19話「拝啓ライラ様」
19:拝啓ライラ様
・ある日のこと。
平日は全部部活に費やして
帰ってくるのも夜に近い日々を送るライラ。
「ん、朝か。」
前日の疲労を一切感じさせない朝だった。
P3に届いていたメールを見る。
MMから部員全員に一斉に送られたものだ。
<他校との交流試合が決まったわ。
相手は旧帝都にある萬家高校の
パラレル部、通称:チーム風よ。
日時は今度の日曜日。
公式ルールで形式は公式大会と一緒。
タッグ2回、シングル3回。
私は今日出張のため部活にはいけないのでよろしく。>
とのことだ。
旧帝都ならばかつて自分が住んでいた村に近い。
もしかしたら知り合いと会ってしまうかもしれない。
当然向こうは気付かないだろうが。
「・・・さて、そろそろ準備しないと。
今日から公式形式を組み立てて練習だ。」
制服に着替え居間へと向かう。
「あれ?お姉さまは?」
「はい、キリエお嬢様は今朝早くから病院へ向かいました。
両腕の検査があるとのことです。
お帰りは昼過ぎとのことなのでユイムお嬢様は
このまま平常通り学校に行って欲しいとのことです。」
「そうなんだ、ありがとうございます。」
用意された朝食を食べていると別のメイドが1枚の手紙を持ってやってきた。
「ユイムお嬢様。こちらが郵便受けに入っていました。」
「手紙?これって僕が開けてもいいんですか?」
「はい。」
「・・・どれどれ。」
食事をしながら封を開ける。
「・・・・え!?」
・学校。
「え・・・?ライラくん宛?」
人気のないところに呼んだシュトラに話す。
「そうなんだ。これ。」
ライラが手紙を渡す。
<拝啓、ライランド・円cryン様。
人の嫁をNTRした挙句我が家宝をいくつも
破損しましたあなたには慰謝料と弁償料として2億円を支払って頂きます。
妹様よりこちらの住所に送って欲しいと承りました。
近日中にお支払いをよろしくお願いします。>
「・・・あなた昔何していたの?」
「し、知らないよ!僕こんなことしてないよ・・・。
僕ユイムさん一筋だし。」
「・・・その割にはまじまじと人の筋を見ていたじゃないの。」
「・・・・う、あれは、その、性というもので・・・。」
「で、どうするの?2億ってX是無ハルトなら余裕で払えるんじゃないの?」
「でも、僕が勝手に決めるわけにはいかないし
キリエさんが帰ってきてからじゃないと決められないよ・・・。」
「・・・それにイタズラって線もあるのか。
ところであなた妹なんていたの?」
「あ、はい。義理ですけど。
この前タイトル戦でキリエさんと戦った子がそうです。」
「ごめん、それあの試合の後帰ってすぐ寝ちゃったから見てないや。
でも、ライラくんからしたら心穏やかじゃなかったんじゃないの?
今の姉と昔の妹の対決なんだから。」
「どっちも後から出来た姉妹だけどね。」
「・・・とにかくせっかく相談してくれてなんだけど、
私じゃ助けになれそうにないよ。」
「だよね、ごめんなさい。」
・放課後。
部室。
完全に忘れかけていたが交流試合が決まった。
ケーラの指揮でダイヤが決まっていく。
まず、タッグ1戦目は大会と同じように
ティラ&ラモンのタッグ。
タッグ2戦目は新入生の
マリナ・Bラッド・ベヒジュティーとマリア・Cラー・三千世界の二人。
シングル1戦目はシュトラ、2戦目はケーラ。
そしてラストにユイム(ライラ)。
「このつもりで行きたいのですが何か意見のある方はいますか?」
ケーラが他のメンバーを見やる。
中等部メンバーはもちろん高等部メンバーも異論はなかった。
「ではこれから補欠メンバーを決めます。
タッグ補欠とシングル補欠をそれぞれ1組ずつ計3人を
中等部の中から決めたいと思います。
あみだくじを作ったので阿弥陀を1本ずつ選んで
対戦相手を決めてください。
シングル補欠は最後まで残った一人に決めたいと思います。」
ケーラがデジタルボードを出すとすぐに行列が出来た。
「ユイムちゃん、どうかしたの?元気なさげだよ?」
「え?そ、そうかな?」
「最近のユイムちゃんはすぐ顔に出るからね。」
「そ、そうなのかな・・・。
でも、何でもないよ。と言うかちょっと緊張してるよ。
交流試合なんて初めてだからさ。」
「にゃははは。何言ってるのユイムちゃん。」
「そうだよ、公式大会に何度も出ておいてそれは・・・くくく、」
なんだかすごい笑われてしまった。
・夜。
既に帰っていたキリエに例の手紙を見せた。
「・・・・・・・あなた何をしましたの?」
「僕は何もしてませんよ。やっぱ悪戯ですかね?」
「それにしてはちゃんと口座番号や住所電話番号まで記載されていますわね。
それにこの字、覚えがありますわ。」
「・・・ってことはまさか本物・・・?」
「その可能性が高いですわね。
にしても妙ですわね。本当にあなた何もしてませんの?」
「本当ですって!僕はユイムさん一筋なんですから。」
「その割には人の筋をまじまじと・・・」
「も、もう勘弁してください・・・・」
「・・・まあ、一度この番号にかけてみますわ。」
キリエが席を立ち義手である事を忘れそうになるその義手で
電話をかけた。
なおこの時代置き電話は非常に珍しい。
「・・・こちらキリエ・R・X是無ハルトです。
・・・・・はい、・・・・・・・はい、
・・・・・・・・はい、わかりました。ではそのように。」
「・・・キリエさん?」
「どうやら本物のようです。
この手紙を書いたのは旧帝都の都庁である
ルイス・Bキシム・ウェストg無さんでした。」
「旧帝都庁が・・・!?」
「はい。私も何度かお会いしたことがあります。
それで、その手紙ですが弁護士を通して正式に
確定した支払い状のようです。
・・・あなた夢遊病とかお持ちなのでは?」
「そんなことは・・・ないと思いますが・・・」
「・・・とにかくこういう証拠がある以上は
本当にそうでないかどうかを確かめるため
本日は私が同衾いたしますので。」
「え、えええ!?キリエさんと一緒に寝るんですか!?」
「・・・そこまで反応されるとさすがに傷つきますわ。」
「ご、ごめんなさい・・・。」
・夜。
本当にキリエと同じベッドで眠ることになった。
「・・・あ、寝るときは外すんですね。」
「充電が必要らしいので。あ、コンセントに差して下さる?」
「はい、キリエさん。」
取り外された義手からプラグを伸ばしてコンセントに差す。
「・・・なんだか懐かしいお姿ですね。」
「・・・何を言ってるんですの?」
「いや、すみません。
僕が初めて会ったキリエさんはもう腕がなかったので・・・」
「・・・そう言えばそうですわね。
あなたがここに来てそろそろ2ヶ月を越します。
どうですか?ユイムの振りはもう慣れましたか?」
「まあ、まだどこか違和感はありますよ。
どんなにユイムさんを真似ていても僕は僕なわけですし。
・・・・それにやっぱり、その、女の子と一緒なわけですし・・・。」
「そう言えば中学生とも一緒にシャワー浴びていらっしゃるんでしたわね。」
「・・・・・えっと、」
「一応言っておきますが女性の体も興奮すれば勃つんですのよ?」
「え?何がですか?」
「・・・・上と下が。」
「・・・上は分かりますけど下の何が勃つんですか?
ユイムさんあまり下は濃くないようですが・・・」
「・・・後はもう自分で調べなさい。」
「あ、キリエさん?」
何やら拗ねてしまったキリエ。
仕方なく自分も疑問を抱いたまま眠ることにした。
・翌日。
P3からキリエの言った言葉を検索してみたところ。
どうしようもない羞恥に襲われた。
「え、勃つってあそこの・・・・・本当に勃つんだ・・・・・。
いや、待って!っていうことは僕この2ヶ月
みんなの前でずっと勃ちっぱなしだったかも知れないってこと・・・!?
ユイムさんの姿なのに・・・!?
も、もしかしてシュトラさんもそれに気付いて・・・・・
あ、あわわわわ・・・・ど、どうしよう・・・・!」
ずっとP3の前で悶える朝を迎えるのであった。