26話「悪夢への片道切符」
26:悪夢への片道切符
・意識のないまままるで見えない棺桶に入れられそのまま
スカイカーのごとく飛んでいくユイム。
「くっ!室内ならともかく屋外では私のブルーも効果が薄い・・・!」
必死に追いかけるキリエだったが後ろを追いかけるのがやっとだった。
と、そこへ。
「乗りなさい!」
1台のスカイカー。
リイラと傷だらけのライラが乗っていた。
「・・・助かりますわ。」
キリエが飛び乗ってそのままスカイカーがユイムを追う。
「で、どうするのよあれ!」
「このまま後を追えばきっとユイムにナイトメアカードを
渡した黒幕の居場所が分かるはずですわ。」
タイトル戦を終えたばかりの
夜空を仰向けになった少女とスカイカーが駆
け抜けた。
その車内。
「はあ・・・・はあ・・・・」
「容態は?」
「全身の血管が魔力で破裂しそうよ。
いえ、もう既に一部は壊れているかもしれない・・・」
二人がライラを見下ろす。
治療用カードを使っても止まらない出血。
ナイトメアカードの負担がパラレルカードの効力を上回っているのだ。
「・・・あの様子ではこのカードを使うのは初めてじゃないようね。
という事はもしやバッテリー切れとやらで映らなかった
あの3回戦でも使っていた可能性があるということ・・・。
一体どこからナイトメアカードを・・・。」
「?あなた聞いてないの?」
「何をですか?」
「お兄ちゃんではなくユイムのP3に
ナイトメアカードが添付されたメールが届いてたって。私お兄ちゃんから聞いたんだけど。」
「・・・なんですって・・・!?」
そう言えばこの少年がオープンのカードを購入したらしいことは
あのプール掃除の時にケーラから聞いた。
それでその後何もなかったから
ただ用意しておいただけだと思っていたがそれは間違いだった。
あの時既にユイムのP3のロックを解除して中身を見ていたのだとしたら・・・。
だとしたらこの少年は今まで自分に隠れてユイムに関する情報を収集していたのではないか。
それはつまりこの少年は自分から離反して独自に行動をしていたということ。
この少年の不断の言動からして自分に対して反意を含んでいるというわけではないだろう。
ならばどうして彼がそのような行動に出たのか。
・・・考えるまでもない。
この少年はいつだってユイムのことだけを考えていた。
今までの自分の言動から自分がユイムを見つけたら始末するということも
マサムネがユイムを見つけてもユイムは処罰されるということは明白。
ならば、こういう手段があるのではないか?
「・・・本物のユイムを先に見つけ出してそのうえで
自分が本当に身代わりになって処罰を受けようとしていた・・・?」
「・・・この馬鹿兄貴ならそう考えてもおかしくないわよ。
本当にこの2年間はユイムのことしか考えてなかったんだもの。
だからさっきの試合でビーストのカードを使ってもうほとんどカードが使えない状態に
ユイムの体を壊して、それから自分の体をあそこまで重点的に破壊。
ユイムに何も抵抗できない状態にさせてから
チェンジのカードを使って自分だけが罪をかぶる。
・・・きっとこの人はあなたに保護されてからの3か月間ずっとその機会を狙っていたのでしょうね。」
「・・・・・。」
前方を見やる。
タイトル会場からはかなり離れてしまった。
段々とかつて聖騎士戦争の中心地だった場所に近付いている気がする。
「・・・とりあえずマサムネさんに連絡しなくては・・・」
「もっと他にもカードハンターや聖騎士を集めた方がいいんじゃない?
ナイトメアカードを使うのがユイムだけとは限らないわよ。」
「・・・そうですわね。」
キリエが専用連絡用P3を出してコールした。
が、電波がつながらない。
「・・・妨害電波。と言うより電波妨害魔術かしら。」
「競技用に調整されたパラレルとは違って
ナイトメアカードは陣地を超越した魔術と言っても過言ではない存在。
私のブルーを容易く破ったのもきっとナイトメアカードの力・・・」
「・・・私達二人だけでその魔術師達を相手にしないといけない状況になったてわけね。」
キリエとリイラが顔を見合わせる。
と、スカイカーが止まった。
見ればユイムも停止していた。
そしてその周囲には異形の怪物達が蠢いていた。
「何よあれは・・・」
「聖騎士戦争時代には人ならざる者までもが
存在していて聖騎士達は最初はナイトメアカードを用いて
これらと戦っていたという説がありますわ。
きっとその説が正史なのでしょうね・・・」
二人がスカイカーから降りてカードを構える。
「ファルコン・解放!」
キリエのカードが発動し、カードから巨大な隼が出現して
怪物達に向かっていく。
「ストリーム・行使!!」
リイラが魔力ビームを発射して怪物達を薙ぎ払っていく。
しかしやはり怪物達には大したダメージではないようで
1体も倒せずすぐに何事もなかったように立ち上がってこちらに向かってくる。
「・・・まあ、ナイトメアカードで倒してきた怪物達を
パラレルでそう簡単に倒せるわけありませんわよね。」
「なら、その餌にでもなってあげる?」
「あら?あなたはそれがお望みかしら?」
「まさか。」
不敵に笑い二人の戦乙女が怪物達に向かっていく。
・一方。
そこへ近付く一台のスカイカーがあった。
「・・・ユイムさん・・・ライラ君・・・」
シュトラが乗ったスカイカーだ。
自分に何が出来るかなんて分からないがそれでも
黙ってテレビの前で待っていることなんて出来なかった。
とりあえず一度部室に行って可能な限りのカードを積んで
ライラのP3の反応を追いかける。
途中から凄まじいスピード(=スカイカー)になったからか
自分もスカイタクシーを止めてそれで追いかけることにした。
なお運賃は部に請求しておいた。
ユイムは当然ながらもはやライラもただの器じゃない。
普通に個人として好きになりかけている。
それがやっと芽生えた異性への感情なのか
それとも友人としての感情なのかはまだ分からない。
ただ、このままだと何もかも手遅れになってしまうような気がして・・・。
「・・・そんなのはいやなんだから・・・!」
そうしてスカイカーを飛ばしていると突然ライラのP3の反応が途絶えた。
「え?ど、どうしたの・・・?」
そしてほぼ同時にそのスカイカーを囲むように怪物達が出現した。
「な、なによこれ・・・!何かのカード・・・!?
と、ともかく!邪魔をするのなら倒すしかない!
グリップ・行使!」
カードの効果で握力を強化して怪物に向かっていく。
怪物の手をつかんで全力で投げ飛ばす。
「こう見えてもね!ライラくんに合わせるために柔道習ったんだからね!」
近くにあった大木を引き抜いてそれで次々と薙ぎ払っていく。
純粋なる馬鹿力の前に怪物達も命が尽きて消えていく。
「乙女を舐めんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
文字通り怪物達をちぎっては投げ、ちぎっては投げを
していきながら先へと進んでいくシュトラ。
「・・・こっちは手を出すまでもないな。」
それを遠くから見て一言。
・どこからか爆音のようなけたたましい音が鳴り響く。
「・・・・うう、」
ライラが目を開けた。
「・・・ここは・・・・?
そうだ!ユイムさんは!?」
見ればスカイカーの中だった。
慌てて外に出ると異形の怪物をキリエとリイラが相手にしていた。
「あら、ようやくお目覚めかしら・・・」
いつものようにキリエが口を開く。
しかし明らかに余裕がなさそうな声色だった。
見れば脇腹の辺りから出血していた。
「キリエさん!」
「いいからあんたは先に行きなさいよ!」
と、怪物の1体をジャイアントスウィングしながらリイラが言う。
「リイラ・・・・」
「この先にユイムがいる!
でも明らかに普通じゃない!
もう一度あんたが助けに行きなさいよ!」
「・・・ありがとう!」
ライラが走り出す。
その背中を見送りながらリイラが息をこぼす。
「・・・後は時間を稼げればいいだけね。」
「ご苦労さま。無事生きて帰れたらいい紅茶をお出ししますわ。」
「・・・それは、いい話ね。」
直後、キリエの両腕の義手が砕け
リイラはドバっと口から大量の血を吐いた。




