15話「白熱!3回戦・後編」
15:白熱!3回戦・後編
・舞台。
けが人が出て騒然とする舞台にケーラがやってきた。
「・・・・やはりまだ・・・・」
舞台に刻まれた爪痕を見てつぶやく。
と、対戦相手が舞台にやってきた。
「え~、では山TO氏高校のケーラ・ナッ津ミLクさんと、
バリリANT高校の須田・ミライ・ZZさんの試合を始めます。」
アナウンス。
考えるのはまだ早い。
懐のカードに手を伸ばす。
「では、試合開始っ!」
号令と号砲。
同時に互いにカードを発動する。
「ポール・行使」
「グラビティ・行使」
二人同時にカードを発動。
須田のカードによってケーラの体感重力が3倍になる。
「ぐっ・・・!」
出した杖ごと地面に押し付けられてしまう。
武装タイプのカードは接近戦に強いがその反面
このような自然干渉系のカードにはやや弱いという相性が存在する。
特にこのような行動を制限するタイプは天敵と言っていい。
思えば1戦目も2戦目も相手の行動を封じるタイプのカードを
使ってきた。
それはつまり1回戦と2回戦でこちら側のスタイルに対策をされているということだ。
だが、1回戦であの二人がやったように機転を利かす戦い方が出来れば
メタを貼った相手へのメタになる。
そして、既にそれは発動している。
「・・・・はああああああっ!!」
重力の雨に倒れ伏せられている状態でポールを振り回す。
「・・・?何を・・・・!?」
「はああああああああああっ!!」
重い両手でポールを振り回す。
その回転速度は通常重力の時以上にまで加速していく。
そして、
「!?」
突如対戦相手の須田はまるで横薙ぎの重力に
払われたように真横にぶっ飛んでいった。
「な、何が・・・・!?」
数メートル吹っ飛ばされ激痛に苛まれながら須田が立ち上がる。
突如のダメージにグラビティが解除されてしまう。
「・・・ふう、」
ケーラがポールを片手に立ち上がる。
「・・・あの棒、ただの棒じゃない・・・?」
須田が次のカードを使おうと懐に手を伸ばす。
それを見たケーラが再びポールを振るうと、
再び目に見えない衝撃が須田を真横から襲い、
その体を無慈悲になぎ払った。
「この感触・・・・鉄・・・・まさか・・・・・」
しかし須田の意識は空中で闇に消えその体はそのまま地面に叩きつけられた。
「・・・私も私のチームも留まっているわけではありませんので。」
勝利アナウンスが入ると同時にケーラが踵を返し舞台を後にした。
・医務室。
ライラが顔を覗かせる。
その今も燃えるように煙を出している両腕で
負傷させてしまった3人が気になったからだ。
「・・・来たね。」
シュトラがベッドで横になっていた。
「シュトラさん・・・」
「大丈夫。そんなにひどい怪我じゃないから。
・・・それよりも、」
「・・・・・・・・・・・・・・」
向かいのベッドには岩窟景蓮がいた。
「岩窟景蓮さん。」
「話は聞かせてもらった。
まさかあの後であのようなことが起きていたとは思わなかった。
改めて確認するがお前はライランド・円cryンで合ってるな・・・?」
「・・・はい。」
「もう1つ聞きたい。
お前はフェイクのカードで何をコピーした?
俺のラッシュではないな?」
「・・・これです。」
ライラは懐からビーストのカードを、ナイトメアカードを取り出した。
「・・・それは、まさかナイトメアカード・・・!?」
「・・・はい。ユイムさんのP3をオープンのカードで
解除したらこのカードが・・・。
フェイクで劣化コピーすれば危険も少なくなる、
そう思ったのですが結果はこれです・・・。
シュトラさん、岩窟景蓮さん。本当にすみません・・・・!!」
深く頭を下げた。
ただそれだけの衝撃でカードが床に落ちた。
「・・・まずはその腕を診てもらおうよ。
多分ライラくんの腕も怪我が深いと思うよ・・・?」
「・・・はい。」
シュトラが医務職員を呼び、ライラの腕を治療する。
「これは、魔力が暴走してるわね。
ユイムさんはそういう体質だったりする?」
「えっと、昔はそうだったみたいですけど今は・・・」
「あら、そうなの?
あなたの今の腕は非常に魔力が暴走しやすい状態になっているわよ。
それに魔力が暴走したのも今回が初めてじゃないみたいだし。」
「え・・・?」
そんなことはないはずだ。
確かにこの2年で著しく魔力は上昇したが、
今回のような劣化コピーとは言えナイトメアカードで
無理矢理魔力を暴走させて身体能力を上げた今回が初めてのはずだ。
まさかチェンジのカードでその体質までコピーさせられたのだろうか。
「まあ、しばらくは大人しくしておいた方がいいわね。
まず今日のような真似はしない方がいいわ。」
「でも、試合は・・・・?」
「あなたがいるとは言え初出場で
3回戦突破という時点で好成績じゃない。
明日の試合は諦めなさい。」
「・・・・そう、ですか・・・・。」
両腕に包帯をまかれ医務室を出てシュトラの部屋に戻る。
「どうだった?」
「はい・・・。しばらく試合は諦めなさいって・・・。」
「・・・そう。」
「でも、1つ妙な点があって・・・。
今回初めて起きたはずの魔力暴走をこの体は何度も経験しているって・・・」
「どういうこと?」
「分かりません。
チェンジのカードでそこまで変えることが出来るとも思えませんし・・・。
ひょっとして今回のビーストのせいでしょうか・・・?」
「・・・分からない点が増えたわね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「岩窟景蓮さん?」
「いや、まさかな。そうだとしたら恐ろしすぎる。
それよりもだ。試合を諦めるとなると明日はどうなるのだ?
先程お前のチームが3戦目も勝利してお前達のストレート勝ちが決まったぞ。」
「そうですね・・・。僕の一存では決められませんが
僕もシュトラさんも試合に出られませんし、
ここで辞退という形になると思います。」
「・・・・そうか。」
それからしばらくしてティラ、ラモン、ケーラが病室にやってきた。
そこで怪我の具合を話した。
「・・・そうなんだ。」
「まあ、無理はよくないしね。」
「・・・・・・」
「ケーラさん、ごめんなさい。また、僕のせいで・・・」
「いえ、あなたの過失ではありませんよ。
私がもう少し部員を増やせなかったのがいけないんです。
それが原因であなたには無理をさせてしまって・・・」
「ケーラさん・・・。」
「それより体の方は大丈夫ですか?」
「はい。入院の必要はないそうです。」
「けど、この時間だともうキリエさんの試合始まっちゃってるよね。」
「・・・お姉様なら心配いりませんよ。」
それから身支度を整えて処方箋をもらい、
大会理事に棄権届を提出して会場を後にした。
「・・・あ、」
P3にメールが入っていた。
キリエからだ。
<試合の様子に関しては後で録画してあるものを見ます。
あなたが試合を終えてこのメールを見る頃には
私は自分の試合に赴いているでしょう。
なのでお先に家に帰りなさい。
メイドを数人置いていますので彼女達に申し付けて
食事をなさりなさい。
私の帰りは深夜になるでしょうから先に休んでいなさい。
私も使用人を何人か連れているのでご心配なく。
それともしよければ私の試合をテレビで観戦なさってください。
それでは。>
と書かれていた。
「・・・あの人らしい。」
だが、キリエにはあの3回戦の様子を見させるわけには行かなかった。
キリエならば自分がナイトメアカードを使った事を
見破られてしまうのではないかという不安があった。
それに関してはシュトラも賛成した。
なので部で録画していた映像は途中でバッテリーが切れたとして
3回戦の内容は全部消去しておいた。
「・・・とりあえずこれは封印しておかないと・・・。」
帰宅後。
ビーストのカードを封印用封筒に入れて机の引き出しにしまう。
「・・・今日はこのカードがないと勝てなかった。
・・・僕が弱いから悪夢に甘えてしまったんだ・・・。
・・・キリエさんの試合を見よう。」
着替えてから居間に移動する。
メイドに言ってテレビの電源がつけられ超大型モニターに
試合の映像が映った。
「・・・あれは・・・」
両腕健在のキリエが戦う相手は見覚えがあった。
それはライラの義理の妹・リイラだった。