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パラレルフィスト~交差する拳~  作者: 黒主零
if集
152/158

ライラ・ネイティブ

もしもユイムではなく最初からライラにブランチが目をつけて操っていたら?のif。

1章1話時点の2年前が舞台。

・西暦3015年。

山TO氏学園。パラレル部、部室(コート)。

「ガイザレス・行使(サブマリン)!!」

カードが発動された。

鷹の爪を模した膨大な魔力の塊が対戦相手の放った防御用のカードを

いとも容易く打ち破り、対戦相手を背後の森林ごと削り取った。

「ユイムさん!!」

顧問のMMが吠えた。

同時にその試合を観戦していた部員達が喧騒を立てる。

「・・・あ。」

ユイム・M・X是無ハルトが息を吐いた。

・・・またやってしまった。

自分に流れる通常の数十倍以上の魔力を抑えきれずに

少しでも手加減を忘れてしまえば魔力が暴走してしまい、

気付いたら対戦相手と自然が吹き飛んでいる。

そうしてその状況を認めると周囲の視線が自分に突き刺さっている現実に至る。

「ユイム!あなたはまた・・・!」

生徒相談室。

ユイムの姉であるキリエ・R・X是無ハルトが机を叩いた。

「どうしてタダの練習試合であそこまでやる必要があるんですの!?」

「し、仕方ないじゃん!僕だってあそこまでやるつもりなんてなかったよ!」

「あなたはいつもそう!大体相手を傷付けておいて仕方ないとは何事ですか!?」

X是無ハルトの姉妹が口論を始めてしまった。

パラレルカードの名門一族であるX是無ハルトの姉妹であるキリエとユイム。

その名門である身内の人間がパラレルで誰かを傷付けてしまうなど言語道断。

パラレルでのダメージを究極的に減衰させるライフのカードが発動されている状況で

尚対戦相手を病院送りにしてしまうほどの威力を出すということは

過剰攻撃罪と言う罪状で逮捕されてもおかしくない。

もちろんユイムはそれを狙って行なっているわけではなく

自分の魔力を制御しきれていないだけなのだがその事実を認める人物はそういない。

少なくとも目の前の姉にはただの言い訳だと思われている。

それに姉(キリエ)ならまだいい方だ。

問題なのは帰宅してからの両親との家族会議だろう。

両親は姉を今の性格にしただけあってかなり厳格な人達だ。

一緒に同じ家で暮らしているだけで鬱病になってしまいそうなほど。

その鬱憤を晴らすためユイムは放課後になると

親友であるティライム・KYM、赤羅門・ミドリュエスカラナイト、

そしてレズ相手であるシュトライクス@・イグレットワールドと一緒に出かけるのだ。

「ケーラは?また?」

「うん。先輩相手に練習試合をしていたよ。」

「あの子も中々難儀な性格だからね・・・」

「もうユイムさん。他の女の子の話しないでよ~」

「そうだねごめんごめん。」

4人はプリクラに行ったりクレープを食べたり束の間の自由を謳歌する。

男に興味を持ったことは一度もない。

ユイムにとって女の子とは全てである。

X是無ハルトと言う平行線(パラレル)に縛られた名前など捨てて

どこか静かな場所で最愛の彼女と一緒に幸せに暮らすのが夢だ。

そしてそんな夢を持つユイムにとって家族もパラレルも邪魔でしかなかった。

本当に毎日学校の帰りには家に帰らずそのまま

どこかへと旅立ちたい程だ。

しかしキリエに見張られてはどうしようもない。今日は他3人を味方につけたため何とか強行出来たが。

当然家に帰れば鬼姉以上の両親が鬼神のような形相で待ち構えているのだろう。

そして今度こそ勝手に決められた許嫁の男と婚約させられるかもしれない。

まだ14歳だというのに・・・。

様々な思考を巡らせながらユイムは近くのカフェにやってきた。

ティラとラモンが注文を取りに行っている間シュトラと一緒だった。

「ん・・・・・ちゅ・・・」

近くに他の客もいた。

その中ユイムとシュトラは濃厚な口づけを交わした。

既成事実を作ってしまえば親も諦めるのではないか?

実際山TO氏学園では中等部だけでなく高等部でもユイムがレズであるという噂は有名である。

とりあえず聞かれて否定したことは一度もない。

いくら山TO氏が女の園たる女子校だとは言え、いやだからこそ

ユイムの存在はどうしても目立ってしまう。

ユイムの性癖を是とする者もいれば当然非とする者もいる。

少なくとも家族は皆後者だ。

特に姉(キリエ)は同じ学校に在学している以上妹の噂などには敏感だ。

妹がレズならば姉もそうなのではないかとか

ユイムの魔力暴走体質を姉も持っているのではないかと邪推は絶えない。

正直に言って何の迷いもなく迷惑である。

お互いがお互いを迷惑だと思っていてそれでいて引けない理由があるのなら

それはもう不干渉を貫くしかないのではないだろうか?

しかしまだ中学生。14歳という年齢で家族と絶縁するのは些か勇気がいる。

それにX是無ハルトの家はやはり豪華だ。

今まで何不自由なく暮らしてきた少女がいきなり

それを投げ捨てられるかと言われれば後ろ髪を全力で引っ張られるに決まっている。

まだまだ贅沢はしたりない。欲しい服もあればもっと食べていたい料理もある。

雇われた可愛いメイドさんにも手を出してみたい気もする。

こういうのをコンプレックスと言うのだろうか。

前にMMが授業で言っていたような気がする。

二つの反した欲望がぶつかり合う思春期特有の現象。

「はぁ・・・」

「ユイムさん?あまり納得のいくキスじゃありませんでしたか?」

「いや、そうじゃないんだけどね。」

・・・ねえ、シュトラ。シュトラはどうして僕を好きになってくれたの?」

「え・・・!?まさかユイムさん・・・」

「え?いや、ち、違うよ?僕シュトラの事好きだよ?

今まで一度も出来なかったけど最後までやりたいと思ってるし・・・。

でも、不安になるんだ。30世紀も超えたこの世の中になってもまだ

同性愛者はいい目で見られないから・・・」

「・・・それは私も同じですよ。

私がレズだって気付いたのはまだ小学生だった頃です。

いつも男子とばかり遊んでいましたがそれは男子が好きだったからじゃなくて

女子が好きだったから、その女子と遊ぶのが妙に気恥ずかしくて・・・。

私もすごく悩んでましたけど去年初めてユイムさんに出会えてすごく嬉しかったんですよ?

私と同じレズでこんな可愛い女の子と出会えたことが。」

「・・・シュトラ・・・」

「それに同性愛者だけじゃありませんよ、悩みがあるのは。

きっと異性愛者も無性愛者も両性愛者もみんな悩んでいるんです。

だから、ユイムさん?もしX是無ハルトの名前が煩わしかったら

全てを捨ててイグレットワールドになりましょうよ?」

「・・・告白された。求婚されちゃったよ僕!」

「え?あ、あはは・・・。」

笑う二人だったが、

「・・・何だか戻るに戻れないね。」

「全くだね。」

陰で待っていたティラとラモンはもちろん周囲も気まずい雰囲気になっていた。



・帰り道。

4人が夕暮れに染まった街を駄弁りながら歩いていた時だった。

急に街中で悲鳴が聞こえた。

大きな音は聞こえなかったからスカイカーが落ちてきたと

いうわけではないと思うが・・・。

野次馬に並んで騒ぎの中心を見やると、そこには上半身のない死体が転がっていた。

「ひっ・・・!!」

女子中学生が悲鳴や嗚咽を漏らさないはずはなく、

より喧騒を際立ててしまった。

議会直属の警官隊が出撃したのはそれから数分後のことだった。

警官隊を率いていたマサムネがユイムの姿を確認するとため息をこぼす。

「また君か。今度は何をしたんだ?」

「マサムネさん!僕を犯人扱いしないでよ!これ見てこれ!」

ユイムが上半身のない死体を指さした。

「冗談だよ。・・・おい!すぐに調べろ!」

マサムネが苦笑してから部下を走らせた。

その場で発見者などの取り調べが行われた。

第一発見者が言うにはいきなり風の切る音がしたと思ったら

すぐ近くを歩いていたサラリーマンの上半身が千切飛んだと言う。

別働隊がこの街での魔力反応察知履歴を確認したところ

向こう3時間はこの街でコール以外のカードは使われていない事が判明した。

「コール以外で最後に使われたカードは?」

「はい、男子小学生がクラスメイトのスカートを捲るために使ったであろう

風(ウィンド)のカードです。ですが出力はかなり小さく、

成人男性の上半身どころか空き缶1つを吹き飛ばすのがやっとと言う程です。」

「・・・つまり今回の件とは関係ないようだな。

あとその小学生にはあとでエロ本を贈呈しておけ。

もちろん大事な部分には修正を入れておけ。」

「は!」

「・・・今すごいろくでなしな命令が聞こえたような気がするんですけど。」

ユイム達4人が半目で睨む。

それに対して咳払いで誤魔化しをしてからマサムネが

また別の部下を呼んで調査結果を報告させていく。

調査結果を全て聞いてから改めて判断を下した。

今回の事件に魔法(カード)は一切関わっていないと言うのが事実だと言う事だ。

銃は愚か刀剣の類すら全く流通されていない時代だ。

行える犯罪のほぼ全てはカードを使ったものなのだが

時たまこういうカードを使わずに行われた犯行が発生する。

しかしそれすら巧妙に細工の施されたカード犯罪であることが9割を占める。

現場で当日で調べられる範囲には限界がある。

マサムネはこの場を抑えるためのカード・模写(テクスチャー)を使って

事件現場の状況を100%コピーし、部下達と共に帰っていった。

「・・・ん?」

ユイムも他3人と一緒に帰ろうとした時だった。

夕暮れを背に一人の少女が見えたような気がした。

その少女は高層ビルの屋上、そのフェンスの上に座っていた。

100メートル以上も離れているためあまりよく見えないが

年齢は自分と同じくらいだろう。

スカイブルーに見えるその長い髪を風に靡かせている。

「・・・・・」

「・・・・・」

視線を交錯させる。

向こうもこちらを見ていた。

どうしてあんなところにいるのか、どうしてこちらを見ているのか。

色々疑問が沸いてくるがそれ以上に胸を埋めていくのは恐怖だった。

あの少女に背中を見せたが最後、自分は先程見た上半身のない死体のように

なってしまうのではないかと言う全く根拠のない妄想といっていい不安。

しかし嫌々ながらも今までいくつもの死線を勝ち抜いてきたユイムには

その不安はどうしようもない未来だと思えて仕方がない。

思わず冷や汗を帯びながらも懐のカードを握る。

いたずら用に瞬間的なウィンド程度ならまだしも相手を攻撃し、

ライフの上からでも重傷を負わせられるほどのカードの使用が

ここで出来るとは思えないがしかし武器は手に握っておいた方がいい。

「ユイムさん?」

「・・・気をつけて。あの子が僕達を見ている・・・!」

嘘だ。あの少女が狙っているのは自分だけ。

一体何が目的なのかは分からない。

あの距離からこちらを狙えるカードがあるものだろうか。

何か恨みでも買ってしまったのだろうか。

生んでおきたい疑問は山ほどあるがしかし今それに脳活動を割いていられる余裕はない。

「・・・あの子?」

他3人はユイムの視線を追うがあのスカイブルーの少女を見つけられないようだ。

「あのビルの屋上・・・」

言葉を最後まで走らせることは出来なかった。

一瞬だった。

スカイブルーの光線のような物が自分のすぐ近くを走った。

「え・・・?」

視力が青で刺激されたと思ったら数巡遅れて大地が抉り裂かれる音に襲われる。

「私はここだよ・・・?」

次に耳を刺激したのは声だった。

慌ててユイムが振り向くと、先程までシュトラが居た場所にその少女が立っていた。

背丈は自分よりはやや低いか、スカイブルーの長い髪を靡かせている

その少女の背中には翼が生えていた。

また、その少女の両手はまるでワシの爪先のような不気味な得物となっていた。

そしてその爪からポタポタと赤い液体が滴っていた。

それを見た途端に鋭利な悪寒が感覚を襲った。

この光景に驚いている仲間の数が一人少ない。

「シュトラは・・・!?」

「シュトラ?ああ、この子?」

少女が笑い、身を半分に反らすと少女の背後には血だらけのシュトラが倒れていた。

「シュトラ!!」

「つまらないよ。せっかく君が忠告してくれたのに全く反応できなかったんだもの。」

少女が爪を滴る液体を舐める。

少女の視覚が一瞬とは言え全てがその赤に注がれたその直後に。

「ガイザレス・行使(サブマリン)!!」

ユイムは可能な限りの魔力を込めた一撃を放った。

「!?」

2メートルもない距離で爆撃を受けた少女は激しく後方に吹っ飛んだ。

同時にユイムが倒れたままのシュトラに駆け寄る。

「シュトラ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・」

その肩を揺さぶる。妙にその体が軽かった。

見てしまった。シュトラの腹に大きな穴が開いていた。

そしてそのまま右脇腹の方に広がっていて彼女の右腕ごと削り取られていた。

どうやらあの一瞬でシュトラの腹を腕で貫き、

そのまま腕ごと巻き込んで右に引き裂いたのだろう。

「・・・いきなり・・・きついなぁ・・・」

ユイムの険しい眼光の先。

えぐられたコンクリートの上に土煙を上げながら膝をつく少女。

「緋瞳の弱点を一発で突いて来て

しかも私にここまでの手傷を一撃で負わせるなんて。惚れちゃいそうだよ。」

その少女は右腕から血を流していた。

どうやら爆撃で右肩を吹き飛ばしたらしい。

しかし、その怪我も既に修復が始まっていた。

「ティラ!ラモン!シュトラをすぐに病院に!

ここは・・・僕が何とかする・・・!」

「で、でも・・・!」

「いや、ティラ・・・!早くした方がいい、シュトラが・・・!」

ラモンが催促し、ティラは渋々KYMシップから直接救急車を派遣させた。

「エラー・エラー。」

ユイムが握るカードが規則違反のためにその機能を停止させているが

ユイムが無理矢理魔力を押し流すことで再起動させる。

先程あの少女はヒトミの弱点と言った。

ヒトミと言うのが何なのか分からないが、

あの少女がよそ見をしている一瞬を狙って攻撃した事を言っているのなら

ヒトミと言うのは人間離れしたあの真紅に輝く両目の事だろうか?

そう言えばこの少女のこの姿と力はどんなカードによるものなのか。

その手にカードが握られていないから分からない。

しかし、この少女からは魔力をほとんど感じない。

本当に人間なのだろうか?

「がい・・・」

「無駄。」

発動を唱えようとした。

が、その時には既に少女はユイムの懐に詰めていてその爪を振るっていた。

「くっ・・・!」

寸前のところで攻撃を回避し、同時に再びガイザレスの砲撃をゼロ距離で叩き込む。

「・・・・・っ!」

流石に人間離れしたあの少女でもこの短時間に2発も攻撃力の高いカードの

攻撃を至近距離で受けては苦痛を産まざるを得なかったのか

先程までの余裕の表情を崩して無様にコンクリートを転がっていく。

すると、先程去っていったばかりの警官隊用スカイカーが3台戻ってきた。

「何事だ!?」

中からマサムネ率いる警官隊が下りてくる。

最初はパラレルカードを握るユイムに視線が行ったが

すぐにその前方で倒れる不気味な姿をした少女に目を通す。

「む・・・!?あの顔どこかで見覚えが・・・」

「・・・・・。」

少女は流石に分が悪いと判断したのか、その翼で飛び去っていった。

その速さはスカイカーでも追いつけないほどだった。


・X是無ハルト邸。

「ライランド・円cryン?」

ユイムとキリエが口を開く。

「ああ。一週間ほど前に旧帝都で行方不明となった14歳の少女だ。

ユイムがさっき戦っていた相手の顔がよく似ていた。」

同僚(キリエ)がいるからかマサムネは極秘である手配書を懐から出した。

「あ、確かにこの子だよ!」

「・・・やはりか。しかし何故あのような姿に・・・。」

「ねえマサムネさん。マサムネさんの使うカードも僕達が使うカードと違うんだよね?」

「ん?ああ、ナイトメアカードって言ってな。

議会役員の一部しか使えない専用カードだ。それがどうかしたか?」

「いや、パラレルでは論外だとしてナイトメアカードの中で

魔力を一切使わずに使えるカードってあるかな?

さっきのあの子って魔力を使ってるようには見えなかったんだけど。」

「・・・いや、そこまでは分からない。

パラレルカードが人工的に作られたカードなのに対して

ナイトメアカードは1000年近く前には既に存在していたカードだ。

議会で使用が許可されているカードは大体の研究が進んでいる物だが、

それでもあまり良く分かっていないことの方が多い。

だからユイムが言うようにもしかしたら魔力を必要としないナイトメアカードの中で

あのような姿になれるというのがあるかもしれない。

・・・しかし、それを一体どうやって手に入れたのか・・・」

「・・・マサムネさん、もしかしたら・・・」

「・・・まさか、奴らだと言うのか!?

・・・いや、ありえない話ではないか・・・!?」

「マサムネさん?お姉ちゃん、奴らって何?」

「それは・・・」

「・・・いいかいユイム?

今から言うことは政府議会で定められたトップシークレットだ。

決して他の誰にも話してはいけないよ?」

「・・・う、うん・・・分かった。」

「よろしい。

・・・政府議会は実はごく一部のメンバーが人間以外の対処をしている。

奴らは自らをブランチと名乗っている。」

「ブランチ・・・?」

「そう。奴らは人類のごく一部の人間にのみナイトメアカードと言う

強力な力を与えて混乱を誘発させて人類全体を自滅させようと企んでいるんだ。

今までブランチの仕業だとされる事件がごくわずかだが発生していた。

奴らの正体は未だ不明のままだがごくわずかに救出された被害者から

聞いた話からすると人間ではない存在らしい。

黒い靄のようなものが罹った怪物の姿をしているそうだ。

奴らにはパラレルカードのほとんどが通用しない。

だから警官隊も議会もひどく困っているんだ。」

「・・・じゃあそのライラって子はブランチに操られてるの?

ナイトメアカードって言うのを持たされて。」

「その可能性が高・・・」

「いいえ、それは違うわ!」

その時だった。

急に部屋の扉が開けられて小さな少女が二人入ってきた。

片方は小学生程度でもう片方は中学生ほどだろう。

「どちら様ですの?」

「リイラ・K・円cryン。」

「・・・佐野升子。」

「円cryン?ってことはまさか、」

「そう。一週間前から行方不明のバカ姉貴の妹と幼馴染よ。」

「なるほど。我々に捜索依頼を出した少女というのは君かね?

それで、君のお姉さんがブランチに操られていないというのはどういうことかね?」

「ブランチって言うのが何なのかは知らないけれど

姉は操られているんじゃないわ。・・・暴走しているのよ。」

「ライラは・・・半分だけ人間じゃないの。

ライラのお父さんは天死って言う人間によく似た生き物なの。」

「待て・・・!天死だと・・・!?」

マサムネは驚くがキリエの方はきょとんとしている。

「マサムネさんご存知なんですの?」

「・・・これはまだ未成年である君には口止めされていた。

ある意味ブランチ以上のトップシークレットだ。

今から20年ほど前にこの地上を襲った人型猛禽類。

それが天死だ。奴らはある意味ブランチ以上に厄介な怪物だ。

ブランチが何を企んでいるのかいまいちよくわかっていないのに対して

天死の目的ははっきりとされている。

・・・人類の殲滅、生存戦争だ。

20年前にほぼ全ての個体が滅ぼされたと聞かされていたが

まさか生き残りがいたとは・・・。

いや待て、君のお姉さんが天死のハーフと言う事は君も・・・」

「私は姉や父とは血が繋がっていないので。」

「そ、そうか・・・。」

「とにかく天死は魔力を持っていないのでナイトメアカードとかって言うのは

使えないと思うわ。でもブランチって言う奴に何かされたことで

姉は天死の力と本能を制御出来なくなってしまった。

それは間違いないわ。」

「・・・何てことだ。」

「・・・私のお母さんから聞いた天死に関する情報をここに置いておくわ。

・・・でも、」

「ん?」

一通の手紙を差し出すリイラの手は震えていた。

「・・・でも、出来たらお姉ちゃんを殺さないで・・・。

もう、私にはお姉ちゃんしか家族がいないんだから・・・」

「・・・善処したいね。」

「・・・・・。」

ユイムは静かに震えるリイラの頭を撫でた。


・翌日。

シュトラが運ばれた病院。

超高度に発展した医療科学によって既にシュトラの傷は塞がりつつあった。

「ってことが昨日あったんだよ。」

早速ユイムはマサムネから口止めされていた話を全て

シュトラ、ティラ、ラモン、そしてケーラにまで話した。

「・・・私がいない間にそんなことが・・・」

「で、どうするのユイムちゃん?」

「そのライランドって言う天死をどう捕まえるの?」

「マサムネさんがどう言ったってたぶん政府議会は

そのライランドって人を殺すと思いますよ。」

「・・・だよね。幸いあの手紙は僕がコピペしといたから

天死についての情報は分かってるんだけど、

中々とんでもない能力だよ?

昨日僕が殺されなかったのが奇跡としか言いようがないくらいには。」

「・・・そんな怪物を殺さずに捕まえるのか。」

「でもそれが出来たとしても暴走してしまったんじゃまた・・・」

「それでもやるしかないのですね。」

「ユイムさん・・・」

「・・・うん、とにかくやってみようよ。」

それに、相手が女の子なら手はあるのだ。


・夜の闇。

その少女は地に足をつけることなく低空飛行で舞っていた。

「・・・・・。」

ライランド・円cryン。14歳。

自分が人間でないことを知ったのは小学校低学年の頃だ。

初めて天死の力を解放してクラスメイトを惨殺して、

それから父親によって力を抑える方法を教わり今までそれを通してきた。

しかし中学に入る前に父親は行方をくらましてしまい、

同じ頃に女であるはずの自分のあそこには男性器が芽生えてきた。

不安にならないはずがなかった。

妹と親友にだって話すのが躊躇われて結局1年かかってしまった。

やっと他人に打ち明けられた頃だった。

ブランチを名乗る影が自分の未来を見せてきた。

「天死は不老、天死は孤独。

天死はただ永劫に孤独を味わうだけの愚かな生き物なのだ。」

「・・・!」

その日、夢を見てしまった。

数百年後の未来において愛した人も家族も死んで行く中

たった一人自分だけが孤独に生きていく姿を。

そのビジョンが脳裏を焼いたその日、

気が付いたらその手は変貌していた。

そしてやっと馴染めたばかりのクラスメイトを皆殺しにしていた。

「あ、あああ・・・・」

「もう遅い。貴様は人を殺した。」

「ち、違うよ・・・私は、私は・・・!」

「恐れる必要はない。お前はお前の欲望を叶えればいい。」

「・・・!」

それからは記憶が曖昧だ。

ただ、毎晩目を覚ました時には自分は醜い怪物となっていて、

その爪には数え切れない程の人を殺した感覚だけが刻まれていた。

未だ大切な身内をその手にかけていないことは判明したが

しかしもう何もかも遅い。

「誰か・・・誰か、私を殺して・・・」

月のない夜に彼女は独り、涙を流した。



・夜。

X是無ハルト邸。

深夜2時を回り、誰もが寝静まった頃。

しかしユイムは起きて制服(バトルスーツ)に身を包み屋敷を後にする。

夕方に全員で待ち合わせをしたのだ。

警官隊より先にライラを見つけて捕らえようと。

ご丁寧にリイラと升子にまで連絡をつけてある。

「・・・やっぱり放っておけないよ。」

「何をですの?」

「え?ふわあああああっ!?お姉ちゃん!?」

屋敷を出ようとしたところでキリエに見つかってしまった。

「全くあなたという子は昔からありえないことばかりしでかすのですから。」

「い、いいでしょ!?お姉ちゃんには関係ないです!」

「有りますわよこのおバカ!」

「ひうっ!?」

「・・・どうせもう止めても行くのでしょうから私も行きます。

着替えるので少し待っていなさい。」

「ちぇっ、」

しかし健気に待ち、妹同様の制服(バトルスーツ)に身を包んだキリエがやって来た。

「では、行きますわよ。」

「はいはい。」

二人でスカイカーを呼び、本当にX是無ハルト邸を後にした。

それから数十分。

待ち合わせ場所は街のど真ん中。

そこには既にティラ、ラモン、シュトラ、ケーラ、リイラ、升子が待っていた。

「あ、キリエさん連れてきちゃったんだ。」

「見つかっちゃって・・・」

「ま、そうだろうとは思ったよ。」

「シュトラさん、あなたもう傷はいいんですの?」

「そりゃ痛いですけど抜け出してきたんで大丈夫です!」

「・・・シュトラさん、きっと後で再入院ですね。」

「・・・本当にこんなのばっかでいいのかしら。」

「リイラ、一応最年少なんだから弁えないと・・・」

そうして8人の少女が揃い、行動を開始した。

「どうしてここを集合場所に選んだんですの?」

「そりゃ昨日ここにいたから。」

「天死って言うのは鳥類のように巣を作るんですよね?」

「・・・ユイムあなたもしや・・・」

「ま、まあいいじゃん?」

「天死が巣を作るというのは間違ってないけど。

でも、お姉ちゃん一人しかいないのに巣は作らないわよ?

ある程度の数が集まらないと。だから、この辺にいるかどうかは分からない。」

「・・・あ、そうなんだ・・・。」

「でも、天死の緋瞳は夜の方が都合がいいからこの時間には来るかもね。」

「・・・あのチート魔眼がさらに都合が良くなっちゃうんだ・・・」

塞がったばかりの腹を抑えるシュトラ。

「天死は幸いにも視覚以外の感覚は人間と同程度だから

目さえ封じてしまえば有利に持ち込めるはずよ。」

リイラが懐から何かを取り出した。

「それは?」

「閃光弾。合図をしたら目を閉じて。これで一気にあのバカ姉貴を封じる。」

閃光弾を握り締めるリイラ。

やがて、行動を開始してから30分ほどが経過した8人。

しかしこれといって成果は見つからない。

これではただの深夜徘徊する不良学生だ。

830代目夜回り先生に捕まってしまいかねない。

まあ、議会大臣であるキリエがいるのだから補導されることはないだろうが。

「・・・これじゃ埒があかないわね。」

言うと、升子は1枚のカードを出した。

「バラクノア・行使(サブマリン)」

それを発動するとどこからか超巨大な船が出現した。

それをまるでお手玉のように自由に操る升子。

「・・・えっと、それって重さどれくらい?」

「そうね。60トンくらいはあるかしら。」

「え・・・!?60トン!?だってあなた今腕力強化のカード使ってないわよね!?」

「私はちょっと変わってるから。」

「授業中寝てばかりいたから先生にダイレクトにグラビティのカードを

掛けられ続けてたらいつの間にか握力10トンのゴリラ女になっていたのよその子は。」

「・・・リイラ?バラクノアの上に載る?」

「結構よ。」

ため息をついてから升子が目立つように船お手玉を始めること5分。

急に升子は投げていた船を受け止めて構えた。

「升子?」

「・・・来たわよ。」

升子が言うと同時に右方向に船を投げ飛ばした。

投げた時点ではその方角にはデパートしかなかった。

が、次の瞬間にはそこにスカイブルーの影が飛来した。

「・・・ライラ・・・」

「・・・升子・・・ひどいよこんなことをして。」

空中で船が粉々になり、その残骸の上にライラが着地した。

「・・・リイラもいるんだ。」

「ええ、いたら悪い?どこかのバカ姉貴を叩きのめしたいからいるのよ。」

「・・・惜しいよねリイラ。」

「何がよ。」

「もしリイラが私と同じように父さんの血を引いていたら、

ううん。リイラのお母さんが父さんと本当の姉妹だったなら

こんなことにはならなかったかもしれなかったのに。」

「・・・色々と混乱するわよその文面は。」

リイラもまた1枚のカードを出した。

「ステップ・行使(サブマリン)」

「それは・・・」

「そう、あんたのカードよ。」

「・・・本気?天死相手に格闘戦を挑もうなんて。」

「そんなはず無いでしょ?あんたの相手をするのは後ろの連中よ。」

「うぇ!?」

いきなり話を振られて変な声を出してしまったユイムだが

すぐにカードを取り出す。

キリエからの申請により既にこのエリアでは自由自在にパラレルカードの

発動が可能となっている。

そしてそのキリエからの発案により何とかしてライラを密室に閉じ込めるのが

とりあえず目先の目的だ。

しかし緋瞳により目に入った動物の電気信号を見て動きを先読み出来る上

亜音速での飛行が可能な天死と言う怪物のライラを相手にするには

このメンツでも中々厳しいものではある。

夕暮れにライラが退いたのは本能的にマサムネの持っていたナイトメアカードを

恐れていたからだろう。

ライラがこうして8人の前に姿を現したのは勝機しかないからだ。

「・・・なら、行くよ。」

ライラが地を蹴り、翼をはためかせる。

「クイック・行使(サブマリン)!」

同時にケーラが1枚のカードを発動させた。

すると、時間よりも早くカードが発動されてライラの両目を

水の塊が襲った。

「!?」

緋瞳を封じられ飛行できずにその場で停滞。

「ウォール・行使(サブマリン)!」

その隙にラモンがカードを発動させライラの全方位を石の壁で覆った。

「続いて~~~!!レイン・ド・レイン!!」

ティラが発動すると壁で覆われた内側の空間に雨が降り出す。

その雨はライラの翼をひどく濡らしながら体力を奪っていく。

その間に8人は近くのデパートに駆け込んだ。

最初の階段でキリエだけは地下に走り、それ以外の7人は上の階を目指した。

「・・・くっ!!」

ライラが壁を打ち破って外に出た頃にはもう8人の姿は見当たらない。

とは言え隠れる場所などそう多くはない。

すぐにデパート内部に隠れたことが推測出来た。

確かにどれだけ素早く飛行出来たとしても室内であればその効力は半減するだろう。

だが、その半減だけでもナイトメアを使えない少女8人を

処するなど造作もないことだ。

とは言え顔には出さないが先程翼を濡らされたのは中々痛手だった。

先ほどの連続攻撃の中で一番の痛手と言っても過言ではないだろう。

この翼では速度がさらに半減している。

4分の1の速度では1対1ならまだしもあれだけの人数が相手では

もしかしたらと言う可能性もあるかもしれない。

しかしここで翼が乾くのを待ってしまえば気付かれてしまうかもしれない。

なにせ偶然の可能性もあるかもしれないが見事弱点を突けた連中が相手だから。

「・・・行こうか。」

ライラが濡れた翼を広げてデパートに向かう。

バカ正直に玄関から入るつもりは毛頭ない。

3階の窓を突き破ってそこから中に突入する。

「あ!」

一番運動神経の悪かった最後尾のティラの背中が見えた。

「まずは一人・・・!」

そのティラを一直線に抑えクラウチングスタートを構えて加速準備を整える。

それを確認したティラはP3のダイヤルを押した。

それを合図として地下に隠れていたキリエが1枚のカードを発動させる。

「蒼(ブルー)・行使(サブマリン)」

直後、9人しかいない夜のデパートは蒼き闇に世界を変え始めた。

「こ、これは・・・!?」

ライラが足を止める。

手足や翼から力が抜けていく。

今度は一体何を使われたのか全く見当もつかない。

思考回路も鈍くなっている所を見るに急速に脳内酸素を減衰させられたか?

「今だよ!集中砲火!!」

そこで苦しんでいる間に前方にはユイム達全員がカードを構えていた。

「ガイザレス!」

「サンダー!!」

「ヴォルカニック!」

「フレイム!」

「エルブレイド!!」

「ストリーム!!」

「ヴァジュラ!!」

6つの攻撃が一斉に放たれてその全てがライラに直撃した。

「うああああああああああああああああああ!!!」

ライラの異形が宙を舞い、全身ボロボロになって床に倒れる。

「自己修復・・・働かない・・・?どうして・・・?」

ひどい激痛に冒された今のライラに状況を判断するだけの力はない。

ただ乱れた呼吸に体を震わせるだけだ。

そんなライラにユイムが一人近寄る。

「ちょっ・・・!?」

「これ借りるね。」

しかもいつの間にかリイラから閃光弾をスっていた。

「な、何を・・・」

自分に笑顔で歩み寄るユイムの姿はひどく異様だった。

一体これから何をされるのかいろんな意味で恐怖と不安に襲われた。

するとやがてユイムはライラの腰に跨ると、唇と唇を重ねた。

「!?」

「ゆ、ユイムさん!?」

「あ、ごめん。」

シュトラの声に気付いたユイムは後ろを見ないまま

後ろの6人に向かって閃光弾を投げた。

「ぎゃーーー!!!」

後ろから光の幕と悲鳴が聞こえる。

爆音はしなかったから怪我はないだろう。

「さて、」

「え、えっと、私をどうしようと・・・?」

「あは、天国に連れて行ってあげるよ?ライラちゃん?」

天死となって人間を捨てて以降はもちろん

まだ人間の女子中学生だった時からこのようなことをされるとは思っていなかった。

このユイムと言う少女は自分という怪物を陵辱していた。

醜いはずの姿から欠片だけ残った服を剥ぎ取って行く。

「あ。生えてるんだ。」

「ひっ・・・!!」

「これ本物かなぁ?あ、でも下にちゃんと女の子のもあるんだ。

じゃあ大丈夫だね。うんうん、何も問題ない。」

「あ、あの、その・・・」

「大丈夫だよライラちゃん。こういうことは僕が先輩なんだから。」

「い、いや、あの私にそっちの気は・・・あぁっ!!」

いくらほとんど力が入らないとは言え軽く指を動かすだけで

ほぼ確実に殺せる距離にありながらライラはこのユイムと言う少女に

それから朝方まで全力で犯され続けた。

「はあ・・・はあ・・・す、すごかった・・・」

気付けば翼も爪も陰茎も消えて両目も元に戻っていた。

天死などではない、ただそこにいるのは数時間かけて夜通しレイプされただけの

女子中学生ライランド・円cryンだ。

とっくに視力の戻っていた後ろの6人や合流していたキリエも

開いた口が塞がらなかった。

「どう?ライラちゃん。

殺したり壊したりじゃこんな快感味わえないでしょ?

人間を、女の子を捨てるなんてとんでもないことだよ?

ライラちゃんが望めばいつでも僕が女の子であることを徹底的に

この体に教え込んであげる。い・い・で・しょ?」

ユイムの指がライラの割れ目をなぞる。

たったそれだけの行為でライラは46回目の絶頂を迎えた。

「は、はい・・・あなたをご主人様として・・・認めます・・・ユイムさん・・・。」

唾液と愛液でぐしゃぐしゃになった表情でライラはユイムに全てを委ねた。

それからライラは政府議会直属の病院に運ばれて念入りに検査を受けた。

恐ろしいことにもはやライラのDNAから天死としての要素は完全に抜けていた。

科学的にも魔術的にも一切説明がつかない。

マサムネはキリエに説明を求めたがまだ高校1年生のキリエには

あの夜のことを異性に話すのは余りにも躊躇われた。

全ての検査が終わってからライラは山TO氏学園に転校。

「ユイムさぁ~ん。」

「えへへ、可愛い子。また可愛がってあげるからね。」

「は、はい!」

無事ライラはユイムの犬となったのだった。


ライラ・ネイティブは本編とは別に通常に天死としての力を受け入れた状態のライラであり、

まだユイムの存在を知る前の時系列のためパラレルカードは使わないし

天死であることを受け入れた以上使えなくなっている。

本編でのライラ・ジュネッスの不完全態であり完全劣化。

この物語のラストから続く本編世界と言うのもあるのかもしれない。

ただしライラはパラレルを使えないままのためそこは変わるが・・・。

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