
その青年がまっすぐ自分の目を見ていた。




